57、開戦
橋の入り口は厳重に警備されており、沢山の全身を鎧で纏った兵士が観光客の受け付けや、入国の管理をしていた。
幻想的な風景に、厳重な警備の建物、その先にある巨大な橋。
別に元の世界で、色々な国を見て回った分けでは無いけど、多分こんなもん、ここでしか見れねーなって事位は理解出来る。
が、それどころでは無い。
「貴様どこから来た、身分証を見せろ!」
「リリムは、エドから来たって言ってるでしょ!」
兵士に囲まれたリリムは、2本の剣を抜くと瞬く間に取り囲った兵士を斬り倒した。
ダイブ距離が空いてしまった俺達には止める術は無い。
観光客達は、皆自分の力に自身があるのか、それを止めようともせず、盛り上がりヒートアップして、中には煽る者も居る。
「リリムが何をしたって言うの!?」
「不法に監理局へ侵入し、橋に立ち入っただけでは無く、我々の国の宝であり、国民であり、兵士である者達を傷つけた事は死罪にに匹敵する」
兵士の奥から、銀色に輝く、布の様に柔らかくした鋼の様な、鋼の光沢を放つ布の様なモノを身に纏った、前髪が目に掛かり、無造作に伸びた黒い髪を鬱陶しそうにしながら一人の男が現れた。
「スキル発動! 幽閉鉄牢」
俺が、銀布の男にスキルを放とうとするのを、爺が必死に止める。
アオバも、必死で自分を抑えている。
俺達の心配をよそに、リリムは男の放った鉄の棒を軽々と避けて見せた。
「こんなゆっくりな攻撃なんて当たるわけないじゃない!」
「貴様はもう、捕らえられているというのに……」
銀布の男は、振り替えると、兵士達にリリムを連れて来るように伝え、元来た方へと歩いて行った。
「逃げるんだったら、最初から絡んで来ないでよね!」
そう言い放ったリリムは、次の瞬間、手首が後ろに回り、手錠で捕らえられ、足にも鉄の手錠が巻かれ、そのまま地面に倒れた。
倒れた所を、兵士達が担ぎ上げ連れられて行く。
「爺! 何が起きたんだ?」
「分かりませぬ、分かりませぬが、ジン殿、どうにか耐えてくだされ、今出ては二度と入国出来なくなってしまいます」
「ジン様……」
アオバは、何か嫌な予感がしたんだろう、俺の事を恐る恐る、そっと見つめて来た。
「爺! それは無理だ」
「俺は、目の前で仲間が捕まって見過ごせる程人間出来てねーからな」
「やはり、そうなりますよね」
そう言って笑うアオバは少し嬉しそうだ。
「アオバ、お前には爺達の事を任せた」
「はい、任されました!」
そう言って笑うアオバは少し寂しそうだ。
「爺、ここからは別行動だ、あとは、色々任せるわ」
「何を言ってるんです、何を、アオバ殿、ジン殿は何をしようと…… まさか!?」
「そのまさかだと思いますよ」
金貨を握りしめスキルを発動する。
国境を守るであろう、厳重な造りの建造物を吹き飛ばす。
観光客達は、今まで悠長に構え、普通に見物していたが、俺のスキルを目の当たりにして、表情が、目付きが変わる。
「旅の者、何者かは知らぬが、それ以上は国に一個人が喧嘩を売る事になるぞ?」
金髪を七三に分けた髪型に、銀縁の眼鏡をかけた、ショートパンツに、派手なシャツを来た男が、俺の暴挙を問いただす。
「それが、どーかしたか?」
七三金髪アロハシャツの男と擦れ違う際に、今まで感じた事が無い共感覚に左目が疼いた。
向こうも、何かに気付いたらしく、胸を抑え金色の瞳で俺を睨み付ける。
「スキル発動! 黄金執事」
両手に握り込んだ二枚の金貨から、四体の執事の造り出す。
このスキルはエドに行く前から何度も想像と構築を繰り返し試して来た取っておきだ。
可愛らしい羊の形を模した四体の執事が俺の回りをグルグルと回っている。
羊の頭上には金色の輪がゆっくりと回転している。
元々は、金色に光るただの球だった所を、このままでは味気ないと、空いた時間を使いここまで精練したら、自然と執事の力と、機動性が向上したから驚きだったが、それがスキルを昇華させるという事だとチュウタに出会った時に、何も知らずにここまでやってしまった事に驚愕された事を思い出す。
四体の執事達は、自動で俺に向かって来る兵士達を吹き飛ばし、叩き潰す。
観光客達は、遠巻きに俺の事を最大級に警戒している。
リリムが暴れた時のような、煽りや、ヤジは一切無い。
いつでも、俺に対する敵対行動や、自衛行動を取れるように皆身構える。
良く見ると、どいつもこいつも、超レアアイテムである筈の大道具入を腰に下げている。
こいつらこそ何者だよ?
まぁそんな事はどーでも良いがな!
「そいつは、少しアホで、すぐに暴走するが、俺の大事な仲間なんだ、その手を離してくれないか?」
キンキンキンキンと、甲高い金属音を上げて、執事達が鉄の棒を弾け飛ばす。
再び現れた銀布の男の表情が歪む。
次のスキルを待つほど俺は優しく無い。
何かを言いたそうにしていた銀布の男を二体の執事が襲い他の兵士達と同様に、地面に叩き潰す。
すると、それと同時にリリムの手枷、足枷が破砕音を残し粉砕する。
「ジンくん!」
「ジンくん! じゃ、ねーよ!! いつも、いつも勝手暴走しやがって」
「でも、でも、水がゴォーってなってて、虹がキラキラなってて、凄く綺麗で、見てみて、ねぇ~」
「……」
「ごめんなさい」
「分かれば良いんだよ」
一生懸命俺に同調を促し、同情を誘うが、そう毎度毎度面倒事に巻き込まれる分けにいかないから、敢えて厳しく振る舞ったが、素直に謝るリリムの頭を思わず撫でて、許してしまった。
「それじゃあ、いっちょ暴れますか!?」
「調子に乗るな!」
「ごめんなさい……」
本当に、甘やかすとすぐに調子に乗る。




