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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
54/96

53、恐怖の鞭と癒しの飴と

「それで? ばあちゃんは無事なの? どうなの?」

「無事かと思われます……」

「ここはどこなの? エドじゃ無いの?」

「ここは…… 大陸の端でございます」

「大陸!? エドにはどうしたら帰れるの?」

「……」

「どうして何も答えないの?」

「分からないのです……」

「分からない分け無いじゃない! 爺は外に出て帰って来たんでしょ? その方法を教えてって言ってるの、理解出来る!?」

「……運と、奇跡と、運命と色々なモノが重なってですね」


辿々しく話す爺に対してリリムが大きく剣を振り上げる。

俺は躊躇せずにその剣を掴んだ。


「その位で良いだろ?」

「ジンくんは黙ってて!」

「いやだね、俺も分からない事だらけだけど、爺の

今の脅え様と、その爺を庇い、前に立つジャンの気持ちや、それから、エドに行く方法だったら分かるからな」

「っ!?」

「あと、片腕斬り落とされたら痛ぇんだぞ?」


俺は、リリムが爺に質問…… いや、違うな…… あんなもん尋問だよな。

尋問を行っている間に、手を後ろに回し、小さな声で詠唱を行い、静かに召喚したサティで、バルの片腕を元通りに癒着させ、傷口を修復した。


村の人々が奇跡が起きたと、称え、拝んでいる。

特に年配の人々は、涙を流し、頭を地面に付けて“神”と崇め小さく震えている。

リリムが与えた恐怖によって、膠着していた時間がサティの春の木漏れ日のような優しい炎の光で暖められ、冬の雪が溶けるように癒されて行く。

サティは俺が指示する分けでも無く、涙を流し崇める村の人々に身体を擦り疲れ、傷付いた所を癒して回る。


「ジンくんもリリムの邪魔をするの!?」


声を荒らげ、振り上げた剣を降ろせずに瞳には溜めた滴を溢さない様に必死に耐えている。


「お前の不安も理解出来る」

「それも、何もかも全部含めて俺が包んで、守ってやるから、安心しろ」


村人を一周したサティがリリムの肩に上り、優しく頬を舐める。

掴んだ剣をゆっくりと下に降ろし、優しくリリムを抱き締める。

リリムは急に身体を震わせ、嗚咽を含み、溜めていたモノを全て吐き出し俺に抱き付いた。

サティの力を目の当たりにした人々は、暫くの間その光景を優しく見守ってくれた。


……


朝日が昇る。

剣を掴み傷付いた俺の手のひらを癒すと、サティは“にゃぁ~”と優しく一鳴きして俺の手の甲の魔方陣に帰って行った。


この日の夜の出来事は、後に奇跡の夜としてこの村を発信地として、世界に語り継がれた。


それからは、すっかり歓迎モードだった。

あんなに偉そうだった村長は、どれだけ丸くなるんだって位、俺達に下手に出て、あれだけ狂暴だったアズは、リリムを“姉さん”と慕い、どこに行くにも常に行動を共にしている。


食事や、酒やと大いに盛り上がり、気付けば真っ赤に燃える夕日が沈み行く時間になっていた。


あれだけ鬱陶しかった爺の話は、酒が入っても鬱陶しさに変わりは無いが、皆が盛り上がるどさくさで、結局全て聞いてしまった。


チュウタがエドに残ったのは、いつの日か俺がエドに帰って来た時に、しっかりと出迎えたかったからだと、アオバと話をした。

チュウタの営むパチンコ店は、実はエドでは中々の人気で、将来きっとチュウタが想い描く理想を実現出来るだろうと、アオバは自分の事のように嬉しそうに話していた。


「アオバはチュウタにホレてるのか?」

「何を仰います! 私がこの人と決めたのは、ジン様だけでございま……」


失言だった。

アオバは、顔を赤くして、どこかに走って行ってしまった。


……


爺の長い長い昔話の中で、沢山の事実が分かった。

まず、俺が驚愕したのが、あれだけ大変だったイベント“鵺の目覚め”に攻略法があると言う事だった。


簡単な事だ。


鵺は、あの尾で俺達を幻想の世界に捕らえてしまう。

その際に、大風呂敷で包まれておけば、あのガラスの球体に強制移動となった後に、簡単に目覚める事が出来、その上で鵺と対面して、契約を交わす事で、イベント攻略と共に、鵺を使役出来るという事だった。


“簡単過ぎるだろ!?”と、俺が音量を上げ声を発すると、その役割を担うハズだったタケゾウが、ジン殿が大風呂敷を奪われたので…… と、申し訳なさそうに言って来たから思わずタケゾウの肩を抱き寄せて無理矢理に目の前の料理を食べさせ、口を塞いでやった。


次に驚いたのは、エドの時間の流れが、他とは大きく異なるという事だった。

俺達がこっちの大陸と呼ばれている、世界で長い年月を過ごした所で、エドでは僅かの時が流れるだけという事だった。

爺の白髪の数が増え、シワの数が増えて来ても、ジャンは幼いままだという事だった。

それでも、子供の成長は速く、立派になられた姿に感動を覚えたとか、その辺の爺の心境はどうでも良かったが、キャンセルする分けでも無く、酒を全て飲み干して、同時に長い話も流し込んだ。


どちらにしても、はっきりしている事は、鵺の目覚め無しではエドからは出られず、ルシアンに向かう事は出来なかったという事だ。

たまたまなのか、偶然なのか……

まぁ、チュウタは全部知ってたんだろうな。

知ってるんだったら教えてくれれば良いのに、こういう所が、チュウタなんだよな、チイユだったらちゃんと教えてくれるんだけどな……


爺の長い話を聞き流している間に、チュウタとチイユの違いについて考えてみた。

てっきり同一人物だと思っていた二人は、その二人を改めて比べると若干の違いがある事が確かに分かる。

二人が別人で、チイユがチュウタの妹…… つまり、本物の女性だという事を考えてしまうと、色々な事をどうしても意識せざるおえなくなってしまった。


こんなゆっくりするのは今日で終わりにしよう。

チイユの所に、ルシアンに早く帰らなければと沈み行く夕日に誓った。

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