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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
51/96

50、飯の恨みは恐ろしいぞ?

「ここです、ここです」


爺が案内してくれた先は、絶壁の崖に囲まれた小さな村だった。

村の入り口は、とてもじゃないが、立派と言うには程遠い囲いに囲われ、門番も僅かに一人。

それにも関わらず、“貴様達何者だ!”と言って人を集める始末。

はっきり言って、空腹と疲労で相手をするのも面倒だと思った時、先にキレたのは意外にも爺だった。


「貴様等こそ何様じゃ、我らは遥々エドの国より参ったんじゃぞ、金も十分に持っておる、さらにさらに、こちらに居られる方は、エドより古くはヤマタイの頃より続く忍の頭領の御子息、ジャン・ポール様だぞ! その槍を収め、道を通せぇぇぇ!!」


はぁ、はぁ、と肩で息をして、殺気立つ視線を前に、村の男達は後ずさり道を開ける。


「心配しないで大丈夫だよ、あっちのジンくんは勇者様だから」


村の男達はリリムが通りすがりに微かに放った言葉にざわつく。


“勇者ってなんだ?”“バカ、英雄よりも上の位だ”“村長とどっちが上だ?”

“そりゃ、村長の方が上だろうが”


各々が好きな事を言っている。


「そんな事より、早く村長を呼んで来い!」


集まった中では最年長と思われる男が、若者に指示を出す。

爺はそんな事はお構いなしに、ジャンを村の宿屋へと勝手に案内している。


「なぁ、爺はこの村に来た事あるのか?」

「爺様は、エドの国より外の世界に出て帰って来た唯一のモノだと聞いております」

「そっか、ありがとうな…… あ、お前の名前は何て言うだ?」

「私、ですか!? そんな名乗るような名前は持ち合わせておりません」

「そっか…… で? なんて言うんだ?」

「私の名は…… タケゾウと申します」


忍の一人が恐る恐る名を答える。

どうして聞いたかと言われれば何となくだった。

爺とジャン以外で話をして、唯一しっくり来たと言うか、こいつだったら仲良くなれそうと言うか何と言うか、ただの気紛れだった。


「これは、これは、遠い所よりわざわざこんな寂れた所へ良くぞ来て下さいました」


身長2m程で、筋肉の付き具合が尋常じゃ無い程逞しく、刃渡りが1mを越える豪快な剣を片手で担いだ豪快な男がこちらに歩いて来た。

男の周りには獣の皮を被り、槍を持った5人程の戦士が付き従っている。

豪快な男も同様に獣の皮を被っているが、その体躯は収まりきれていない。


「この方が、この村の村長……」


獣の皮を被った男が辿々しく紹介してくれた。


「私はアオバだ、エドの国王イエーミュ様直属の近衛兵隊長を任せられている、皆心配には及ばない身分だ、私が保証する、食事だけ頂いたら出て行くから心配しないで頂きたい」

「はっはっはっ! 笑わせてくれるな、それの何を信じろと? エドの国王直属の近衛兵隊長だ? だったらその近衛兵隊長様は国を捨てたのか?」

「なんだと!? 貴様、私を愚弄するのか?」


まぁ、落ち着けと、俺は無言でアオバが構える薙刀を抑え付けた。


「俺はな、腹が減ってるんだ、理解出来るか?」

「腹など誰でも減るわ!」

「そうだよな、金ならあるんだ、飯を食わせてくれないか?」

「だから、貴様達のような怪しいモノに食わせるモノも、立ち寄らせる場所も無いと言いたいんだが理解出来るか?」

「だったらどうしたら、良いんだ?」


俺は、忍達にやったように、魔力を迸らせ怒りの矛先を村長達に向けた。

忍には、健気で頑張っているジャンがいる。

俺は、腹が減って、疲れて、鵺のせいで苛立ちが収まらない。


「俺様が、そんな脅しに屈すると思っているのか? スキルを有したこの俺様がそんな子供騙しの魔力に怯えるとでも?」

「纏いし色は若葉の緑……」

「スキル発動! “耄碌の従者(ドローンボディ)”」


俺の詠唱を邪魔するように、村長と呼ばれる男がスキルを発動する。

男が被っている獣の皮がフワっと浮かび上がったと思ったら、瞬時に実体化をして俺に疾風の如く突進して来た。


「ジン様! ご無事ですか?」

「あぁ」

「はっはっはっ! 哀れだな、女に守って貰うとは俺様だったら、全裸になって自害する所だぞ!? 行け!茶狼!!」

「調子に乗るなよ!」


リリムが拳の一撃で茶狼を粉砕する。


「何ぃぃぃい!? 一撃だと! しかし、まだまだ!」

「スキル発動! “逸脱の従者(ドローンアンデッド)”」


村長のスキル発動の声に従い、付き従う戦士達の獣の皮が全てフワっと浮き上がりそれぞりに形を成して俺達の威嚇している。


「行け! 俺様の獣達よ!」

「スキル発動! “黄金の軌跡(トレーサビリティー)”」


黄金の軌跡が全ての獣に触れると、獣達は吹き飛び、獣の毛皮だけが虚しく中に舞い上がる。

行き場を求めた黄金の軌跡は、村長の顔を掠めると、村外れの岩壁にぶつかり激しく爆発した。


「纏いし色は若葉の緑、眠り目覚める大地に炎をともさん」


村長達が黄金の軌跡を視線で追っている間にサティを召喚した。

召喚と同時に岩壁が弾け飛ぶ。


「それは、その、輝きはもしや伝説の神獣! 村長、間違いありません、神獣です!」

「村長!? 村長!!」

「あん!? 何だ、どうしたそんなに慌てて!!」

「慌てているのは村長です! 落ち着いて下さい!」

「……俺様の、俺様の可愛い獣達が、獣、達が……」


村長が両ひざを地面に付け頭を抱えている。


「そんなにショックだったか? お前のお気に入りの毛皮を粉砕したのは悪かったが先にてを出して来たのはそっちだからな?」

「ぐぬぬぬぬ! こうなったら!」

「やめろっつてんだろ! このハゲ!」


立ち上がり、何かを取り出そうとした村長の頭を一人の従者が叩くと、髪の毛がズレてそのまま吹き飛んだ。


「親父! 分かっただろ! お前は対して強くないのに直ぐに調子にのりやがる」

「おい! お前! 強いのは分かったから、用事が済んだら早くこの村から出てってくれ!」


獣の皮の下には、青い長い髪の綺麗に整った顔の少女が緑色の瞳を輝かせていた。

しかし少女は見た目に反して、口が悪く村長をハゲ呼ばわりして、耳を掴んで引っ張る程に狂暴な性格をしている。


「それから、お前達! あの岩片付けとけよ!」

「おい! 何をしてるんだ! こんなモノ時間の無駄だ! 行くぞ!」


青い髪の少女は他の従者達を叱責すると来た道を帰って行った。


「何だったんだろうねぇ~?」


リリムが首を傾げている。

爺は早々と宿屋へと入っている。

アオバはと言うと、満足した様子で薙刀を担ぎ、俺の事を瞳を輝かせ見つめている。


「さ、ジン様も行きましょう」

「お、タケゾウ」

「はい、タケゾウで御座いますが、飯屋を見つけております、そちらにご案内致しましょう」

「気が利くな! ありがとう! 行くぞリリム、アオバ!」


何だかんだと、漸く食事にありつけた。

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