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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
プロローグは続くよ
5/96

5、無力、故に、挑む

煉瓦造りの一際大きく豪華な建物。

一階はレストランになっていて、ルシアン大兎をたらふくご馳走になった所だ。

そこの上層階、と言っても3階建てなのんだが、その建物をローヤは貸し切ってくれた。

チイユは俺と同じ部屋を希望していたが、流石にローヤがそれを許さなかった。


夜も更けてきたが、俺に眠気は襲って来ない。

明日には、謎に包まれたチュートリアルが待っている。

本当なら、爆睡して、リフレッシュして明日を迎える必要があるんだろうが、眠れない俺は、町を勝手にさ迷った。


夜の町は静まり返っていて、暫く歩いても誰ともスレ違わない。

宿に戻って聞いた話は、夜の町を出歩くなんて殺されても文句を言えないという事だった。

夜は衛兵が城の守護に集中するために、冒険者だろうと、何だろうと好き放題らしい。

まったく厄介な所に来たもんだ。

これが夢じゃ無いとして、本当にスマホ世界の中に来たのか、それともその世界にそっくりな異世界とやらに来たのか、チイユの主張としては前者よりも後者だと言う。

この世界から無事に生還した人間が、何らかの恩恵を受けてスマホゲームを作成したのではという話だった。

俺にしてみたら、どうでも言い話だった。

ただ、この世界は物凄く退屈だ。

パチスロが無いかなら。

まぁ、運が試せない、スリルを味わえないと言うのが最大の欲求不満なんだろうが、自分でもビックリしているが、あれだけの恐怖に晒されても、いまだに退屈だと思ってる。


「ジンさん、何やってるんすか?早く寝るっすよ?」


宿屋の外で夜風に当たる俺に、窓を開けてチイユが就寝を促す。

って、なんて格好してやがる。暗くてよく見えないが、パンツ1枚で年頃の少女が窓全開で大声あげるな。


その夜、気付いたら俺は眠りについていた……


「ジンさん、おはよっす☀起きるっす、朝飯っす」


目の前にチイユの顔がある。

相変わらず良い匂いが……あっぶね、また騙される所だった。


「どっから入ってきた⁉」

「普通にドア開けてきたっすよ?それよりも朝飯の準備が出来てるっす、早く行くっすよ」


チイユは、髪の色と同じ青を基調としたフリルの洋服に着替えていた。

昨日までと変わって、一気に豪華さを増していた。

まぁ、ローヤに買って貰ったんだろう。

鎧的な装備を買わなくて良いのか聞いたら、防御メインのスキルだから、万が一身体にまで外敵の攻撃が届くようだったらそんな事になったら防具所の話ではないらいらしい。


「所で、ローヤはどこにいるんだ?」

「ローヤだったら、チュートリアルの受け付けに行ってくれてるっす」

「何から何まで頼りっきりか、行くぞチイユ!!」

「待ってくれっす、まだデザートが……っす」


俺は無理矢理チイユを引きずり宿を出た。


城の方まで歩いて来ると、城以外では一番豪華であろう建物が見えて来た。


「あれが、連合会館っす」

「クランの申請や、イベントの登録を全部あそこで受け付けてるっす」

「おぉ~い、チイ~ユ~出発するよ~!」

「待ってくれっす、今行くっすぅ~!」

「ジンさん急いで行くっすよ」


ちょっと待て、俺の装備はこれだけか?

昨日から何も代わり映えのしない服装。

装飾品も何もない、アイテムも、武器も無い。

これで、チュートリアル大丈夫なのか?


「なぁ、ローヤ、チュートリアルって何するんだ?」

「簡単だよ、山を登って、頂上にある神殿に祈りを捧げるだけだよ」

「なんだ、そんな事で良いのか?獣と戦ったりとか、何かレアアイテムをゲットしたりしなくて良いのか?」

「でも、二通りあってね、案内人に連れて行って貰うのと、自力で登るのとの二通りがね」

「どう違うんだ?」

「簡単な事だよ、自力な方がレアなスキルが手にはいるんだ、僕達みたいなね」

「だったら簡単な事じゃねーか、俺は自力で登る」


直後に今言った事を後悔した。

俺は富士山に登った事は無い。

でも、ハッキリ言える。

あれは、実在する富士山が卓上のおもちゃに見える程にデカい山だ。


「アレを……登るのか」

「そうだよ、まぁ僕達はゲームで登ったから楽勝だったけどね」

「チイユ、本当なのか?」

「まぁ、普通のチュートリアルに比べたら大変だったっすけど、リセマラをやったって考えたらあんなもんかなって位っす」


酷すぎるよな、運命は何で俺に厳しいんだ。

ずっとそうだった、何もかもそうだった、運が悪いと言えばその一言で解決するんだろうけどよ、けどよ、これじゃあんまりだ。


「ちなみに、あの山の麓にはどれ位で着くんだ?」

「だいたい2週間かなぁ~?」

「それで、チュートリアルはどれくらいで終わるんだ?」

「うちのクランの奴等で、こっちに来てからチュートリアルやった奴等は簡単な方だったから2週間位だったかなぁ~?」

「ジンさん?本当に大変な方で良いの?」

「良いんすか?」


あぁ~~!良いよ、良いよやってやるよ、やりきってどいつもこいつもビビる位のチートスキル授かってやるよ、待ってろ運命さまよ、真っ正面からブッ壊してやるからな。


言った側から、二足歩行の恐竜に毛を生やしたような獣が数体現れた。

当然俺には何も出来ない。

チイユが攻撃を防いで、ローヤが片付けた。


そんな事を繰り返して、山の麓にある小屋にたどり着いた。

ローヤの言った通りここまで2週間程を費やした。

小屋と言うにはあまりにもデカい、ホテルとでも言うべき大きさなの建物があった。

ここには、チュートリアルの案内人や、ここまでの付添人や、実際にチュートリアルを終えたという数百名が生活していた。


着いてさっそく、休む暇もなく受け付けを済ませる。

そこには、“hard” or “easy”の文字が書かれていた。

俺は一瞬躊躇したが、ここに来るまで、イヤ、俺の人生を振り返り守られてきた事を振り返り、涌き出てくる惨めな思いを押さえ付け“hard”を選択した。

地下1階が防具店、地下2階がアイテムショップになっていた。

俺はチュートリアルセットなるモノをローヤに買って貰い、ホテルの一室を借りて貰い、貰って、貰って、貰って旅の疲れを癒した。

部屋に入った俺は、寝る前にチュートリアルセットなるモノの中身を確認した。

アイテムは全部で7点入っていた。

①鋼の剣

②回復薬

③非常食セット

④浄水器(泥水さえも飲めるように変えるモノ)

⑤調理セット(自給自足をするらしい)

⑥着替え、水浴びセット

⑦緊急救命ボタン(ヤバイ時押したら助かるやつ)


これだけか……そもそも自給自足って、ゲームでやったやつらどんだけ楽してんだよ……

その事を考えると急に溜まっていた疲れが溢れ出て来て、気付くと風呂にも入らずに寝てしまっていた。


俺は、沈み行く夕日の暖かさと西陽の眩しさで目が覚める。


チイユは、珍しく起こしに来なかったのか?

俺は、夕日の色合いに、やってしまった衝動が全身を突き抜け、そのまま急ぎロビーへと走った。


「寝坊っすよ!」

「本当に悪かった!まだ、行けるのか?」

「当たり前だよ、そもそも出発に時間は関係ないからね、それよりもちゃんと回復出来たのかい?」

「あぁ、お陰さまでバッチリだ!」

「だったら、最後の食事を済ませてチュートリアルに挑もうか」


あぁ、本当に悪かった……集合は朝一だったのに、ずっとロビーで待っていてくれたのだろうか?本当にすまない事をしたと思ってる。

俺は、さらにその上で二人から最高の食事のおもてなしを受け、チュートリアルへと向かった。

そう言えば、この世界に来て初めて米を食べた。

チイユにその事を聞くと、あるにはあるが、肉よりも高いっすと言われ、悪気は無いのだろう事は分かっても、手放しでは喜べなかった。

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