48、圧倒的な力の行使
『待て! 我は争う気は毛頭無い』
待たない! 全力を込めてスキルを発動する。
散々振り回しやがって、幻だろうと、なんだろうと、目の前にいる敵に全力で攻撃する。
八つ当たりと言われようと、なんと言われようと構わない。
所詮、敵の戯言、そんな事、聞く気は無い。
『なんと、豪気のモノよ』
金貨の爆発の直撃を受けて、身体は引きちぎれ、頭部だけになった鵺は、息絶え絶え俺を見上げ、消え行く声で俺に囁く。
『貴様は、我と契約を交わす気は無いのか?』
「赤きモノよ、さらに紅く、煩わしき色彩を全て白く染め、我が名の元に此の世界を紅と白に染め上げん」
「出でよ! 忘却の女神!!」
右手の魔方陣が幾重にも重なり宙に浮かび上がる。
魔方陣が紅く染まり輝くと、そこから炎の塊がゆっくりと現れた。
『落ち着け、落ち着くのだ』
嫌だね、無理だね、俺をここまで苛立たせたお前が悪い!
「忘却の女神! その目障りで愚かな獣を消し炭にしてやれ」
『それは構わないが、ここから出られなくなるぞ?』
「っ!? どういう事だ!?」
『ここは、幻獣鵺の領域、出るためにはそいつの力を借りるか、使役するしかないのだが…… どうするのか?』
「本当なのか?」
『嘘は言わん』
忘却の女神の姿を象った炎の揺らめきが俺を諭す。
「鵺……? 本当なのか?」
『だから待てと申しておる! 豪気のモノよ、我は神を宿すモノとは契約出来ぬ、早くここから出て行くが良い』
鵺はそう言うと灰のように白くなり砕け散って行った。
それと共に金色の扉が現れる。
皆を包むガラスの球体は砕け中の人々は床に転がる。
その衝撃で皆が目覚める。
「痛っ~!!」
「何事か!?」
『良く寝たの~』
「な、な、なんすか!?」
「はははははは!」
皆それぞれの反応を見せ転がり落ちる。
「やったんじゃな」
ばあさんが、俺を見上げて親指を立てている。
俺も笑顔で返してみる。
壊れたおもちゃの様に笑い狂う忍達を忘却の女神の炎が拘束する。
忍達は、その圧倒的な存在感に抗う様子は無い。
全てを悟り、全てを諦めたように泣き笑い、絶望している。
そんな忍を視界の外に固めて座らせ、ばあさんとチュウタに事の敬意に着いて説明する。
「なんと! 鵺の目覚めをそんな力技で、最早この程度のイベント、ジンの力じゃったら、全て捩じ伏せるんじゃろうなぁ……」
ばあさんは、なんだか少し悲しそうに俺の事を見ている。
「ジンさん凄いっす!! す、す、す、凄いっす!」
「凄いとかでは、納まり切れない、正に人外の所業!」
「アオバ! 人外とは失礼っす」
化け物だ、悪魔だと、忍達の呟きが聞こえて来る。
アオバは瞳を輝かせ俺に視線を送って来るが、言っている事は忍達と余り変わらない。
「ジンよ、その扉に入り、虹色の宝玉を必ず持ち帰るんじゃ、それがここから出る唯一無二の手段じゃ」
「仮に出られなかったらどうなるんだ?」
「食料も無いこの空間で、あっという間に朽ちて行くだけじゃ」
「分かったすぐに取って来るから……」
「っ!? 他には何か居るか?」
「金貨があれば持てるだけ持って来るが良い」
「そうだな!」
俺は、扉にゆっくりと手を伸ばす。
さっきはこの扉に騙されたから、慎重にもなる。
「ジン様! これを!」
「アオバ、何だそれは!?」
アオバが、鮮やかな桜の花の刺繍をあしらった風呂敷に包まれたモノを俺に差し出す。
「これは、イエーミュ様から預かって参りました」
「ジン様が、イベントに遭遇し、見事それを攻略した暁にはこれを渡せと」
俺は、風呂敷をゆっくりと開き中のモノを手に取った。
「おぉ~それは大道具入っす!」
「アオバ殿、それはこの国唯一の大道具入では無いのか?」
「はい、間違い御座いません、これは城の宝物庫の財を全て管理する庫に使われておりましたが、これからジン様が手に入れるであろうアイテム達の事を考えたら惜しくないとイエーミュ様が申しておりました」
アオバが改まって、畏まって片膝を付き頭を下げる。
俺は、言葉を返せずに、唾を飲み込み意を決して扉を開いた。
そこは、金銀財宝が煌めく、金色の空間だった。
間違いない、ここはイベント達成報酬の空間だ。
虹色の宝玉を探しながら、目につくアイテムを片っ端から大道具入に入れて行く。
考える必要も、悩む必要も無い。
全てを大道具入に収めた。
一番奥の石の柱の上にそれはあった。
七色に輝く、果実の様に瑞々しい、煌めく宝玉。
これが、鵺の限定アイテムなのか?
俺は、それを手に取ると、大道具入には入れずに、手に持ったまま元来た扉から外へと出た。
忍達がざわつく。
先程まで絶望のドン底に這いつくばり、死人のような顔していた忍達の表情に生気が帰ってきたようだ。
「それぞまさしく、虹の宝玉、それをワシに貸すんじゃ」
ばあさんが手を伸ばす。
俺は、チュウタに視線を送り、チュウタが頷いたのを見て、ゆっくりとばあさんに虹の宝玉を渡す。
虹の宝玉を受け取ったばあさんが、それに魔力を込めると、宝玉から虹の架け橋が現れた。
橋の行き着く先が歪んで見える。
「これを渡り、外へ出るんじゃ」
俺たちは、ばあさんに言われるがままに虹の架け橋に飛び乗った。




