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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
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43、真の目的

魔力と共に、何もせずとも炎の線が俺の周囲を漂い、室内を焦がす。

城を燃やしてもマズイと考え、忍者が蹴破り入って来た壁の穴から城の外へと出る。

外は数十人の忍者が待ち伏せて居て、下からも身軽に飛びはね次々に忍者が上がって来る。


その様子を見て、何だか俺にも出来そうな気がして、上から下へと瓦を伝い飛び降りて見た。

ここに来るまでだったら確実に怪我をするか、足を踏み外して死んでいただろう動作が簡単に出来てしまう。


城の外の広場へと降り立つと、既に100は越える人数が俺を中心に囲っている。

これだけ居たら忍ぶも何もねーだろ。


俺は再び魔力を迸らせると、勢いに任せて炎を放出する。

流石にそれだけで倒せる程、ここに居る忍者達は弱くは無いらしい。


爆裂炎(フレイム)

疾風刃(かまいたち)

氷結柱(しもばしら)


騒ぎを聞き付けた魔術師達が俺を助ける為に城から出て直ぐに魔法を放つ。

忍者達に紛れて、俺にも攻撃が届く。


「ちょ、ちょっと、マジで! 危ねーから、俺の居ない所を狙えよ!!」

「フォフォフォフォ、ジン様だったら儂等の魔法なんぞ効きませぬ」


笑ってそう言い切ったのは、サティを召喚した時に一番に触れたじいさんだった。

元気全快と言わんばかりに次々に魔法を繰り出す。

当然、攻撃範囲に俺も入ってるが、じいさんの言う通り、魔法が触れても“あたたかい”“ひんやり”“気持ち良い”位にしか感じなかった。

しかし、それがどれ程の魔法に対してなのかは、周りで倒れて行く忍者達を見て直ぐに理解出来た。


魔術師達に続いて、薙刀(なぎなた)を持ったイエーミュ直属の近衛兵達が出て来て、次々に魔法と薙刀を駆使して忍者を倒し捕らえて行く。

どうやら俺の出る幕は無いらしい。


「ここは、一旦引くぞ!」


リーダー格の男が低く通る声でそう言うと、その男の周囲の忍者が次々に笛を吹き、城の人達に追われる形で逃げ帰って行った。


「一体何がやりたかったんだ、あいつら?」

「ジン様~大丈夫ですの~!」


忍者が撤退したのを見計らって、近衛兵に付き添う形で、イエーミュが飛び出し俺に抱きついて来た。


「あぁ、皆のお陰で何もしてねーし、何にもされてねーから、心配するな」


イエーミュの頭を軽く撫で、然り気無く引き離す。

護衛兵達はその様子を何やら言いたげな様子で見ているが、しっかりと周囲を警戒している。


『暗闇を切り裂く光矢となりて、その力を解き放て』

流星矢(シャイニングスター)


忍者が逃げた方角から詠唱が聞こえたと思ったら、直後に凄まじい光の塊が俺達に向けて飛ばされた。

直後、近衛兵の前に出てその塊を正面から右の手のひらで握り込むように掴み取る。

掴み取った手のひらから衝撃が風を纏って吹き荒れる。

その勢いで一番近くに居た近衛兵が吹き飛ばされ、イエーミュが倒れ込む。


「大丈夫か!?」

「はい、何とか、大丈夫ですの」


イエーミュは近衛兵に支えられる形で、可愛くテヘヘと笑っている。


「ジン様! なぜ敵の攻撃に気付いたのですか!?」


近衛兵の一人が、目を輝かせ聞いて来る。


「詠唱が聞こえたから、その方角を意識しただけだが……」


イエーミュは勿論、鍛練を重ね、この国一の薙刀使いとして、イエーミュの護衛を任された近衛兵の兵隊長でさえも聞き取る事も、反応する事も出来なかったと衝撃を受け、自身の未熟さに落胆している様子だったから、肩を叩き慰めると、声を出して泣かれてしまった。

兵隊長を心配して、俺を突き飛ばす近衛兵達に、兵隊長は“ジン様に何をする!”と一喝すると、助けてくれた恩義と言って、親の形見だと言う国宝級の(かんざし)を渡された。


「イエーミュ様の前でこのような事を申すのは、死罪となっても仕方の無い事だとは分かっております……」

「しかし、命を救われた恩義、忠義、ここに示したく、この(かんざし)を受け取って頂きたい!」


鬼気迫る兵隊長の勢いに圧され、つい受け取ってしまった。


「有り難う御座います、これで思い残す事は何も無い!」

「アオバ・ロクモン、我が命を持って、近衛兵の罪を帳消しにして頂きたい!」


アオバと名乗る兵隊長が腰に差していた短刀を抜き、着物の上半身の部分をはだけて自らの腹部へと突き刺す。それをイエーミュが素手で掴み取り、アオバの頬を叩く。


「アオバ隊長! 命を粗末にすると許さないのです! 絶対に許さないのです!!」


イエーミュが手のひらから血を流し、アオバに抱きつく。

アオバは静かに涙を流し、天を仰ぎ、イエーミュを抱き締める。

近衛兵達も号泣している。


イヤイヤ、ちょっと待ってくれ、俺だけ完全に置き去りにされている。

ここまでシュールな展開になれていない。


俺は、近衛兵達に背中を向け、忍者を追う為に軽く準備運動を始め、一通り身体を動かし飛び出した。


「ジン君! 待って!」


直後、リリムの声に呼び止められ、足が絡み勢い良く茂みに飛び込んでしまった。


「リリム、どうしたんだよ」

「ばあちゃんが、テマリばあちゃんが拐われた!」


俺は、身体中に付いた葉っぱや枝を振り払い、急ぎリリム駆け寄り詳しく聞いた。

俺が忍者と思っていた集団は、まぁあまり変わらないんだが、“忍”と言って、この国が建国された時から存在する集団だという事だった。

テマリばあさんを拐った目的は分からないが、俺の殺害はあくまでも陽動で、俺に皆の意識が集中した隙にばあさんを拐う事が真の目的だろうと言う事だった。そもそも、俺の殺害が目的であれば、事前に情報があるのであれば何かもう少し上手くやるハズだと皆が気付き警戒していたにも関わらず、真の目的には気付けなかった。

それどころか、俺は自身の向上したステータスに良い気になって、その力を示す事も無く、何も出来ずにばあさんを拐われてしまった。


「絶対に助け出す!」

「だったら、オイラも今度は一緒に行くっすよ」

「チュウタ!?」

「オイラもテマリ様にはお世話になったっす、それにジンさんの為にオイラも何かやりたっす!」


騒ぎを聞き付け、駆け付けてくれたチュウタは、体型に合わない完全重装備で、腰には刀を提げて、鍋をひっくり返したようなヘルメットなのか、兜のようなモノを被っている。


「私も行かせて下さい!」


アオバもはだけた胸を恥ずかしそうに慌てて隠し、着物をしっかりと着ると薙刀を構えイエーミュに申し出た。


「当然、私も行くわよ!」


リリムも、既に戦闘準備が出来ている。

俺はと言うと、部屋から飛び出て来たままの、浴衣のような緩い感じの部屋着だった。


「それで、ジン君はそのまま、行くの?」


リリムか首を傾げ、人差し指を立て口許に付ける。


「リリムちゃん、可愛いっすね!」


チュウタの鼻息の荒い声が俺の耳元を掠める。


「あぁ、構わねーよ、準備する時間が惜しいからな、このまま行くぞ!」


本当ですか!? 大丈夫ですか? と、ざわつく周囲を気にも留めず、やたら距離感の近いチュウタを遠ざけ、イエーミュに最終確認を行う。


「それでは、テマリ・スカーレット奪還に向けて、ジン様を筆頭に、アオバ、リリム、チュウタさんの出陣を認めるのです!」

「ジン様…… くれぐれも、無理はなさらないで欲しいのです」

「ちょっと、どさくさに紛れて何してるの!」


身体の体温が伝わる程に身体を密着させるイエーミュをリリムが力付くで引き剥がそうとするが、イエーミュも今生の別れと言わんばかりに、力一杯抱き付いて離れようとしない。

いつもだったら、ばあさんがまとめてくれる所もまとまらない。


「だったら、オイラも抱きつくっす!」


イエーミュと俺の間にチュウタが割って入り、それに嫌悪感を覚えたイエーミュとリリムが反射的に離れた。


「酷いっす、なんなんすかこの扱いは! っす!」

「良いから行くぞ!」


チュウタの首もとを掴み、ばあさんの後を追う。


「あの、これを」


アオバが、流石に裸足ではあんまりだと、俺に下駄のようなモノをくれた。


「慣れるまで歩き難いかも知れませんが」

「イヤ、構わねーよ、ありがとな」


キリリと凛々しいアオバの顔が始めて緩む。

肩位まで伸びた、黒に近い紺の髪を後ろで一つに括り直し気合いを入れる。


「絶対にテマリ様を助けますので、ご助力下さい!」


それはこっちの台詞だよ。

俺は何も言わずに、アオバの背中を強めに叩き先を急いだ。

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