41、深い深い夢の後で
深い深い眠りの中、夢を見ていた。
この物語が全て夢だと言う夢だった。
目覚めると、そこは真っ白な部屋で、青髪の少女が“おはよう”と、久しぶりに俺に出会ったかのように悲しそうな表情と、嬉しそうな表情をごちゃ混ぜにして、涙を流し抱き抱える夢だった。
真っ白な部屋で、沢山の話をした。
時間を忘れ、二人の時が刻まれて行く。
どれだけ、何を話したのか、白い部屋の、白い扉が開き誰かが入って来た所で目が覚めた。
「ジンさん、寝すぎっす、お帰りっす」
「どうだったすか? あそこで寝てたって事は、イベント達成出来たんすね?」
「チイユ……」
「どうしたっすか? 何で泣いてるんすか?」
俺にもよく分からなかった。
何か大切な事を思い出しそうで、もう少しの所で現実に還って来た感覚だった。
それでも、本気で心配してくれているチュウタの表情を見て、さっきまで見ていた夢の事など、そんな夢を見ていた事さえも忘れてしまう程に満たされた。
「……チュウタ……か」
「そうっすよ、大丈夫っすか?」
「あぁ、少し疲れただけだ」
「ここはどこだ?」
チュウタの話によると、俺を見送ってから、心配になり、近くの山小屋を拠点にして、頻繁に樹海の入り口へと来ていたらしい。
リリムや、イエーミュも一緒に来ると言ったらしいが、リリムはこんな所に来たら、我慢出来ずに樹海に入ってしまうかもしれないし、イエーミュは一国の王だ。そうそう簡単に城を離れる事は出来ない。
一度入ったら、ほとんどのモノが還って来る事の無い樹海のイベントに俺を向かわせた事に後悔の気持ちがあったらしいが、イエーミュとリリムがチュウタの背中を叩き、大丈夫だから胸を張って迎えに行けと送り出されたという事だった。
チュウタは、後悔したことを、俺に謝罪したが、こうやって元気なんだから、何を心配するんだと、笑い飛ばした。
ふと感じる感覚がある。
身体を今までに感じた事も無い量の魔力が廻っているのを感じた。
チュウタが言うには、この世界にはレベルの概念が無く、全てがステータスで表されているという事だった。
だったらどうやってステータスを上げるのか……
方法は4通りあるらしい。
①スキル、もしくは魔法によって一時的に、もしくは永続的に向上させる
②魔法を繰り返し使う事で、限界値を少しずつ上げて行く
③力を持つモノとの契約
④アイテムによるステータス向上
俺の魔力が飛躍的に向上したのは、忘却の女神との契約によるモノだと言う事だった。
それだけじゃない。
炎耐性、氷耐性、電気耐性など、複数の耐性を同時に手に入れているという事だった。
中でも炎耐性は、魔界の漆黒の炎に対する耐性まであり、この世界の炎であれば特殊な制約が無い限り、殆ど俺にダメージを与える事は出来ない程だという事だ。
どれどれと、話半分に聞いて、俺は暖炉の炎に手をかざす。
温もりを感じる事はあっても、どれだけ手を近づけても熱いという感覚にはならない。気づくと、炎の中に手を入れていた。
その感覚は、暖かいお湯の中に手を入れているに等しかった。
しかも、それだけだは無く、炎に触れる事で体力が自動回復するというオマケ付きだと言ってチュウタが凄く羨ましそうにしていたから、自分がどれ程の魔力を手にいたのか、ようやく実感が湧いて来ていた。
さらに、攻撃力や防御力も軒並み向上しているという事だった。
チュウタがそこまで解ってしまうのは、チュウタのスキル“超解析”によるモノだという事だった。
スマホゲームをやっていた頃は、これだけ便利なスキルも、情報をググれば何でも出てくる世界で、自身の魔力量に寄って解析出来る範囲が変わるという凄く不便なモノだったらしい。
しかも、攻撃にも、防御にも使えない、まったくの無駄スキルで途方に暮れて妹のスマホ端末に手を出したという事だった。
その便利なスキルで、この世界の事を調べたら良いんじゃねーか? と、訪ねると、魔力を上げればそれも可能かもしれないが、現状ではとてもじゃ無いがそんな事出来る気がしないという事だった。
だったら、いつかチュウタの魔力を跳ね上げるスキルを持ったやつか、アイテムを持ってくるから、少しずつでも魔力の総量を増やしとくようにと約束した。
2日程その山小屋で色んな話をチュウタとして、3日目の朝に、城から迎えが来た。
見た事も無い程にデカい馬に引かれた籠に乗って、城まで快適な道のりを満喫した。
城下町に着くと、これまた夢のような大歓迎を受けた。
城下町中の人という人が俺を出迎え、城までの複雑な道に沿って、その道埋め尽くす程の人達が並んでいた。
城に着くと、“(祝)神獣サティの力を宿しモノよ!”と大きな垂れ幕が下がっていた。
チュウタが城と連絡を取ったという事だったが、実際にはサティの力を宿したのでは無く、サティそのモノを宿してしまった事や、忘却の女神と契約を交わしたんだが、それらを話すと城中が揺れるのでは無いかと思うほどに、皆がざわついた。
「ジンくん、おかしいよ、そんな事ありえないからね」
「ジン様はさすがですの、私はジン様だったらきっと皆を驚かせる程の成果をもたらせると信じていたのです」
リリムとイエーミュに続いて、この国を代表する魔術師達が涙を流し感動している。
一度、生きている内に、どうしてもサティに会いたいと言う魔術師のじいさんやばあさんの懇願を聞き入れて、着いて早々だったから、とりあえず風呂に入って飯を食って、ゆっくり布団で寛いで、眠りかけていた所をリリムに起こされ、天守閣へと出ると、新月がうっすらと照らす闇の中で俺は詠唱を始めた。
空気が震え、右手の甲の魔方陣が輝き、黄緑色の部分が宙に浮かび上がる。




