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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
40/96

39、守ると決めたモノは絶対に守る…… それが、神でも悪魔でも

「スキル発動! “黄金防壁(ゴールドプラチナ)”」


大金貨一枚を使い、続けざま金色に輝く防壁を形成して、炎を弾こうとしたが、直後、何も無かったかのように炎は消え、それと同時に忘却の女神(レテ)の姿が消えた。


「これは? どう言う事だ?」

「ネネ様の時もそうだったの、向こうの攻撃は都合が良いようにこっちに届いて、こっちの攻撃は都合の良いように向こうには届かないの」


少女は、憔悴しきった様子で、そのまま地面に膝を付く。

しかし、ここでゆっくり休ませてくれる様子も無い。


一呼吸置いたように、鮮やかな青い炎を纏った、大型の熊のような獣が現れた。


「グルルルル」


熊の化け物は喉を鳴らし、俺達を威嚇すると、青い炎の固まりとなって突っ込んで来た。

俺は、少女を庇うように炎の固まりを蹴りあげ、その勢いで後方に飛ぶと、距離を明け、再びスキルを放つ。

しかし、結果はさっきと同じだった。

こちらのスキルは相手に届かない。


「もう、大丈夫なの、逃げて欲しいの」

「逃げる分けには行かねーんだよな」

「あぁ、別にお前の為だけって訳じゃねーんだけどよ、どうしてもあの炎の魔法を習得しなきゃならねーんだよ」

「そんなにボロボロになってまでなの? 恐くは無いの?」


少女は不安そうに俺の左腕を引っ張り、右腕に視線を送る。

その視線は、俺の体の至るところに出来た火傷を上から順番に辿って行く。


「俺が本当に怖いのはな、守りたいもんを守れかった時だからさ」

「だから、こんなモン、お前が笑ってくれれば問題ねーよ」


少女に掴まれた左腕の指をそっとほどいて、少女の頭に手のひらを乗せる。

少しは安心出来たのか、少女の顔に生気が戻って来たように感じる。

その顔には、一生懸命無理した笑顔が輝いている。


「絶対倒してやるから、安心して見ていろ!」


俺は少女に背を向けると、オレンジ色の炎を纏い現れた虎の化け物に、金貨を握りしめ、そのまま一気に詰め寄り光る拳を叩きつけた。

実態が無いんじゃないかと不安が芽生え初めていた所に、確かな手応えを感じた。


虎の化け物は、木々を薙ぎ倒し吹き飛ぶと、まるで何事も無かったように俺の前に再び現れ口を開けると、牙のように鋭い燃える刃を飛ばして来た。

後ろには少女が居て、避ける訳にはいかない。


俺は、金貨の残数を気にしながらも、スキルの防壁で、その攻撃を弾き飛ばした。


「不正解だ」


虎の化け物は、そう言い残すと蜃気楼のように残影を残し消えて行った。


蛇、鷲、狐、鼠、牛、羊……


様々な獣の姿で繰り返し現れては、向こうの攻撃はこちらに届き、こちらの攻撃は、相手には届かず、身体の輝きは弱まり、残る金貨も僅かとなってきた。


次に現れたのは、再び先程の真っ赤な髪の少女の姿だった。

手には剥き身の剣を持っている。

それは、最初に出会った少年が持っていた、俺の右腕を斬り落としたそれと同じモノだった。


「どれもこれも不正解だ」

「その左腕を斬り落とし、その首を貰って帰ろうか」

「俺の命だけで済むならラッキーじゃねーか」

「何を言う?」

「この娘には手を出さねーんだろ? ネネ様とか言ったか? 本当にこの娘を殺そうと思っていれば、その時に出来たハズじゃねーか? そうだろ? 忘却の女神(レテ)!!」

「正解だ!」


さっきは避ける事も出来なかった剣戟を見送る事が出来る。

忘却の女神(レテ)は、その赤い髪を燃え上がらせ、次々に俺を斬りつける。

しかし、その全てを俺は避けきる。

俺の攻撃は当たらない、向こうの攻撃は触れれば即アウト。


「これでどうだ?」


俺は、真っ赤な炎を纏う忘却の女神(レテ)を抱き締める。

その包容は、優しく忘却の女神(レテ)を包み、その炎は激しく俺を焼き焦がす。


しかし、“黄金の暴食(ゴールドイーター)”で極限まで高めたステータスでギリギリの所で命を留める事が出来る。


「攻撃じゃなければ良いんだろう?」

「正解だ」

「しかし、その身体はいつまで耐えれるのか?」


杞憂だね。

そんなに長くは耐えられねーよ。

だが、これで十分だ。


忘却の女神(レテ)が剣を握りしめる右の手のひらをそっと握り込み、ゆっくりと誘導すると、忘却の女神(レテ)も何も言わず俺の誘導に従う。

何が出来るんだ? と、言わんばかりの表情で憐れむように見守る忘却の女神(レテ)をそのまま誘導し俺の左目に触れさせる。


“災禍の左目”


真っ赤に燃え盛る景色は、黒く染まり、歪みを帯びて行く。


『ジン様よ、やはりお前は阿呆よのう』


「誰が阿呆だ、めちゃくちゃ頭使ってるじゃねーか」


(ワラワ)を見くびるか? 愚弄するのか?』

『もちろん気付いておる』

『ジン様よ、お前が何もかも理解した上で、こんな事をやっているのは』

『だからじゃ、ジン様、お前は阿呆なのだ』


ゆっくりと辺りを歩いて回り、災厄と希望の神(パンドラ)はそっと黄緑色の髪の少女の髪に触れる。


『今度は、取り返しがつかないと申したな?』

「あぁ、間違いなく聞いた」

『そうであれば、この娘の命、貰っても良いな?』

「どうしてそうなる? 災禍の左目…… お前のモノに触れたのは、そこの赤髪の女だろ? それとも、同じ“神”は殺せないのか?」


災厄と希望の神(パンドラ)は、俺の言葉を聞くと辺りを全て漆黒の殺意に包み、少女の前から消えて俺の背後で、痛みを伴うと錯覚するほどの殺意を纏って、首筋に冷たく重たい息を吹きつける。


『ふぅ~』

『気付いておるのだろう?』

「何に気付いてるんだ?」

「ぐふっ!?」

『発する言葉には、気を付けるのじゃ、“アレ”では、躾が足らんかったかのう?』


俺の胸に、激烈な痛みが突き抜ける。

呼吸は止まり、息が出来ずに苦しい。

痛くて、苦しくて堪らないのに、悶え苦しむ事も出来ない。

何か暖かいモノが瞳から流れ落ちる。

真っ黒な世界に、赤い滴が溢れ落ちる。


俺の瞳から血液が流れ出す。

恐る恐る視線を落とすと、俺の胸から災厄と希望の神(パンドラ)の幼く弱々しい手が飛び出し、その手には俺の…… 心臓? が、握られていた。

これが、心臓だと見た目で分かった訳じゃない。

理解出来ただけだ。


それを、それだと認識した途端に身体から力が抜け、意識が飛んだ。

どれだけの間意識が飛んでいたのか、永く、一瞬のようにも感じた。


瞳を開けると、災厄と希望の神(パンドラ)の膝の上で仰向けになっていた。


『少しは理解出来たか? 妾の恐ろしさを、優しさを』


胸の痛みは恐ろしい程に癒えており、殺意に満ちた災厄と希望の神(パンドラ)の表情は、子供を見守る母親のように、優しい表情に変わっていた。



『気付いておるのだろう? あの少女が本来の神獣だという事に』

「あぁ……」

『だったら、あの少女を殺せば良いのでは無いのか?』

「俺は、守ると決めたモノは絶対に守る…… それが、神でも悪魔でも」

『やはりジン様よ、お前は阿呆よのう』

『災禍の左目の代償は、あの少女に支払って貰うことになると考えなかったのか?』

「問題ねーよ、お前は優しいからな」


『やはりな……』

『ジン様よ、お前の事が妾は大好きじゃ、女神に気持ちを逸らすようであれば、諸ともじゃからのう』


災厄と希望の神(パンドラ)は、そう言うと俺の頭を僅かの間、名残惜しいように撫でると、俺を立ち上がらせ、そっと胸の魔方陣に手を置いた。

魔方陣が一瞬光を放ち、その中に災厄と希望の神(パンドラ)は消えて行った。


『ジン様よ、お前は誰にも渡さないからのう』

『絶対にじゃ……』


災厄と希望の神(パンドラ)の言葉が余韻を残して消えると、自然と別の言葉が頭に浮かんで来た。

俺は、その言葉をそのまま発する。


「絶望に触れし黄昏の刻よ、希望に触れし暁の刻よ、今、ここに、その(ことわり)を捨て我の力となれ」


詠唱に呼応するように大気が震え、目の前に紫色の魔方陣が現れる。

その魔方陣に優しく触れて、俺は一本の禍々しい剣を取り出す。

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