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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
34/96

33、現に実在する世界を歩き

俺の首は気付くと自分の身体に戻っていた。

それどころか、今まで殺されて続けていたハズの公園の人々が、皆何も無かったようにはしゃいでいる。

マリーナが俺を心配したように覗き込んでいる。


気付くと声の主は消えていた。


世界が何事も無かったように動き出す。

ただ、痛みと苦しみの記憶が、今まで起きていた事が現実だと教えてくれる。


『忘れるで無いぞ、次は全て現実の事となる』

『ジン様よ、お前は妾のモノぞ』

『忘れるで無いぞ』


「災厄と希望の神!」


俺は、立ち上がり必死で周囲を見渡し声の主を探すが…… 居るハズは無かった。

そっと左目を撫で、これが災厄と希望の神のモノである事を強く潜在意識に刻んだ。


時を刻む。

今までに何度も目にした、口にした。


しかし、この時初めて俺は、時を刻まれるという感覚を理解した。


時計の針が動いているのでは無く、時間が動いているのだと。

時が動いているのではなく、俺に時が刻まれているのだと、その事を理解した。


災厄と希望の神が教えてくれた。

俺がこうしている間にも、チイユの時は刻まれている。

早く行かなければ。


「マリーナごめんな」


その一言でマリーナは全てを理解してくれた。

急ぎ、宿に戻り身支度を終わらせると、ばあさんを探した。


「ジンさん、無理しないで下さいね」


宿を出る時に、見送るマリーナは優しく微笑んだ。


「無理はしてねーよ」


俺はそう言って片手を降り、すっかり暗くなった夜のキョウドの街を走った。


ばあさんの居場所はすぐに分かった。

マリーナが、一番高い建物を探して訪ねるようにと、雑な説明だったから不安だったがすぐに見つかった。

この街で5階層より高い建物は1軒だけだった。


それと、今までばあさん、ばあさんと呼んでたけど、当たり前だがばあさんにも“テマリ・スカーレット”という名前があるという事をマリーナが教えてくれた。


「ばあさん! 探したぞ!」

「おやおや、ようやくお出ましですか、いえ、構いませんがね」


もう夜明け前だと言うのに、蝋燭の明かりを便りに何やら大量の書面? 手紙? を、書いていた。

全てが俺の為では無いだろう事は分かるが、それでも老体に鞭打って、色々と頑張ってくれてる、テマリばあさんには感謝してもしきれない。


「ありがとな、ばあさん!」

「誰が老体じゃ、ワシはお前なんかよりよっぽど元気じゃ」

「それよりもじゃ、もう大丈夫なのか?」

「大丈夫って何がだ?」

「お前は、バカなのか? 身体じゃよ、身体!」


あぁ、そう言えば、ここに来た時には俺は熱と激痛にうなされてたんだな。

ここに来てどれくらい経ってんだ?

災禍の左目の影響で時間の感覚が分からない。

ばあさんとも、何年ぶり、何十年ぶりに出会ったような奇妙な感覚に陥る。


「準備は出来てるのか?」

「何の準備だよ?」

「質問してるのは、ワシじゃ、行くぞ」

「行くってどこにだよ」

「お前が寝過ぎたせいで、話しとる暇など無い」


ばあさんは、俺の手を引き、どうせ俺には荷物など無いだろと真っ暗な海沿いの道を急いだ。

途中に寄る街も無く、夜通しとはこの事をなんだろうが、着の身着のまま、食事は現地調達、疲れればどこでも休み、街道をひた走った。


「なんじゃ、思ったより体力が付いておるのう」


ばあさんは、遅れる事無く必死に着いて走る俺を誉めてくれたが、限界まで体力を消耗し倒れる寸前の俺の耳には入って来なかった。

どれだけ走ったのか、時間の感覚が狂ってる俺には全然理解出来ないが、何度目かの朝にエドの城下町に着いた。

街並みは想像通り、平屋が立ち並ぶ日本の歴史を描いたモノだったが、俺はその光景にい驚愕した。

映像で見るのと、眼下に広がる江戸の街並みは規模も雰囲気もまるで違う。

知っている景色なのに、まったく理解の範疇を越えた凄まじい光景だった。

地面を見ると、ルシアンの街に使われている四角く、車でも走れそうなモノとは事なり、丸みを帯びた石畳で覆われ、建物はどれも金属の板が至る所に使われており、壁に使われている、白い土のようなモノは、触れば分かる微細な金属の粒子が用いられている。

街は大きな川と海にで水上の要塞となっていて、城下町へ入るには、大きく弧を描いた橋を渡るしか無いようだった。

橋手前の関所で簡単な手続きを済ませ、何かの書面を渡し、関所の受け付けを待つ長蛇の列の横を簡単に通る事が出来た。

ばあさんに、何でこんなに簡単に入れるのか聞いても、急ぎだからとだけしか教えてくれなかった。


街の管理は、この世界に来て初めてみる自動機械人形が行っており、ゴミ一つ落ちて無くて、飲食店や、警備も自動機械人形達が汗水流して頑張っている。

実際に汗を流す事は無いんだろうが、働いてる姿や、汗を拭う仕草が、人間以上に人間味を帯びていて、街の人々にも広く愛されている様子だ。

そして、俺が一番驚き感動したのは、なんと、聞いて驚くな、遊郭の一角に一際輝く“パチンコ屋”がその存在感を放っていた。


「ばあさん、あれ! あれ!!」


興奮した俺は、ばあさんの腕を引っ張り、何が何でもパチンコ屋に入ろうとしたが、エドの街に着いたのが早朝だった事と、ばあさんが本気で怒っているようだったので、全てを言わずとも、禁断症状を飲み込んで最愛の人を見送るようにパチンコ屋の前を通り過ぎた。


ばあさんが向かった先は、エドの街の中央にそびえ立つ豪華な本丸、エド城だった。

エド城の手前には大きな門があり、ここにも入城を管理する建物があったが、ばあさんは素通りして行った。

俺が後を追うと、すぐに門番に止められたが、ばあさんが急いでると一喝すると簡単に通してくれた。


ホントに何なんだよ。


エド城の中は、やたら近代的で、電気証明や、カーペットに、エレベーターまである。

空調管理も完璧で、今までのこの世界の印象が一変した。


「ここが、最上階、王の間じゃ、絶対に失礼の無いようにな」


そう言って通されたのは、扉も、天井も、柱も、壁も床も、眩しい程に金ぴかの大広間だった。

奥には、王が座して俺達が到着するのを待っていた。


「おぉ~遠い所をわざわざ、いや~よく来てくれたのですよ」


俺は、エドの王と聞いてちょんまげ頭を想像していた。

王と聞いて、おっさんを勝手に想像していた。

しかし、目の前に現れたのは、ピンクのセミロングの少しウェーブした髪を靡かせ、青に近い紫色の瞳を輝かせる女の子だった。

女の子は、走ってばあさんに飛び付くと嬉しそうに胸に顔を埋めていた。


「テマリが来てくれれば、もうこの街は大丈夫なのです、間に合ってよかったのです、そうだ、そうだ、リリムも下の階でテマリを待ってたのですよ、どうして遅かったのです? それと、こちらの殿方は…… 情報には無かったのですけど、どなたですのよ?」

「これは、イエーミュ様申し訳ございませんですじゃ」

「よいのです、よいのです、堅苦しい敬語は無しでよいのですよ」


イエーミュってダイブ無理ねーか?

どうせ、トクガワだろうからファーストネームは聞かねーけどよ、展開早すぎてついて行けねーし、疲れてて俺はそれどころじゃねーんだよ。


「この者は、こう見えて、この世界に3人しか居ない勇者の一人名をジンと申しますじゃ」

「勇者様! ホントなのです? 凄いのです、凄いのです!」


イエーミュはばあさんの胸から離れると、俺に抱きつくようにこちらに飛び込んで来るが、俺は災禍の左目の災厄を忘れる事は無い。

飛び込むイエーミュを見事に避けると、その勢いで無機質な床に倒れ込む。


「な、な、な、何をするのです!? 無礼なのです、酷いのです」


イエーミュは着物の袖を噛み俺を見上げる。

流石に罪悪感があるが、あの幻の災厄が今度こそ本当に起きる事を考えれば、こんな罪悪感意図も簡単に飲み込める。

すかさずばあさんが俺の頭を思いきり叩き、イエーミュに謝罪を入れさせる。当然俺は素直に謝った。


「何をするのです!」


当然怒るよな。起き上がったイエーミュは俺に詰め寄る……かと、思ったらばあさんの所へ行き、ばあさんを咎める。

ばあさんは、若干、いやもっとか、納得出来ない様子で俺を睨み付け、俺に謝罪した。


「勇者様、勇者様と言う事は、魔王を倒したのです? それで、先刻現れたというヒュドラもジン様がお倒しになられたのです? 凄いのですぅ」


目を輝かせるイエーミュがあいつに重なって見えた……


俺は、イエーミュの称賛を浴びに浴びて、リリムと合流した。

クロは、まだ毒が抜けておらず、意識も戻って居ないという事だった。


この状況でばあさんが急ぎこの街を訪れたのは、別にクロの為じゃない事は分かっていた。


「リリム、元気そうで良かった!」

「ジン君も、あのままバイバイしてごめんね、大丈夫だった?」


リリムが上目使いで俺の胸にそっと手を添える。


「うわぁー! やめろ!!」

「ジン君!? どうしたの?」

「ジン! どうしたんじゃ!!」


災禍の左目の災厄のトラウマが蘇り、思わずリリムを突き飛ばしてしまった。

動揺を隠せないリリムと、リリムを突き飛ばした事に終始殺意を飛ばしてくるばあさんに、昼食を終え落ち着きを取り戻し、俺はゆっくりと口を開き、災禍の左目の事を話した。



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