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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第一章~魔王の目覚め~
27/96

26、優しくて、鬼強い、少女の背中に守られて


「クソッ! 誰がこんな!?」

「ジンさんも逃げるっす! オイラも流石に、この数は、っす!」


いつ、如何なる時も鉄壁を誇って来たチイユが、眷属どころか、獣の数に圧倒されてる。


「ローヤは、ローヤはどこだ!?」


シズネが、獣達の攻撃を斬り伏せながら必死でローヤを探してるが、獣の数が多すぎて、俺がシズネを認識するのもやっとな位だ。

こんな状況で、俺が無傷でここに立てているのは、チイユがスキルで俺を守ってくれているからだ。


チイユが守るってくれている間に、一体でも多く倒さなければ……


「っ!?」

「ジンさん、どうしたっすか!?」


俺の微妙な変化をチイユが直ぐに察する。


「チイユ! 大道具入(ビッグポーチ)!!」


チイユは慌てて大道具入(ビッグポーチ)を片手で抑える。

チイユの影から、一人の少年? が、上半身だけ出して、チイユの大道具入(ビッグポーチ)に手をかけている。


「ッチ!」


少年は、舌打ちをすると、水に飛び込む様に、影の中に入って行った。


「ジンさん! 金貨は無事っすか!?」


ダメだ、全て大道具入(ビッグポーチ)に入れていた。その大道具入(ビッグポーチ)を丸ごと奪われた、金貨が無い。


「大丈夫っす! オイラのを使うっす!」


チイユが投げた大金貨がゆっくりと回転して俺の方に飛んでくる。


「スキル発動! 盗賊の鏡(ハンティングミラー)


突然に現れた銀色の膜。その膜は、大金貨を包み込むと七色の光を乱反射して消え去った。

さらに、無数に現れる銀色の膜から、ただでさえ厄介な獣の類いが次々に送り込まれてくる。

チイユのスキルが追い付かない。

広場にいた人々は逃げ惑い、持ち合わせたスキルで抵抗するが家庭でお気軽に使える程度のスキルでは、猛獣、幻獣、巨獣、魔獣の類いには掠り傷一つ負わせられず、無惨にもその四肢をもがれ、弄ばれる。

チイユが何かを叫んでいるが、耳をつんざく人々の叫び声で聞き取る事が出来ない。


流れ行く血を眺め、泣き叫ぶ人々の顔を見送る。

まるで、VRでホラー映画でも見ているように、次々に俺の周りで人が血を流し倒れて行く。


あぁ、俺は無力だ。


倒れ行く人々は、俺を囲う防壁に必死ですがるが、俺の意思でこの防壁を開き招き入れる事は出来ない。

叶う事なら、午後の昼下がり、お茶でも出して招き入れたいと悠長な思考に浸る。


突然に現れた眷属達は、既にどこかで暴れていたのか、テレジアの市街地に現れると同時に文字の出現を待つ事無く、気の向くまま、赴くままに甚大な被害を招き入れている。

眷属達は、周囲の獣の類いと異なり、逃げ惑う人々にはおおよそ興味を示さない。


ここまでが数十秒程度の事だ。


誰か、俺に金貨を渡してくれ、金貨があれば俺がこの状況を何とかする、金貨さえあれば、金貨さえ……


さらに数分間、救いの無い光景に、さっきまで救ったと勘違いしていた街が瓦礫に埋もれ、救ったと勘違いしていた人々が死に行く様を見ながら、防壁に囲われている事に感謝しながら、恐怖に震え、立ち尽くす勇者の称号をたまたま持ち合わせてしまった俺は、恐怖に震え、消え入りそうな声で謝り続ける事しか出来なかった。


「……ごめん、ごめんな、俺には何も出来ない……」

「頼む……逃げてくれ、お願いだ、誰か、誰か助けてくれ」


外界とは完全に隔離された防壁を叩き、その場で膝をつく俺にチイユが走りよってくる。


「ジンさん、泣いたらダメっすよ、折角の男前が台無しっす」


チイユが俺の涙を掬い、優しく頭を撫でる。

外界と隔離され、汚れ一つ付いて無かった身体に、誰かの血液を浴び汚れたチイユの手が触れる。

その暖かさが、温もりが、優しさが、俺の心を包んでくれる。


「ジンさんが皆を救うっす、待ってるっすからね」


チイユは俺の耳元で囁くと、申し訳無さそうに頬に口づけをして俺をどこか見慣れない、小さな農村の様な所に飛ばした。


「スキル発動! 絶対時間(ゴールドゴッド)領域(スリーピング)

「っす!!!!!」


飛ばされ行く最後の視界で、チイユが市街地全体をスキルの壁で囲い行く後ろ姿が見えた。

降りしきる雨は遠ざかり、血の臭いが遠退いて行く。

チイユの優しさが心に残り、優しさに包まれ、変わり行く景色は、天高くどこまでも続く青い空へと俺を誘った。


「絶対戻る! 絶対助けるから、待ってろよ!」


俺の声は、チイユに届いたのか、チイユが微笑んだ気がした。


――


「あんれ~こんな所で、何やってる? 村入らないと獣に殺されちゃうよ?」


草むらに膝を付き、どこまでも高い蒼い空を見上げる俺に通りすがりの麦ワラ帽子を被り、体長5mを越える程にデカい牛をひく少女がタオルで汗を拭きながら語りかける。

俺の瞳から溢れ出る尋常じゃ無い量の涙に気付くと、牛をその場に“お座り!”と、座らせ俺に駆け寄ってくると、怪我が無いか全身くまなく調べた。


「良かったの~どこかやられたんだと思て、あ、こんな所いたらダメだよ、ホラ、リリムが村を案内するよ、ホラ、行っくよ~」


俺は手を引かれるがままに、山の麓に見える村へと少女と5時間程の道のりを歩いた。

口を開かない俺に対して少女がずっと語りかけてくれていた。

村の事、俺の事、自分の事。


「リリムは君の事をスゴく気にしてるのだけれど、君はリリムの事を気にならないのかな?」

「う~ん、無言だね、良いよ、村に着いたら温かいもの食べて、ゆっくり寝て、話したくなったら話してね」


村に着いたリリムは、着くなり村の入り口を守る数人の男から、また変な者を拾ってきてと叱られていたが、リリムが舌を出して微笑むと男達は俺の背中を叩き、通れ通れと何も聞かずに通してくれた。


「リリムはね、善い人と悪い人の違いに敏感なんだって村長が言ってたんだ、だからリリムが拾う人は皆善い人なんだよ」

「拾って来たって、俺を粗大ゴミみたいに言うな」

「あぁ~やっとしゃべったね、じゃあ名前も言えるかなぁ~?」


俺の顔の真下に入り覗き込んで来る。覗き込むその顔があまりにも可笑しくて俺は久しぶりに笑った。


「俺は、ジン、ありがとう……」

「うん、良いよ! ホラ、あそこが愛する我が家だよ、行くよ」


そう言うと、すぐそこまでの距離をリリムは俺の手を引いて走った。

こんなにもデカい牛を入れる小屋が横に引っ付いた、とにかくデカい家だが、お世辞にも綺麗と言える家では無いが、どこか懐かしく、木の良い匂いがした。


「おんや、リリム、また誰か連れて来たのかえ?」

「ばぁちゃん! ただいま!」

「おや、こんれは良い男やの~、飯が出来とる、風呂も沸いとる、まぁゆっくりしてけ」


俺は、疲れきった心を癒すように風呂に浸かり、暖かい味噌汁と懐かしの白米を流し込んで、その日は言われるがままに布団に入り眠りに付いた。

目を閉じると、チイユの後ろ姿を思い出す。


俺一人こんな所で休んでいる分けにはいかないんだと理解はしているが、今すぐに動く事が出来ず、そのままに気付けば寝入ってしまい、そのまま朝を迎えていた。


~第二章 勇者の帰還~

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