24、勇者の称号
「シズネ、漆黒の鎧はどうしたっすか?」
「領主に預けて来た、彼らが今街の最終防衛線をスキルで守護しているんだ、チイユが居てくれたらどれだけ心強かったか」
シズネの一言に、チイユの機嫌が真っ逆さまに下降して行く。
そうだな、俺達だって必死に頑張ってやってたのに、シズネはたまたまローヤに飛ばされて、その先で役に立てただけなのにな、そもそもこいつが突っ走らなかったらもう少し良い結果になったかもしれないし、そもそも俺達を襲って来たこいつが言う事か?
……なんて、そんな事を考えているんだろう。
テレジアの市街地へと向かう途中、事の経緯を説明したが、チイユは夢でも見てたんじゃ無いかと言うから俺は身体に刻まれた魔方陣を見せてやった。
それにだ、現実問題として実際に発動したイベントを強制的に終了させて見せた。
「って、事はですよ、ジン、その災厄と希望の神に願えば現実の世界に帰れるか、帰れないとしても、何か手掛かりが手に入るか、あるいは、夫や子供に会えるのでは?」
あっ!?
一同、全力で走る足を止めて顔を見合わせる。
「それで、発動の条件ってなんだったんすか?」
「大金貨444万枚……」
えっ!?
またまた、足を止めて一同が顔を見合わせる。
「ローヤと同じ方法を取れば、不可能では無いが、どうしたものか……」
「ローヤと同じ方法なんかジンさんは取らないっす!」
分かった、確実にこの二人は仲が悪い。
それ以前にチイユは俺の周りにいる女と仲良くする事は出来ない、もしくはする気が無い、毛頭無い。
そんな俺達の前に判断に迷う光景が出現した。
“12の眷属 テュポーン降臨”
文字は赤く輝き、その周りを白く縁取り存在感を放っている。
文字の大きさもさることながら、巨大な蛇は、まだ文字が崩壊する前だと言うのに、現れると同時に市街地を半壊させていた。
さらに、テュポーンの周囲には、無数の大蛇が徘徊しており、それらが避難先の城へと流れ込まないように防御系のスキルを使えるモノ達が、何時動き出すとも分からないテュポーンの周囲で必死に戦っていた。
「スキル発動! 不可防壁」
「っす!」
チイユは到着と同時に、漆黒の鎧を纏い先頭で指揮をとっていた領主へローヤを主犯として引き渡すと、大蛇を防御壁で囲った。
「シズネ、早く漆黒の鎧を身に付けて切り刻むっす!」
「分かっている、領主返して貰うぞ!」
シズネは、領主が来ていた漆黒の鎧を強制的に剥ぎ取ると、そのままの勢いで身に付けた。
漆黒の鎧は、まるでシズネの声に、闘志に呼応するように、自然とシズネを纏った。
大蛇の殲滅は一瞬の事だった。
チイユが防御壁で囲い、シズネがそのスキルもろとも大蛇を“神の剣”で切り裂いた。
文字通り、どの大蛇も細切れに切り刻まれた。
俺は、領主と共に、ローヤを監視しながら、その光景を眺めていた。
“12の眷属 テュポーン降臨”の文字の崩壊が始まるまでは。
「ジンさん、こいつは動いただけでめちゃくちゃな被害が出るっす!」
「動く前に殺せば良いんだな!」
「違うっす、ローヤが持ってる“神の翼”で街の外に飛ばすっす!」
走ってここまで来る途中にそこまで考えていたんだなと関心しながら、俺は迂闊にもローヤが耳に着けている装飾品“神の翼”に触れてしまった。
それと同時に凄まじい魔力を吸い取られたのが分かった。
俺は、フラつきながら、チイユやローヤが持つ底を知らない魔力量に嫉妬心を覚えながらも、チイユに投げ渡した。
そこからはまるで一瞬の出来事だった。
“12の眷属 テュポーン降臨”の文字の崩壊か完全終わると同時に、チイユがテュポーンと俺を、幻想の森の最深部へと飛ばし、それと同時にチイユが飛んで来て、テュポーンの周りを多重不可防壁で囲うと、俺に合図を送り、俺がスキル黄金の流星で、固くて分厚い皮膚を貫き、再生力の高い細胞を焼き焦がし破壊し続け、テュポーンは立ったまま何も出来ずに消し炭となった。
その光景を遠くから皆が見守っていたのだろう、もの凄い歓声が遠くから地響きのように聞こえて来た。
「ジンさん、今回は扉の中にはジンさんが行くっす」
チイユがそう言うと、テュポーンの足元……と言うか、尾の元に金色の扉が現れた。
「これってさ、運の要素はあるのか?」
「当然っす!」
チイユが親指を立てて、俺に幸運を送って来るが、正直使った後に倒れる事しか出来ない、金塊の暴食を使う気にはなれなかった。
なれなかったのだが、チイユがあまりにも期待の眼差しを向けて来るんで、無理して発動させた。
倒れたら、ちゃんと何もせずに運んでくれよ……
俺の願いは届いたのか、扉に入り、アイテムを手に入れて外に出て来るまでの間、それから市街地へと飛ばされ、皆から称賛と、歓喜の出迎えを受ける間中ずっと俺の身体は金色の輝きを放っていた。
「知ってるっすか?」
「何をだ?」
「魔王の目覚めのイベントを達成して、魔王にラストアタックを行ったモノだけに与えられる称号っす」
「そんなモノあるのか?」
俺は分けも分からず、テュポーン撃破に雄叫びをあげる城の兵士達が集まる市街地の広場で、チイユに告げられる。
「さっき調べたら、ジンさんの英雄の称号は無くなってたっす」
「やっぱりそうだよな……」
俺は、テュポーンの出現に関係なく破壊された街の至るところに目が行く。
「ジン様、大丈夫です。 心配しなくてもジン様のスキルが届く前に避難は完了していました」
「それに悪いのはこの男ローヤだと言う事は、チイユ様の説明で理解出来ましたので」
領主が申し訳なさそうにこちらを見ている。
まぁ称号なんていらねーけどな。
「ジンさんの称号は勇者になってたっす!!」
「っな!?」
「この世界で3人だけの勇者の称号っす、凄いっす、凄すぎっす、こんなの伝説でしか聞いた事無いっす、ジンさんが言ってた召喚の話も信じるっす!」
チイユの声に広場の歓声はよりいっそう強まった。
しかし、そこに長いし過ぎたのか、身体を包む光は弱まり、魔力の切れた俺は眠るように力尽きた。
あとで聞いた話だが、シズネが口づけで魔力を分け与えようとしていたらしいが、チイユが“ジンさんが死んだとしても口づけはさせないっす”と、俺の命よりも、口づけの方が嫌だと言っていたらしい。
【12の眷属 テュポーン降臨イベント報酬】
“眷属の勾玉No,4”
“聖邪の鎧” ×2
“神託所の剣”
“嫉妬の鎧”
~金銀財宝一部換金済~
大金貨×45枚
金貨×7枚
【4億5700万相当】
以下
銀貨、銅貨、他道具省略
ただでさえ珍しい神の二つ名を持つアイテムをこれだけ手に入れた事にチイユは感動してくれた。
“飛竜はの目覚め”で、神の宝具を手に入れた事を言うとイベントのレア度が全然違うと皆から笑われた。
聖邪の鎧は、一つを領主へ渡し、残りの“聖邪の鎧”と“嫉妬の鎧”は、なるべく早く俺に聖神化するようにとチイユに念押しされた。




