23、希望とは絶対に絶望しないって事だ
「ジンさん、逃げるっす!!」
突然に、チイユが叫びスキルを展開する。
ローヤが笑っている。
まさか、本当に時間が止まっていたのか?
「何してるんすか? 悪魔の箱はどうなったすか?」
チイユの慌てようが、今まで起きていた事が夢では無いかと疑問を抱いてしまう程に伝わって来る。
「どうしたんすか!?」
「大丈夫全ては終ったから」
チイユが差し出す手の平を優しく握り微笑む。
ローヤは、完全に停止した文字の前で今尚笑っている。
俺は、ゆっくりとそのローヤに歩み寄る。
身体の光が弱まってきた。そろそろ限界も近いようだ。
「どうしたんだい? ジン! 諦めたのか?」
ローヤが完全に俺を見下し笑っている。
俺は、そんなローヤを通りすぎ、固まった“魔王の目覚め”の文字を無言で殴り破壊する。
「「っな!?」」
「っす!?」
ローヤとチイユの驚きの声が重なる。
そりゃそうだろう。本来破壊不能なハズの文字を破壊して見せたんだから。
まぁ、その時には既に魔王は消えてたんだが、そんな事をこの二人が知る由は無い。
「さぁ、これで終わりだ!」
俺は、振り返ると、口を開けて固まるローヤを渾身の一撃で殴り付ける。
ローヤは、地面にめり込む程に叩きつけられ意識を失った。
直後、先程とは比べ物にならない程の地響きが俺達を襲った。
「チイユ、これは?」
俺は、揺れる地面に必死に耐えながらチイユに訪ねた。
「12の眷属が目覚めたんす!」
「っ!? どうして、魔王の目覚めは止めたぞ!?」
「オイラは説明したっす、魔王の目覚めが失敗しても、12の眷属は生まれ落ちるっす」
そんな、それだったら俺は何の為に……
「大丈夫っす、街の人々はきっと避難してるはずっす」
「それに、魔王が目覚めてたら、眷属は、魔王を倒さない限り何度も生まれ落ちるっすけど、魔王が居なければ、倒せば良いだけっす」
希望は、残ったのか?
「ジンさんが世界を救ったっす!」
地響きで聞き取りにくい状況で、チイユは俺に抱きつき耳元でそう囁いた。
それと同時に俺から金色の光が消えて行く。
まずい、まだ街に生まれ落ちた眷属を倒す必要があるんだ。
「スキル発動! 魔力譲渡の儀」
膝をつき、チイユに覆い被さるように倒れ込む俺を、突然に森から飛び出して来たシズネが掴みそっと口付けをして来た。
「なにするんだ?」
「なにするっすか!?」
俺は、チイユが俺に口付けをしたのかと勘違いし、急いで振りほどいたが、そこには漆黒の鎧を脱いだシズネの姿があった。
「大丈夫ですか? ローヤは、悪魔の目覚めは止められなかったんですね……」
シズネが悲しそうな表情をするが、チイユはそれどころでは無い様子だ。
“なにするっすか、何をしてるんすか、オイラのジンさんに”と、必死で猛攻義ををしている。
まぁ、“オイラのジンさん”になったつもりは無いんだが、しかも俺は災厄と希望の神と契約した為に、今後誰かと結ばれる事は無いんだが、まぁそれは今は言わなくて良いか。
「ごめんなさい、でも、魔力を渡す方法が口づけしかなくて、わた、俺、あたいも夫に悪いとは思ったけど、それでも必要な事だったら」
慌てているのがよく分かる。完全にキャラが崩壊している。
漆黒の鎧をどうしたか聞く間も無く、そんな事をしていたら、街の方角から空を切り裂くような悲鳴が次々に届いて来た。
「今はそんな事を言ってる場合じゃない!」
「そんな事じゃ無いっす、大事な事っす」
俺は、チイユの言葉を遮り、無理矢理抱き抱えると、街の方角へと走った。
「ちょ、ちょっと待つっす、ローヤを捕らえるっす」
そうだった、この男をここに置いて行くわけにはいかない。
チイユがローヤを抱え、三人でテレジアの街へ事態の収拾へと向かった。




