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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第一章~魔王の目覚め~
11/96

11、拷問か癒しか、それを決めるのは俺か?

「なぁ、アリィ」

「ジン様、どうされました?」

「めちゃくちゃ遠いって事だけどさ、乗り物……例えば馬とかって乗って行けないのか?」

「馬?長距離移動用のトカゲだったらいるんですが、どうしてもチイユ様が歩いて行くと言うので……私としては、急ぎたいのですが……」

「ジンさん、あれは乗り物じゃないっす、オイラ達英雄(クラス)の冒険者は常に自分を強化しなければならないっす、急ぎたければ全力で走って肉体強化に努めるっす」

「ただでさえ、ジンさんは魔力無いんす、しかも一撃必殺のチートスキルなんて使い勝手悪すぎるっす」

「まぁ、間違いなく最強のチートスキルなのは認めるっすけど……」


ブツブツと言いながらも、面倒なイベントに巻き込んだのにも関わらず、突然に現れる獣達を軽々とスキルで薙ぎ払いながら俺の前方を常に走っているチイユの背中を見て俺は必死でついて走った。


と、言うか、チイユの化け物体力と、よくよく考えると飛竜の破壊的光線を防いでしまうチイユのスキルも大概なチートだと改めて気付いてしまい、そしてそれらを全て指先の運動だけで手に入れたかと思うと嫉妬以外の何モノでも無かった。


チッ!


さらに、そのチイユが息を切らしながら走っているのにも関わらず、息一つ乱さずに、チイユが防ぎ逃した獣を、スキルも使わずに背中に背負った身体よりも長い細身の剣で斬り伏せて行くアリィは何者なんだろうという疑念が浮かんで来た。


「アリィはこっちの人っすか?」

「こっちって?どういう事ですか?」


こういう時に躊躇無く聞けるチイユが凄いと思う。


「私は、ルシアン王国の南端の国境を管理する街、テレジアという所で生まれ育ちました」

「それで、今回のイベントに強制参加になったんすね」

幻想の森(フリージア)は、普段は優しい森なんですが、森の住人が行方不明となり、変わりに何者かが住み着き、南のカナジュリ共和国との貿易が経たれてしまったんです」

「それっす、それが不定期イベント“迷いの森の使者”っす」

「不定期イベントと申しますが、チイユ様、幻想の森(フリージア)は魔素の濃度が濃く、稀に猛獣や幻獣が迷い込み、それを冒険者の方や、私達で討伐する事はあるんですが、今回は様子が違いまして……」

「そうなんすか?オイラには良く分からないっす、とりあえず石化をして来るって事は蛇の類いの幻獣だとは思うっすから、いつも通りと思うんすけどね」


俺が全力で息を切らし、汗だくで後ろから追いかけているにも関わらず、こいつらは、涼しい顔をして、獣を倒しながら、軽く喧嘩までして、元気なやつらだ。

俺の耳には、こいつらの声は聞こえるが、疲れ果てた頭では内容を理解する事が出来なかった。


やっとの思いで辿りついた小屋は中継ポイントで、道中には所々こういうポイントがあるらしい。

そう言えばチュートリアルでも、所々に山小屋があり、必ず管理人が居て体力の回復が出来た。


俺は妙に納得した。

こうやってスマホでもセーブポイントを探して冒険してたんだな。


こうやって現実にあると本当にありがたい。

管理人のおっさんは、背が高かったり、反対に低かったり、髭だったり、白髪だったり、色々だが、皆等しく神に見える。


……本当にありがたい。

俺は風呂に入り、天井から滴る滴を眺めながら、心から感謝していた。


「ジン様、お背中流します」

「あぁ、ありがと……う……」


「……⁉っう⁉」


「どうかされましたか?」

「いや、どうかとかじゃなくて、何しに来た」

「いえ、だから、お背中流しますよ」


そう言って首を傾げ微笑むアリィの身体にはタオル一枚纏われておらず、言うなれば生まれたままの姿で立っていた。


「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ」

「おかしいから、おま、マジでそういう事はやめとけ」

「チイユに見つかったら俺が殺される、今すぐ出てってくれ」

「大丈夫ですよ、チイユ様は緊急超レアイベントが発生して、急ぎ“妖精樹(マンドレイク)”の討伐に向かいましたから」


こいつ……確信犯か……


アリィは優しく俺の腕を掴み湯船から洗い場へと誘う。

俺は、抵抗する術を持たず、されるがままに身体を洗われて行った。

当然の様に下半身にも手を回すアリィの腕を掴み拒むと“アンッ”と艶のある声を出され、それに戸惑い思わず手を離してしまうと、微笑みながらアリィのなすがままに、アリィがやりたいように、されるがままに洗われてしまった。


風呂上がりの俺の心に、清々しい気持ちと同時に、罪悪感という重い鎖が巻き付いたようだった。


「ただいまっす、あ、ジンさん調度良い所にっす」

「……っす?」

「チイユ、どうかしたか?」

「ジンさん、オイラが今までに見たことも無い程にニヤけてるっすけど、何か良い事でもあったすか?」

「いや、疲れはてた後の風呂がこんなにも“気持ちが良い”モノとは知らなくてな、ニヤけてるか?そんな事ないぞ、俺は至って平然としてる」

「……?」

「ま、それなら良かったす、オイラはてっきり、オイラがジンさんの為にレアイベントでレアアイテムを獲得している間に、アリィと何かあったのかと思ったっす」

「何も無いなら良かったっす」


……こいつ、気付いているのか……?


その後、テレジアに着くまでの間、チイユが俺から目を放す事は無かった。

心なしか、チイユの笑顔が少しだけ怖く見える気がした。

アリィもテレジアに着くまでの間、俺に“ナニか”をして来る事は無かったが、同様にその笑顔が怖かった……。

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