10、少女は女よりも強し
城に部屋を用意して貰った俺達は暫く城の中だけで生活をする事になった。
最初の夜は、ひっきりなしに女達が俺の部屋へとやって来たが、全てチイユが追い返した為に、俺は恩恵の一つを逃した事になる。
だからと言って、おっさんが重なって見えるチイユに手出しする気にはなれず、欲求不満な夜が続いた。
チイユはチイユで、一人で発散しているようで、夜な夜な怪しげな声や音が隣の部屋から聞こえて来ていたが、俺は何も無かった事にして、自らの記憶を整理した。スキル発動!“疑似記憶”と、いった所だろうか……。
城下町で色々見て回りたい俺を、今出歩くと大変な事になるから、祭りが落ち着くまでは城で様子を見るようにチイユが促してくれて俺は納得した。
祭り騒ぎが落ち着くのに1ヶ月を費やした。
その間、欲求不満をぶちまける様に、城の中にある闘技場で、色々とスキルを試して見た。
流石に、洞窟でやったように、金貨をブッ放す分けにはいかないから、一度だけにして、半壊する闘技場を見て顎が外れる闘技場の管理人さんに頭を下げ、銀貨や銅貨で同じ事が出来ないか、金貨で他に出きる事が無いか色々と試した。
結果は、この先の冒険で色々と披露して行く予定だ。
祭り騒ぎも落ち着き、城の食事にも飽きて来た頃、チイユが城下町へと出掛ける提案をしてきた。
待ってました、待ってましたともこの日を、だって大金が手に入ったからには、勝負に出掛けるのが男の性。
「そんな性知らないっす、とりあえずオイラ達のステータスを調べに教会に行くっす」
「ジンさんのステータスがめちゃくちゃ気になってるっす」
「城に呼んで来てくれたら良かったんすけど、あの人達はやたら教会に拘るから、こっちから行くしか無いっす」
ステータス……って、どんだけゲーム要素入って来んだよ。
ぶつぶつと文句を良いながら城の門をくぐり、久しぶりの城下町へと繰り出すと、城の門のすぐ外にローヤが立っていた。
「酷いよチイユ、僕も城に入れてくれよ」
「だってローヤは何もしてくれなかったっす、全部ジンさんの手柄っす」
「そしてオイラは皆を守ったっす」
ローヤの視線が、俺に敵意を剥き出しにしている。
いや、でも実際チイユが言う事が正しいのであって、お前は何もしていない……って事は無いか、金貨をこいつが貸してくれたからあの時スキルを発動出来たんだったな……。
「ローヤ、あの時は助かった、ありがとな」
な、こいつ、俺の感謝の言葉と握手をスルーしやがった。
「チイユ、それで今からどこに行くんだい?僕が案内するよ?」
「ローヤ!なんで、ジンさんを無視するっすか」
「イヤ、だって、僕だって……」
「謝って、感謝して、頭下げて、握手するっす!!」
チイユが腕を身体の前で組んでローヤに圧力をかけると、素直に俺に謝って来た。
若干納得が出来ない所は残ったが、まぁこいつもこいつなりに素直なんだろうと、その素直さが仇にならないように気を付けようと思い、握手を交わした。
若干力を込めたけどな!
俺達はローヤに案内されるままに教会へと向かったが、その日俺達が教会に辿り着く事は無かった。
「ジン様、チイユ様、お助け下さい、イベント発生に“聖女連合”の仲間達が巻き込まれてしまったんです、どうかお願いします、助けて下さい」
次の災いを俺達にもたらせたのは、アリィだった。
「アリィ、それは聖邪の鎧っすね?」
「はい、これを王様から頂き、飛竜討伐の功績を受けてクエストに臨んだんですが、私以外全滅してしまって……一人で逃げ帰って来たんです」
「仲間達は石化したんだね?」
「はい、ローヤはイベント発生を知ってたんですか?」
「あぁ、僕も王様に呼ばれてね、面倒だったから断ったんだ、というか、何でジンは“様”で、俺は呼び捨てなんだ?」
「だって、ジン様は英雄ですから……それよりも、面倒だったから断ったってどういう事ですか⁉」
“英雄ですから”と言って、俺の腕を掴むアリィが身に付けた“聖邪の鎧”は、ビキニタイプになっていて、溢れんばかりのおっぱいが俺の腕を挟み込み話に集中出来なかった。
「ジンさん、あまりこのクエストはやっても意味が無いんすけど、経験にもなると思うからやるっすか?」
腕に神経を集中していた俺から、チイユがアリィを引き剥がしながら、不満そうな顔で訪ねて来た。
「当然だ!アリィの仲間は俺が助ける!!」
“ジン様大好き、ありがとうございます”と言って、抱きついて来るアリィを俺に近づけさせないように、チイユが間に割って入り、それを見て不満そうなローヤをチイユが促し、旅の準備を進めた。
「まぁ、飛竜に比べたらカス見たいなクエストなんで今回は楽勝っすけど、あんまりアリィとイチャイチャしたら、他国にクエスト“英雄ジンの討伐”を発注するっすからね、良いっすか、分かったっすか⁉」
そんなクエストを、というか、クエスト事態を発注できる事に驚きながら、俺はこの世界で女の子とイチャイチャする事が出来ない事を悟り、肩を落として、クエストへ出掛ける旨を申し出に城へと向かった。
アリィの案内で王への挨拶と言う事だったが、大臣が代わりに出て来て、王が不在と言う事だった。
俺は、こんなにも貢献して、さらに王の発注クエストを受けようと言うのに王に謁見出来ない事を不満に思っていたら、チイユは王に会えない事を知っていたようで、どうやらこれもイベントの一貫らしい。
「なぁ、チイユ、クエストってどうやって発注するんだ?」
「クエストっすか?簡単っすよ、カネっす」
「報酬ぶら下げて、依頼するっす」
あ、なるほどね、どこの世界もカネ、カネ、カネって事なんだな。
しかも俺のスキルも金貨が無いとどうにもならない。
コスパ悪すぎるだろ……。
翌日、早朝から聖女連合救出に向けて俺達は出発した。
目的地は、ルシアン王国最南端、幻想の森。
ローヤは今回は別で用事があるという事で、俺達には同行しないという事だった。
ローヤ曰く、“イベントはちゃんと選ばなきゃ”らしい。
どれだけ価値が無くても、命の恩人のアリィに頼まれれば断れる分けが無い。
“聖女連合”という響きに、期待と同時に不安を覚えながら、チュートリアルの時とは比べ物にならない距離の移動が始まった。




