緊急クエスト発生
1日最低1話更新がんばるぞー
3日後、リンの謹慎処分が解けギルドへ行くと先にいた冒険者たちより腫物を見るような刺す視線を向けられる。
そういう視線を無視し、ギルドカウンターの受付嬢サラの元へ行きマスターとの面会を求めた。
サラがガザックへと連絡を入れ、リンたちはマスタールームへと通される。
「失礼します。ガザック殿、謹慎期間が明けたのでご挨拶に伺わせて頂きました。」
「うむ。堅苦しい挨拶は抜きじゃ。ちょうどお主たちに話したい事もあったのでちょうど良かった。先日の乱闘により、お前たちと共に同じクエストを受けるのは無理だとの意見を受けた。」
「それは、私がやりすぎたせいでしょうか?」
ガザックは、その質問に頷き今後についての考えを示した。
「この街でお主たちと組める人間がいるとすれば、今クエストを行っているパーティーが可能性はあるはずじゃが、このままではお主たちの受けるクエストは限定され不利益を被るじゃろう。主導権は、お主たちと一緒でいいという者たちに握られると言ってもいい。」
「そうですか・・・。マルグリッドさん、アイカさん、クロネさん、リーフ私のせいでごめんなさい。」
「いいえ。構いませんわ、間違っているのは、この街のギルドに登録している冒険者たちですわ。」
マルグリッドがパーティーを代表して、りんに返事を返す。
そこにガザックがある提案を出す。
「わしから、お主たちにランク昇格クエストを発注させて貰う。若干、難しいかもしれぬがお主たちであれば達成出来るじゃろう。」
ガザックの依頼内容はこうだった。
ラクスタッドの街の北に位置するサバルト山脈に入った狩人によりコカトリスが目撃された。それをリンたちが討伐するというものだった。
コカトリスは、鶏と蛇を合わせたような姿をしており吐くブレスは石化の力を持っていると言われている魔獣で上級モンスターにあたる。
本来であれば、Bランクのパーティーが複数協力して倒すクエストではあるのだが、緊急性が高く早急に対応しなけば街に被害が出る可能性も考えられるためマスター権限による指定クエストとして依頼したものだった。
リンは、万全を期すために準備期間として1日欲しい旨を伝え、ギルドを後にする。
「今から人数分の指輪を買って欲しいの。みんなのサイズがわからないので、大至急お願いね。私は、宿屋で待ってるわ。」
そう伝言して、明日の出発に備え魔法の道具の作成のための呪文式の構築のために宿屋の部屋に籠った。
数刻して、全員が宿屋に戻って来たので指輪を預かるのと同時に昨日までに魔法の加護を施した装備を各人に返した。
「今から、預かった指輪に石化耐性の守護を施します。出発時に皆さんに指輪をお返しします。他の準備に関してすべてお任せしますのでよろしくお願いします。」
「では、他の準備に関しては残りのメンバーで分担させて頂きますわ。よろしくって?みなさん」
「は~い」「はい」「りょーかい」
分担を決め、各人が準備をするのにあちこちの店に行った時のことだが、他の冒険者たちと鉢合わせすることがあり露骨な態度を取られた。
リンにより力の差を見せつけられプライドを傷つけられた冒険者が悪評をあちこちで言いふらしているのも聞こえてきた。
予想をしていた事とはいえども、さすがにうんざりとした表情になっていく。
(早めに買い物を終わらせて、宿屋に帰って眠ってしまおう。)
各々そんな事を思いながら、気分転換に浴場に行き身体を綺麗にしたのち宿に戻り早めの就寝となった。
翌日、全員が早めに目が覚め食堂で朝食を取り出立の準備を始める。
リンとリーフの準備が出来たところで、マルグリッドたちの部屋に行きリンが指輪を各人に渡し注意事項を伝える。
「石化耐性は、指輪に施したのだけれど過信はしないで欲しい。ブレスは、回避する事を念頭に戦いましょう。」
宿屋の前から馬車に乗りサバルト山脈の入り口近くまで移動した。
そこからモンスターの目撃情報の場所まで移動し、索敵を開始し見つけた場所で3方向から攻めるような手筈で作戦を立て、正面をリンが左右をそれぞれマルグリッド・クロネ組・リーフ・アイカ組で一斉に攻撃を仕掛ける事にした。
山脈の森林姿態を周囲に警戒しながら上っていく・・・
不意打ちでコカトリスに襲撃されるなんてことになれば、立てた作戦が水の泡になるのと同時に命が危険に晒されることは想像に難しくない。
コカトリスが目撃された場所まで来ると近くに石化しているゴブリンたちの石像が発見された。
ゴブリンたちは、コカトリスから逃げようとして、ブレスにより石化されたらしい。
ここからは、一層注意して索敵をしなければいけない。
リンは、心の中で森の精霊に語りかける。
(ドライア、ここにいる精霊たちにコカトリスの場所を教えてもらえないかしら?)
『んーそれじゃ、周りの精霊たちに聞いてみるね。』
(よろしくお願いね)
少しの時間待った後、ドライアからの返事があった。
『リン、もう少し登ったとこに洞窟に入る大きな入口があってその奥にコカトリスは棲んでるみたい。』
(そっか。ありがとねドライア)
リンはドライアから聞いたことをパーティーのメンバーに伝える。
洞窟にいるだろう事を想像しつつも、慎重に洞窟の入り口のそばまで歩いて行った。
一旦そこで小休止を取りつつ、コカトリス討伐作戦を相談する。
洞窟の中には、リン一人で入って行きコカトリスを洞窟の入り口まで誘導し出てきたところを両サイドから強襲する。
リン一人で洞窟内に突入するのは危険が伴うが、他のメンバーが単独で突入するよりはマシだという事で無理やり納得させた。
また、全員で突入するとブレスを回避する事は難しいという理由もそこには存在していた。
休憩後、リンは杖と腕輪に魔力を通しライトとサイクロンアクアスクリーンの呪文を発動させる。
杖を前方に掲げ、杖を灯しているライトの明かりで洞窟の中を注意深く観察し歩みを進めていく。
一本道ではあるがかなりの大きな通路であり、天井は明かりがぎりぎり届く範囲の高さであった。
300メートルくらい進んだところで道が左へと曲がっていて、曲がり角で道の奥を覗きこみ危険がないかを確認した。
ここまでの距離となるとコカトリスを入り口まで誘導するのに苦労する可能性が高くなってきた。
そこで、リンは風の精霊シルフィスに斥候を頼みどの辺りにいるのかを確認してもらうことにした。
シルフィスによれば、左に曲がった後200メートルくらいの処に広いスペースがありそこにコカトリスが寝ているという事だった。
リンは、そこで思案した。
(合計で500メートルくらいあるなら、私の足の速さであれば追いつかれる危険性がある。現在、コカトリスは寝ているらしいので入り口に戻り全員でコカトリスを討伐したほうが安全化も知れない。)
来た道を引き返し、入り口で仲間と合流し作戦を練り直す事にした。
「今、コカトリスは500メートルくらい行ったとこの広い場所で眠ってるの。だから、みんなで洞窟に突入して広場で打ち合わせた位置に全員が着いたところで一斉に攻撃開始したいと思うんだけどどうかな?」
「そうですわね、それならば一人が危険犯す訳でもありませんし認めますわ。接敵にあたっては気配と音を極力消して行きますわよ。」
マルグリッドとアイカを先頭に進んで行き、曲がり角のところでリンはライトの呪文を消し洞窟の明かりだけで移動しコカトリスに接近することにした。
ライトの呪文は、全員が配置に着いた時点で使う予定で一行は足音と気配を消しつつゆっくりと進み無事に配置に着くことが出来た。
「さぁ、みなさん行きますわよ」
マルグリッドの合図と共にライトの呪文を展開そしてファイアバレットを唱える。火の初級呪文ではあるがコカトリスをリンに注目させるためだ。
コカトリスは、リンを嘴で攻撃しようと襲いかかろうとした時左右よりマルグリッドたちが攻撃をかける。
尾を振り左右のメンバーを攻撃、マルグリッドが盾でその攻撃を止めようとしたが吹き飛ばれた。
しかし、リンが装備にエンチャント施していた為思っていたほどのダメージを受けていない。
左右からの攻撃を受け、若干のダメージを受けたコカトリスは石化ブレスを吐くための準備を始めた。
右側にいるリーフ・アイカ組を狙いに定めたようだ。ブレスを吐こうとした瞬間、リンが魔法の矢の呪文を唱えダメージを与える。
ブレスをリーフたちは全力で回避、その隙に体勢を立て直したマルグリッドの一撃及びクロネのクロスボウがコカトリスの目を貫いた。
叫び声をあげ、尾で再びマルグリッドに攻撃を仕掛けようとしたところでリンが止めを刺すために呪文の詠唱を始める。
「ロックジャベリン」
岩で出来た大きな槍を腹目がけて打ち込み、大穴が空いたコカトリスは絶命した。
その場で、座り込むパーティーメンバー息も絶え絶えの様子である。
コカトリスとの戦闘にそれだけ神経を使っていた証拠でもあり、討伐した事の安堵感からの脱力でもあった。
「さて、あとはギルドに報告だね。みんなお疲れ様~」
「しばらくは、こんな上級モンスターとやりあいたくないですわ。リンさんに魔法付与をしていただいた装備がなければ、死んでいたかもしれませんわ」
上級モンスターそれくらい危険であり、単独パーティーでの攻略は多大な危険を伴うそのことを実感したのであった。
今日は、洞窟を出て野営し明日ギルドへ戻り報告する流れとなり焚火を囲みみんなで食事をして1日が終わった。
翌日の昼過ぎ、ラクスタッドの街に戻りギルドに報告へ一行は向かった。
マスタールームへと通され、討伐の報告そしてAランクへのランクアップの許可が言い渡された。
「これでお主らもいわしと同じランクの冒険者であるな。これから、どうするつもりなんじゃ?この街では、お主たちは活動しずらいであろう。」
マルグリッドが代表して答える。
「私たちは、ヨーネス侯爵領に活動拠点を移そうと思っていますわ。この街のギルドには、お世話になりましたがこのままでは私たちがやりにくいの事実なのですわ。」
多大な討伐報酬を受け取り、一行は移動のための馬車を購入しようと街へ出た。
今回の報酬だけでも、数年は生活出来るのだがこの街はすでに居心地が悪かった。
ペースをあげようとしすぎてる感が・・・