精霊契約
ありきたりな設定でごめんなさい。
彼女は、野営のテントに入り横になる。
そうすると、脳裏にいきなり不思議な声が響く。
『あなたは、魔法使いなの?私の声が聞こえるのかしら?』
『私は、違う世界で魔導士をしていたわ。その世界では最強と言う名を欲しいままにしてたのよ。これでもね。』
『そう。私は、風の精霊シルフィス。あなたに助力してもいいわ。私の声も聞こえるみたいだしね。あとこの近くにいるのはえっと光の精霊以外だわ。』
『私と契約していただけるのかしら?できれば、精霊みんなとも契約をしたいのだけれど?』
『わかったわ。まずは、私と契約しましょう。契約の対価はそうね。あなたの力をいただくわ。これから、あなたは剣を持って戦うことは出来なくなるけどそれでもいい?』
『シルフィス。私リンは、腕力と引き換えにあなたと契約をしましょう。これで、契約は完了ね。』
『うん。これからよろしくね。リン』
『契約の証にこのリングをあなたに授けます。これで、風のマナはあなたと共にあるわ。他の精霊たちも呼んで来るわね。どの精霊と契約するにしても、対価は必要よ。それだけは絶対だから。』
『うん。』
シルフィスが他の精霊を呼びに行っている間に、リンは契約の指輪を装備した。
『リン、精霊たちを呼んできたわ』
『ありがとうシルフィス。さて、他の精霊たちの方々契約するにはどうしたらよいのかしら?』
『私は、水の精霊オンティーヌよ。この世界には魔王により汚された水があるの。それを浄化する事を条件に私は契約していいわ。』
『僕、木の精霊ドライアだよ。僕は無条件に君と契約してもいい。でも、たまにお願いするかもだけどそれでいい?』
『あたいは、火の精霊フレイヤ。あなたの力を試させてもらうわ。あたいを満足させれば契約する。』
『俺は、土の精霊アークトゥルス。俺も貴様の武を試させてもらおう。俺を屈服させれば契約してやろう。』
『闇の精霊ヨル。助力するには、あなたの別世界の魔法以外の記憶を貰おう。』
『オンティーヌ、ドライア、ヨル。すぐに契約して貰えるかな?次に、フレイヤ、アークトゥルスの順番で戦おうと思う。それでよいかしら?』
全精霊たちは、了承した。
契約したオンティーヌが首飾り、ドライアはイヤリング、ヨルは髪飾りを受け取り装備した。
『よし、準備は出来たわ。といっても、ここで戦うことは出来ないわよね?どうしたらいいかしら?』
『では、精霊界での力試しとしましょう。ただし、そこだと精霊の力は数倍になるけどね(笑)』
『わかったわ。それでお願いします。』
淡い光に包まれ、リンは精霊界へと移送される。
そこには、燃え盛る炎を纏いしフレイヤが待っていた。他の精霊たちは遠巻きに観戦するようだ。
『じゃぁ、いっくよー!』
フレイヤが叫ぶ。
リンは、自分の知識より呪文を唱える。
「ウオータースクリーン!」
彼女を水の膜が覆う。
フレイヤがそれに殴りかかるが、攻撃はリンには届かない。
『ファイアストーム』
火の精霊の最強呪文が唱えられる。
リンは、これはやばいと思い、対抗呪文を唱えようとするがどうも魔力が足りないようだ。
炎の嵐が徐々に迫ってくる中、彼女は必死に考えた。
この少ない魔力であの呪文を相殺する方法・・・
まずは、水の呪文は大前提である。あと残るのは、風・木・闇である。
属性的に言えば、木はありえない。なら、闇は?
難しいな・・・やはり、ここは水と風の混合魔術しかないな。
相手の極大呪文に対して、やや不安ではあるがほぼ全魔力を使い対抗するしかない。
「デュアル!」
水と風の属性を混合し、呪文を練り上げる。
「ウオーターテンペスト!」
炎の嵐と水風混合の呪文がぶつかる。
その瞬間に二つの力は相殺され、消え去った。
でも、リンには対抗する力は残されていない。
気力だけで立っているのがやっとだ。
『あはは。おもしろいや!あたいが完全に勝てると思って、呪文を唱えたのにそれを打ち消すなんてね。いいわ、リンと契約してあげるよ。これが契約の証ね。』
フレイヤより、炎の紋章のついた短剣を受け取る。
『さて、次は俺の番だな。』
アークトゥルスが言った。
『ちょっと待ってねー。アクアヒール!』
オンティーヌが回復呪文を唱え、体力魔力が満タンになった。
「ありがとうオンティーヌ。これで、また戦えるわ。」
『体力も魔力もない状態で戦わせるのは、フェアーじゃないからね♪』
オンティーヌは、ウインクした。
リンは、まず自分の状態を確認した。
(あれ、体力・魔力がすごく上がってるわ。フレイヤとの戦闘経験のおかげかもね。今まで使えなかった呪文も使えるようになったみたいだわ。)
『ちょっと質問いいかしら?無属性のマナを使った魔法は使えないのかな?』
『無属性ね。確かにマナには属性ないものも存在するわ。私たちでは利用方法がわからないわね。リンが方法を見つけるしかないのかも。もしかすると使えるかもしれないけどね。』
シルフィスが答えた。
「そっかぁ・・・まぁ、方法はおいおい考えるとしてまずは土の精霊さんを屈服させてみましょうか。」
『ふん。俺を屈服させるだと!火のやつみたいに俺は甘くないぞ!』
「アークさん、それフラグだから!それじゃ、始めましょうか。」
さぁ、土の精霊との戦いが始まる。
アークトゥルスがおもむろに呪文を唱える。
『ストーンスキン! ストーンアロー!」
先制攻撃を仕掛けてきた。リンは、それを落ち着いて対処する。
「ウインドプロテクション」
攻撃を風の障壁が完全に防ぐ。
体力魔力とも充実してる今、どんな呪文でもいけそうな気がする。
さて、反撃の時間だ。
小手調べに火系の呪文でも唱えてみようかな。
「ファイアアロー!」「ファイアストーム」
立て続けに二つの呪文を唱えてみた。
『ふん。こんな呪文かすり傷しか負わぬわ。そんな事で俺を屈服させることが出来ないわ。』
(さすがに土の防御力は高いな)
なんて思いながら、湧き上がる魔力に胸が踊る。これなら、さらに強力な呪文が唱えることが出来るなと判断し、呪文の準備を始めた。
「トリプル」
リンは、火と風そして闇の属性の混合した。
「シャドウフレイムテンペスト」
強大な漆黒の炎の嵐がアークトクルスを包む。そして、すべてを焼き尽くした。
残っているのは、土の塊だけである。アークトゥルスは、消滅したのだろうか?
『がはは。これは、危なかったな。貴様の実力は、俺を使役するに値する。よって、俺からこれを贈ろう。』
土の塊が元の精霊の姿に戻り、ローブをよこした。
これで、火・水・風・土・木・闇の精霊の加護を得ることになり、さらにリンの強さが上がった。
突然、眩い光が精霊界を包む。
『みんなで楽しそうな事をしてるじゃないか。わたしは仲間外れかい?』
眩しい光の塊が話しかけてきた。
『あなたは一体誰なのかな?私は、魔道士のリンよ。』
『わたしは、光の精霊シャイナよ。なんで、わたしに声をかけないのかなぁ?』
風の精霊が答える。
『あなたは、私たちがいた場所にいなかったから声をかけなかったのよ。』
『精霊界に来たなら、わたしにも声をかけれたのではないの?仲間外れにするなんて、ひどいわ。』
「あら、ごめんなさい。私もうっかりしてたわね。闇の精霊がいるのなら、光の精霊もいるのに決まっているのに失念してたわ。」
『まぁ、いいわ。わたしもあなたと契約してもらえるのかしら?』
「ええ。シャイナさえよければ、私と契約して欲しいわ。」
『んじゃ、契約成立ってことでこの腕輪をあなたにあげるわ。』
あっさりと契約が決まったので、ポカンとするリン。でも、これで7つの精霊と契約した事になる。
ほぼ、自分が覚えている魔法が使えるようだ。あとは、無属性のマナを利用した魔法だけが問題となる。
「ちょっと無属性魔法が使えるか試してみてもいいかしら?」
『構わないわ』
「マジックミサイル!」
リンの周りに光の矢が現れる。
どうやら、無属性魔法も使えるようになっているようだ。
7種の精霊の加護により、無属性のマナが使用可能になったに違いない。
リンは、精霊たちにお礼を言った。
「みんなありがとうね。これからもよろしく。」
リンは、魔法の使えない世界で唯一魔法の使える存在となったのだった。
感想等があれば、よろしくお願いします。頑張って、更新していこうと思います。