貴女を待ちましょう
なんとなく。
雨の止まぬ梅雨の頃、私は君に振られました。
閨の屋根には漏れもなく、けれども枕は濡れたまま、雨音止まることもなく。
貴女は自分が幼くて、私の気持ちを受け入れられない、と言いました。
ならば、私は待ちましょう。
世界にたった一人の君が、
大人になるまで待ちましょう。
夏の暑さにうだっても、
川の音色を聴きながら、
ただただ貴女を待ちましょう。
涼しげな 浴衣姿の君を見て、
恋をしたのは何時の頃。
秋の淋しい虫の音に、
誰れ松虫と問いながら、
ただただ貴女を待ちましょう。
月影に 昔へ返す舞の袖、
貴女を想い今日も舞う。
冬の寒さが身に沁みて、
虚しい独りを感じても、
ただただ貴女を待ちましょう。
雪白く 吐く息白く白むとも、
君の面影白まずや。
春の芽吹きに心浮き、
鳥も人もぞ恋しても、
ただただ貴女を待ちましょう。
雪解けて 貴女の心も解けるまで
私は貴女を待ちましょう。
桜の咲いて風に散り、
皆が想いに耽る時、
私は貴女に会いましょう。
大人になった君を見て、
もう一度あの言葉を言いましょう。