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夢、或いは現実

作者: ゴミ箱

たのしい。たのしい。ああたのしい。

私は蝶だ。私は鳥だ。私は雲だ。

もしかしたらそれ以外かもしれないが、とにかく私は自由を連想させる様なものになったのだ。さっきまでは苦しい思いをしていた様な気がするけれど。あれは夢だ。あれが夢でなくては今の説明がつかない。だってほら、私は今こんなにも自由だ。

爪先で地面を蹴れば、そのまま空の果てまで飛んでいけそうな浮遊感が私を包んでいる。

さっきまでは色々な怖いものが見えていた様な気もするが、あれは夢だ。ここが現実だ。

そうだ、思い出した。一年ほど前に私は病気にかかってしまったのだった。定期的に怖い夢を見てしまうという病気だ。

最初のうちは漠然とした不安に苛まれる夢だったが、最近は私を大勢の人間が責め立てる夢であったり、部屋中に大量の虫がはりついている夢を見る様になった。嫌な夢だ。もう見たくない。あの夢に比べて現実は素晴らしい。何もかもが輝いており、全てのものが愛おしい。

暑さも寒さも感じない。何の苦しみもない。

私を責め立てる大勢の人間もおらず、部屋中にはりつく気色の悪い虫もいない。

ただただ、脳から喜びと呼ぶべきものか溢れ出し、体が浮く様に軽くなる。

現実は素晴らしい。

素晴らしい。素晴らしい。ああ素晴らしい。


以前までの高揚感がなくなった頃、私はまた夢を見た。大勢の人間が私を殴りつける夢だ。

やめてやめてやめて。いたいいたいいたい。

そう言っても彼らはやめてはくれなかった。

頭がズキズキと痛む。釘でも打ち込まれている様だ。

早く夢を覚まさなくては。

こんな夢を見続けては気がおかしくなってしまう。

早く薬を打たないと。現実に帰る薬を。

早く早く早く。クスリクスリクスリ。






たのしい。たのしい。ああたのしい。

私は蝶だ。私は鳥だ。私は雲だ。

もしかしたらそれ以外かもしれないが、とにかく私は自由を連想させる様なものになったのだ。


私はやっと現実に戻ってこられた。

薬物、ダメ、絶対。

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