魔物見学、始めました。
まだ扉のところで律儀に待っていたセールスマンを無視し、外に出る。
やはり、この町は良い町だ。素直にそう思える。大きく長細い高層建築物は無く、住宅と商店が交差した街並み。
暮らしやすい場所というのはこういうことを言うのだろう。
そして、女性と一緒に歩く。歩く。歩く。
二人で歩いて30分程度。
意外と長く歩いていると後半は畑や稲畑などが広い耕土としてそこにはあった。おそらく、町の内部では少し栄えているから商店で、外側では畑作などで生計を立てているのだろう。
そんなことを考えていたら町の出口が見えてきた。そこには
『〜活気と平穏の町〜ネモヤナク町』
と書かれている。
この町はネモヤナクと言うのか。
、、、言いずらっ。
まあ、『活気と平穏』と言うのはあながち間違ってもない。
そして、もう少し歩いたところでそのゲートに着いた。
すると、女性が口を開ける。
「ここからは魔物がでるから一応注意してね。」
「あ、あと、万が一おかしなことがあったら私を呼んでね、、、って私の名前覚えてないんだっけ」
そうだった。今思えば自分の中で『綺麗な女性』として確立されてしまっていた。
「私の名前はユーファ・ルウェリン。あらためてよろしくね。」
さっきの店も『ユーファ錬金術屋』と書かれていたし素直に受け入れられた。
「はい。よろしくです、ユーファさん。」
と自分が答えると、よろしいと言いウインクしてきた。惚れた。
ゲートを抜ける。そして視界に広がってきたのは
―――緑。
目視下にはどこまでも続きそうな広大な草原。
これが地平線というのだろうか、大地と空がくっついてみえる。
いけない。こんなことばかりに気をとられてはいけない。本当の目的は魔物をこの目でみることだ。
と、近くに魔物らしきものがいないかあたりを見回してみる。
――――いた。
見つけたのは液状のぷるぷるしたもの。
スライムだ。
ユーファさんから離れ、ゆっくりと近づいてみる。
念願の魔物だ。一度、倒してみたいのは自分だけではないはず。
スライムから少し距離をとり、近くの石を手に取る。
そして投石。
投げた石はしっかりと標的に当たる。
すると当たったスライムがふるふると小刻みに震え、倒れた。
どうやら無事倒せたようだ。
ユーファさんには少し申し訳ないがこの程度なら呼ばなくても大丈夫そうだ。
ドドドドド!!
「?」
突進するかのような足音が聞こえてくる。
足音が聞こえるほうに目を見やる。
そこには巨大なスライム。
異常な速さでこちらに向かってくる。
すこし時間が立ってやっと自分でことの重大さに気がついた。
おそらく、さっきのスライムを倒したことが巨大スライムの怒りをかったのだろう。
これはどうすればいいんだ
。
戦う?不可能。
隠れる?まず隠れるものがない。
降参?自害?
それだけは、、、絶対にいやだ!!
もう一度問う。どうすればいいんだ。
考えろ。
考えろ。
考えろ。
すると、唐突に一人の女性の顔が浮かんだ。
―――そうだ。簡単なことだった。
「ユーファさん!!いますか!?」
自分で気づく前に大声で叫んでいた。