事情聴取、始まりました?
「カリヤくん!今までどこいっていたの!?」
そう言って女性は自らのおっぱ…胸に俺の手を当てた。
うわぁ幸せ。
じゃなくて、
は? え? どういうことだ?
ちょっと待て、考えるんだ。
落ち着け、自分はやればできる子だ。
そうだ、そう、そうやって、なにを考えていたかを思い出し、、、
胸柔らかかったっ、、じゃねぇだろ!
自分で自分を罵倒する。
だがそんな罵倒意味がなく混乱とパニックとで頭の中が胸の感触だけでいっぱいになっていく。
「ねぇ、カリヤくん、大丈夫なの?」
声をかけられ、少しずつ混乱とパニックと胸の感触が消え失せていった。さらば感触。
「カリヤ」それが自分の名前なのだろう。
ひとまず、大丈夫なことを…まあ、大丈夫ではないのだが大丈夫と言わなければいけない様な気がする。
「は、はい、大丈夫でしゅ」
噛んだ。やばい、超絶恥ずかしい。
もうこれ、君の滑舌が大丈夫じゃないでしょ(大爆笑)と言われてもおかしくないレベル。
だが、女性はそんなこと全くな気にしない素振りで、
「うん、大丈夫、、そうだね。ここじゃあなんだからうちに来てゆっくり話そ?」
これは、、、聖母マリアなのではないかというほどの優しさ
。噛んだことも気に止めず、しかも家に入れてくれるなんてどういうこっちゃ。今度からマリア様と呼ぼう。
「どうしたの?さっ、いこ?」
と、マリア様が促す。
「は、はい」
思わず強ばった声が出てしまう
と、マリア様が歩き出す。
自分としては道を知らないのでこうやって先導に立ってくれると凄く助かる。
ほら、徒然草の仁和寺の法師さんも言ってたし間違えない。
と、考え、思う。
こんなことを知っていてこの場所、この世界のことをなんにも覚えていない自分のこの脳を責める。
こんなことを頭の中で考えながら歩いて数分。
そこで、マリア様が
「はい、到着よ」
と、僕を中に入るように促す。
そこは、おそらく二階建てだろう古びた木材のつぎはぎでできた家だった。
その家の一階の扉の上には
『ユーファ錬金術屋』
と書かれている。
マリア様が中に入り、それに倣い僕も入る
中の雰囲気は、落ち着いた感じでリラックス出来そうだ
「カリヤくん、ここ、座って」
とマリア様が促したので遠慮気味に近くにある椅子に座った
そして、僕が座りきった瞬間ノータイムでマリア様が質問攻めをしてきた
「今までどこ行っていたの?」
「なんでいなくなったりしたの?」
「なんで、今帰ってきたの?
帰ってきた理由があるの?」
など、後は
「旅行しに行ってたならお土産あるよね?」
って、よくよく考えたら最後のおかしい。
これのおかげで聖母のような優しさはあるがケチな面があることが新発見出来たので
もうマリア様などと思わず胸デカオネーさん(褒め言葉)という認識にしておく。
閑話休題。
早く、僕が記憶喪失していることを伝えねばならない。
お土産もないしそれどころか記憶もないなんて言ったら嘘だと思うだろうか
でも、しっかりと伝えなきゃいけない。
僕は一度深呼吸して口に出す
「申し訳ありません
俺、記憶がなくなっていて、あなたの名前もわからないんです
言ってしまえばあなたが俺の名前を呼ばなきゃ俺の名前すらわかりませんでした」
嘘でしょ(笑)ぐらいのノリで返して来るかと思ったら意外な返答が返ってきた
「そう、なんだ、、、カリヤくんが言うんならほんとなんでしょう」
正直、最初、この人ちょろい感じの人なのかと思ってしまった
だけど、"カリヤくんが言うんならほんとなんでしょう"という言葉でこれはちょろいんじゃないと確信した。
少しするとチリンチリンと鐘が鳴る音がした。お客さんかなにかだろう。
「カリヤくんはちょっと待っててね」
俺は首肯だけで返事をした
「失礼します〜
新開発したアロマなんですけどどうでしょうか?」
勧誘だ。
まあ、断るんだろうなと思い聞き耳をたてる。
「い、いえ、そういうのは間に合っているので、、、」
「まあ、そう仰らずに〜体験だけでいいですから、ね?」
断るんだろうなと思い再度、聞き耳をたてる。
「た、体験、、ぐらいならまあいいかな?」
前言撤回。
ちょろかった。