第20話 最後の頼み事(3)
「隠れ里はムー系…彼女の所属するイルミナティはアトランティス系…世界の運営方法で意見は別れたの」
なるほど…何となく話が見えて来たぞ。
世界を守ろうとするムー系隠れ里と世界を我が物にしようとするアトランティス系イルミナティとの対立か。
それ系の話はネットや本とかでいくつか目にしたけど…笑い事じゃなくなって来た…当事者になっちゃったからなぁ。
「ライアンもね、アトランティス→イルミナティの一員だったけど私達の考えに同意してくれたんだ」
あ、ライアンの件も話が繋がった。そう言う事か。
しかしよくよく話を整理してみると僕は今ものすごい世界観の中の放り込まれちゃってるな…。
(うわぁ…とんでもないぞこれ…)
「まだ何か質問ある?」
普段僕の話をあんまり聞いてくれない見えないちゃんが今回いつになく僕の話に付き合ってくれている。
こんなチャンスは滅多にないぞ!これはもうどんどん質問するしか!
「あの作業って具体的には何をしているの?」
「イルミナティの妨害で歪んでしまったこの星のエネルギーバランスの流れを修正しているの」
ああ、確かあの石版の力でこの星のエネルギーバランスを調整してるんだった。
うん、忘れてないよ!しっかり覚えているよ!
でもバランスを調整していないとどうなるって言うんだろう?
「それって…」
「前に言ったでしょ…奴らは自分たちの支配する世界を望んでいるって…それを阻止しないと」
「しないと?」
イルミナティはつまり地球環境そのものを制御しようとしているんだ。
でもそれってそんなに悪い事なのかな?
雨が足りない所に雨を降らせたり台風を反らせたり地震を抑えこんだり…。
自然環境を支配出来れば人類はもっと発展出来るんじゃ…。
「この星のバランスを崩す行為は結局星の寿命を縮める事になってしまう…そうなってしまうと…未来を失ってしまう」
この見えないちゃんの言葉で僕はハッとした。
そうか、イルミナティの考えは人間視点…地球環境を語るなら主体はあくまでこの星でないとならない。
どんな自然現象もこの星がそうする必要があるから起こっているんだ。
風邪薬は熱を抑えるけどその効用のせいで病状の回復は伸びてしまう。
人が熱を出すのはその必然があるからでつまりそれは地球環境も一緒なんだ。
「今ならまだ間に合う…言い換えれば今何とかしないともう後がない…」
(だからそんなに真剣だったんだ…)
見えないちゃんが急いでいるのはそういう理由があったからなのか…。
その割に随分休んだりもしたけど…あれは僕を気遣ってくれていたのかな…。
伸びたスケジュールのせいでまた急がなければいけなかったんだな…。
ここまで話していてふと見えないちゃんがこの部屋にいる事に考えが及んだ。
彼女が今ここで落ち着いて僕と話しているって事はもう作業は終わったのかな?
「そう言えば作業は終わったの?」
「それが実はやばい事になってて…だからちょっと頼まれて欲しいんだけど…」
「う…」
何だか悪い予感がした…。
この予感は当たる…そう確信していた。




