第18話 目覚めし力と過大な嫉妬(4)
「死んでよォ…!今すぐにィ…!」
バンバンバンバン!
銃の弾を全て撃ち尽くすまでそれは続いた。
その様子を見て僕は彼女が哀れにすら思えて来てしまった。
ポイッ!
全弾撃ち尽くしたディーナは銃を放り投げる…。
そして改めて僕の前に手をかざす…。
「やっぱりィ…その能力にィ…物理的攻撃はダメみたいねェ…こっちじゃないとォ…」
僕の緊張感は極限まで高まっていた…多分今までで一番。
バシュッ!
バシュッ!バシュッ!
光のネット攻撃をテレポートで避ける。
僕らはその繰り返しをずっと続けていた。
どちらの体力と集中力が先に尽きるのか…最早根比べになっていた。
多分この勝負、戦いに慣れていない僕の方が圧倒的に不利。
ただ力に目覚め始めた興奮がその差を今は埋めてくれていた。
その攻防がどれほど続いただろう…視界の片隅に煙のようなものが上がっているのが目に入って来た。
いつからその煙が上がっていたのか分からないけど気がついた時には既 にモクモクと濃い煙が上がっていた。
そしてその燃えている場所は…見えないちゃんたちが何か作業をしていたあの場所に違いないと直感した。
(なっ…一体どう言う事?)
ディーナもすぐにその煙に気付いたようだった。
そして事態を飲み込むと薄ら笑いを浮かべて
「いいィ…暇潰しになったよォ…」
そう言って消えてしまった。
やばい!見えないちゃんがピンチだ!
今のところ、僕に空間跳躍の能力は目覚めていない。
僕の出来るこのへっぽこテレポートは今のところ近距離感しか飛べない。
だから自力で走ってその煙の方角に向かうしかなかった。
見えないちゃんたちがどうかみんな無事でありますように…今はただそう願うしかなかった。
(先行隊が別にいたって事か…)
僕は走りながらテレポートを試すけれど一番遠くに飛んで20mほど…。
目的の場所まで行くのにほんのちょっとしか役に立たなかった。
目測であの煙の出ている建物まで大体10km以上は離れている…。
今度は最初に入った時みたいに地面に埋め込まれている人工物を探した。
しかしゲームみたいに都合よくそんなワープポイントは設置されていなかった。
だからもうひたすら力の限り走るしか選択肢は残されていなかった。
目の前にゴールはもう見えている…しかしどれだけ走っても近付く気配は感じられなかった。
「これで走って辿り着いて結局見当違いの建物だったら…笑うしかないな…」




