第18話 目覚めし力と過大な嫉妬(3)
ここであいつの言葉に騙されたふりをして窮地を切り抜ける作戦に出ても良かったけど僕はそんな腹芸が出来るほどの知識も経験も度胸もなかった。
でも自分の仲間にしたがるくらいの何かを僕は持っているんだな…。
そう思うと少しだけ自分に自信が持てた気がしていた。
「あなたも洗脳も効かないしィ…ここで死んでもらわないとォ…後が面倒だわァ…」
一瞬で殺し屋の目に戻った彼女は改めて銃をこちらに向ける。
最初は足を狙うと宣言したはずのその銃口は明らかに僕の心臓に狙いを定めていた。
ええっと…ディーナ姉さん?話が違いますよ?(滝汗)
「あんまりィ…射撃は得意じゃないからァ…手元が狂ったらァ…ごめんねェ…」
あ、死んだ…はい僕ここで死にましたー!
それではみなさんさーよーぉーならー♪
バン!
ディーナの放った弾丸は僕の心臓を目掛けて飛んで…僕をすり抜けていった。
僕はこの時死を覚悟して…だから何もしていなかったのに…。
銃弾が僕をすり抜けていったのを見て彼女の表情がみるみる変わっていく。
それは驚きと困惑と…とにかくありえないものを見たような表情だった。
「え、演技が上手いのねェ…あなた役者ァ?」
「…や、あの…」
自分でも意味が分からない。
まさかの物質通過!この極限状態で見えないちゃんと同じ能力に目覚めただなんて!
僕は意味もなく両手を眺めながら自分の力に興奮していた。
(これもオレの力かぁ~っ!?)
それは興奮しすぎて一瞬一人称がオレに変わるくらいだった。
「私はねェ…自分の力にはァ…絶対の自信があったんだよォ…」
ディーナがいきなり自分語りを始めた。
「辛い修行もしたしィ…頑張って承認も受けた…努力をしたのよッ!」
どうやら彼女にも不遇の時代があったらしい…。
しかしそんな事急に言われても…ねぇ?
「自分の血だけじゃァ…辿り着けない到達点を目指してェ…やばい事にも手を染めた…」
うわぁ…段々悪党らしい展開に入って来ましたぞ…。
僕はこの流れにどう対応していいか分からずその語りを黙って聞くしかなかった。
「それがァ…そんな簡単にィ…」
ディーナはそこまで語った後、沈黙してしまった。
その沈黙は何か嫌な沈黙だった。
まるで嵐の前の静けさのような…。
バン!
バンバンバン!
「そんなの許せる訳がないでしょおォォォ!」
いきなり銃を連射するディーナ。
その弾丸はみんな僕を通過していく。
ただその気迫だけは僕の心に衝撃を与えていた。




