第18話 目覚めし力と過大な嫉妬(2)
しかもその口調にはどこか僕を馬鹿にしている風なニュアンスが感じられた。
この雰囲気から察するその先の展開は2パターンあった。
ひとつは既にライアンが彼女に倒されているパターン…そうしてもうひとつは…。
「ライアンがァ…誰の指令であの村に近付いたかァ…知っているかしらァ…?」
「…まさか…」
「そう言う事よォ…うふふゥ…」
彼女の言葉がその意味の通りだとして僕の想像が導き出した結論は…考えたくはなかった。
しかし世界は欺瞞と裏切りで出来ている…最悪の想定も視野に入れていなければならなかった。
とにかく、ライアンの助けは期待出来ない事だけは確実なようだった。
「ちょっとォ…ネタばらしィ…しすぎたかしらァ…?」
バン!
僕の足元の地面に弾丸がめり込む。
本物の銃の発砲音を僕はこの時初めて聞いた。
意外と軽い音が僕の鼓膜に残った。
「次はァ…そうねェ…足を狙っちゃおかしらァ…」
そう言ったディーナの目は何人もその手で殺めたプロの殺し屋の目をしていた。
(こっ…殺される!)
な、何か‥何か何か特別な力っ!僕の中に眠る不思議な力っ!どうか目覚めてっ!
僕はまだ未知数の自分の中に眠る能力に全てをかけるしかなかった。
ご都合主義の漫画とかならここで「力が欲しいか?」って内なる声が聞こえて聞そうなものだけど…。
いくら踏ん張ってもそんな言葉はどこからも聞こえて来そうな雰囲気にはならなかった…。
今のところテレポートしか使えない自分がどうにも歯痒かった。
「しかし不思議よねェ…その力ァ…修行も承認もなしに使えるなんてェ…」
「はぁ…?」
ディーナは僕の能力に疑問を持っているみたいだった。
そんなの、使えている自分自身まだ半信半疑のシロモノだもの…。
しかし彼女の口調から言ってこの力は本来なら修行とか承認とかめんどくさい手続きが必要なものらしかった。
「なるほどォ…守り人娘がァ…大事にする訳だわァ…」
ディーナは僕の何かに気付いて納得したみたいだった。
ちょっと!そんな思わせぶりな事言って…すごく気になっちゃうんですけど!
彼女は急にさっきまでの殺し屋の顔から変わってすごく妖艶な表情になった。
「あなたァ…こっち側にィ…つく気はない?」
アレ?僕今悪の親玉にスカウトされてるっぽい?
何だかすごい事になって来ちゃったぞ…(汗)。
こんな時は一体どうすれば…(困惑)。
「つ、つく訳ないだろ!」
「だよねェ…ここで殺すのォ…勿体ないけどォ…」
ヤバい…ディーナは何を考えているんだ?




