第14話 海底の遺産(2)
「以前にもここに来た事が?」
「今日でここに来るのは2回目かな」
本当、彼女の底が知れません。
今のところ不穏な気配は何も感じられないけど昨日の今日だけに不安が残る。
(ライアンさーん!今日も警護よろしくですよー!)
と、僕は心の中で叫んでいた。
いざとなったら彼だけが頼みの綱だった。
てくてくと海底神殿を歩いて行く…。
上空を見上げれば魚達が優雅に泳いでいる。
さかなクンさんがこの景色を見たらきっと大興奮するだろうな…。
ぼうっと上ばかり眺めていると面白いお魚ショーが今にも始まろうとしていた。
おおっ!サメじゃ!サメがおった!
他の魚達が急いで逃げて行くわー!
水族館じゃ絶対見られないねこれ。
「あてっ!」
僕は上ばかり見ていてつまずいてしまった。
うう…何だか恥ずかしいな。
でもそんな僕を見えないちゃんは全然気付いていなかった。
彼女はずっと前だけを見て進んでいた。
…まぁね、そんなの分かってたけどね。
「ちゃんと前見て歩いてね…」
えっ?見えないちゃん気付いてた?
やばい…すごく顔が赤くなるのが鏡を見なくても分かる…。
これは見えないちゃんに合わす顔がない…。
僕はしばらく体中がヒートアップしたまま歩く羽目になっていた。
だってこんな光景見ちゃったらちょっとまともじゃいられないよ…。
それほどまでに海底神殿は神秘的で魅力的な場所だった。
主に下から見上げる海の景色についての感想だけど…。
海中都市とか実現したらこう言う光景が日常風景として見られようになるのかな…胸が熱くなるな…。
で、肝心の海底神殿の建物が魅力的じゃないかと言えばそんな事はない訳で。
ずーっと見ていてもすぐには飽きそうにない建造物が僕を惹きつけていた。
でも見えないちゃんが寄り道をするはずがなかったんでね…仕方ないね…観光に来た訳じゃないからね。
(お仕事…お仕事っと…)
神殿の奥へと進んでいくと今までの各地の神殿のような建物じゃない
初めて見る…けれど確かに神聖そうな建物が目に入って来た。
直感できっとあそこが目的地なんだなって僕でもすぐに分かった。
その建物だけ明らかに”生きて”いたからだ。
この感覚はうまく表現出来ないんだけど…感じてしまったんだからしゃーない。
僕がその建物を見て心を引き締めていると見えないちゃんが急に手を握ってきた。
つまりそれは人の気配を感じたって言う事。
僕らの周りののんびりした気配がいきなり緊張感に包まれていく。
ここが公然の秘密状態って事はそれなりの組織がこの場所で何か作業をしていてもおかしくはない訳で…。
「やっぱりあそこにいるの?」
「うん…」
僕は具体的には聞かなかったけど…もう既にヤバい雰囲気がプンプンしていた。
それでも進まないといけない…どうか見えないちゃんのステルスで無事事なきを得ますように…。
そうして僕らは海底神殿の本殿にずんずんと近づいていく。
心の中で発せられれる危険信号もどんどんと大きくなっていく。
実際にはまだ周りに人の気配を全然感じないのに…。
って言う事はきっとあの建物の内部にだけ人がいるんだろうな…。
僕は根拠もなくそう確信していた。
そうして警戒しながら僕らはその目的の神殿へと足を踏み入れていく。
さあ、鬼が出るか、蛇が出るか…。




