第13話 ジャングル寺院(5)
こんな状況になっても僕はまだ心に余裕があった。
だって見えないちゃんには必殺の空間跳躍があるじゃないか。
お仕事も終わったしここは得意の空間跳躍で無事帰還っとね♪
…あれ?
見えないさん?
お得意の空間跳躍、もういつでもしていいんですよ?
「ダメ…飛べない…」
ここ、こんな時に何ですってーッ!
絶体絶命じゃん!床の崩壊はもう足元まで来ているんですよーッ!
もう為す術ないじゃないですか!嘘でしょ…。
あ、これ死んだ…僕らここで死んだわ…。
さようならみなさん…。
ここまで読んでくださって有り難うございます…。
ボクらの冒険は始まったばかりだぜ!
…って冗談じゃないよ!ここで終わりたくないよ!
でも何の手も思い浮かばないよ!
僕一人がテンパっている間に床の崩壊が足元にまで迫って来ていた。
ああ…何も出来ない内にここで人生が終わってしまうのね…(遠い目)。
結局、僕と見えないちゃんは何も出来ないまま深い奈落の底へと落ちて行った。
うわあああああ~!
……
…
。
?
「お、気がついたかい」
気が付くと知らない天井が目に入って来た。
…生きてる。
僕!生きてる!
「今回は災難だったね」
僕に話しかけるこの聞き覚えのある声は…見えない村の村長さんだった。
「ライアン君が二人を助けてくれたんだよ…間一髪でね」
「そ、そうなんですか」
やっぱりあの人、今回の旅にもついて来ていたのか…。
一体あの状況でどうやって僕らを助けたって言うんだろう?
全く想像出来ないような超絶テクニックに助けてくれたのかな?
村長さんのベッドで目覚めた僕は全くの無傷だった…きっと見えないちゃんもそうなんだろう…。
何にせよ助かって良かった…本当に良かった。
「あの…ライアンさんは…」
「彼は元の任務に戻ったよ…心配しなくてもまたすぐに会える」
「そうですよね…あの…ありがとうございました」
僕はそう言って村長さんの家を後にした。
ライアンにはまた会えた時にお礼を言えばいいか。
後、見えないちゃんにも会いたかったけど今日はそっとしておこう…。
僕はそのまま村を出て自分の家に戻ってきた。
今回は普通に村を出るだけでその場所へ通じていた。
見えないちゃんが一緒じゃなくてもそうなっていたのに少し驚いた。
(一体これどう言う事なんだろうな…)
僕は目の前の見慣れた光景にしばらく動けないでいた。
そうしている内に誰かが近付いている気配を感じた。
「コラ!」
僕がその声に振り向くと見えないちゃんがそこにいた。
「挨拶もなしに帰るなんてヒドイじゃない!はいこれ!」
見えないちゃんは僕に今日の報酬を押し付けるとすぐにぷいっと振り返って帰っていった。
ま、真面目と言うか何と言うか…。
でもそれがいつもの見えないちゃんだし僕はその姿を安心して見送っていた。
どうせまた明日も会えるしね。
西の空では夕陽がゆっくりと沈んでいく。
僕は久しぶりにその光景をじっくりと眺めていた。
僕は今生きているんだなあと生を実感しながら。




