第11話 ありがちなバカンス(3)
話は変わるけど僕は自分の名前がそんなに好きじゃない…苗字も名前も…。
そしてこうして名前をいじられるのもやっぱりあんまり気分の良いものじゃなかった。
「トッシーって僕の事ですよね…」
「おや?気を悪くしたかい?」
多分僕はその不機嫌な気持ちが顔に現れてしまったのだろう。
その気配を察してライアンの態度が少し落ち着いていた。
「いや、いいですけど…」
馴れ馴れしいのは苦手だけどそこであからさまに態度を変えるほど僕は子供じゃない。
ライアンに僕の気持ちが伝われだそれだけで十分だった。
「僕らを監視でもしてたんですか…」
「監視だなんて…ただ見守っていただけだよ…」
確かに監視なら僕らの前にわざわざ姿を表す事なんてないだろう…。
わざわざ現れたって事にも何か意味があるのだろうか?
急に予定をキャンセルして遊びに来たから忠告しに来たとか?
「僕ももっと君と仲良くなろうと思ってね」
「えっ?」
ニコニコ笑いながらライアンは交流のために近づいたと打ち明けた。
もしそれが本当ならこっちの質問にも答えてくれるかな?
それならばと僕はいくつかの疑問を彼にぶつけてみる事にした。
「ライアンはなんで見えないちゃんとのコンビを解消したの?」
「お声がかかってね、それで別の任務についたのさ」
本当にちゃんと質問に答えてくれた。
僕は調子に乗ってもっと突っ込んだ質問もしてみた。
「それはどんな?」
「そこから先は答えられないな…他に何か聞きたい事は?」
やっぱり答えられる質問には制限があるみたいだった。
けれどライアンが他の質問を求めて来たので質問自体は大丈夫みたいだった。
それならばと僕も質問を続ける。
「じゃあ…やっぱり見えないちゃんと一緒にいた時は今と同じような事を?」
「いや、色々だったよ…時には新しい特異点を設定したり…」
「そ、そうなんだ…」
特異点の設定…そう言う事もしていたのか…。
段々僕の知らない見えないちゃんの姿が浮き彫りになってくるなぁ。
「今ここにいるって事は今は僕らの監視が任務なの?」
「だから監視じゃないって…でもまぁそう言う事だね…だから安心していいよ、危ない時はしっかりサポートするから」
なるほど…つまりこれからは僕らに危険が迫った時はライアンが助けてくれる…。
旅の危険性が少しは緩和するって事か。
でも逆に言うと今後はもっと危険な任務もあったりするって事なんだろうか?
それはそれであんまり嬉しくないような…(汗)。




