第9話 その名はライアン(2)
見えないちゃんは前のパートナーにも自分の事をほとんど秘密にしていたのか…。
何か彼を見ていると将来の自分を見ているように感じてちょっとだけ途方に暮れてしまうのだった。
ライアンは続けて見えないちゃんの秘密を暴露してくれた。
こっちが聞かなくても進んで話してくれるなんて彼は何て親切なんだ。
「10年も一緒に行動していたのに彼女は謎だらけなんだ…ミステリアスでいいだろ?」
「え…?」
見えないちゃん、10年間彼と行動していてそこから2年経っていて…仮に当時からこの姿だとすると若くても22歳以上…?だとしたら僕より年上じゃん…。見えないちゃんって一体…。
そしてこのやりとりで自分の年齢の秘密の一部をバラされた見えないちゃんはちょっとおかんむり。
「ちょっと!いい加減に…っ!」
「おおっと!女王陛下がお怒りだ!じゃあオレはこのまま退散するよ!助けてくれてありがとう!じゃっ!」
見えないちゃんに怒られそうになったライアンはそう言うとそそくさと部屋から出て行ってしまった。
何か二人共余裕あり過ぎでしょ…ここ…米軍基地内ですよ…。
しかしライアンも只者じゃないのか部屋を出た後、米兵の誰にも見つからずに一瞬で視界から消えてしまった。
それはまるでアニメとかで見るNINJAのように…。
ライアン…あんた一体何者なんだ…(汗)。
「まったく…何も変わってないわ…」
その様子を見て愚痴をこぼす見えないちゃん。
でもそれは懐かしい相棒に会えて安堵したような顔にも見えていた。
まぁ…分からなくもないけどね。
「さ、用事も済んだし帰ろ!」
見えないちゃんはそう言うとクルッと振り返って今来た道を戻り始める。
あれ?いつもならここで一瞬で空間跳躍するんじゃ…。
「今日はすぐに帰らないの?」
僕はつい口に出して聞いてしまった。
僕の質問に見えないちゃんは振り向かずに答える。
「施設内に何かの装置があるみたいであの力は使えないみたい…」
「え?大丈夫なの?」
僕はつい不安になってしまった。
もしかしたら今までの行動も監視されているんじゃないかとすら考えてしまった。
みんな騙されたふりをしているとか…可能性としてはありそうだし…。
「問題ないよ…施設から出たら普通に力は使えるから」
「そ、そうなんだ…」
そう答えた僕の声は震えていた。
どうしても動揺は少なからず態度に出てしまうね。
見えないちゃんの言葉を信じるためにも一刻も早くこの恐怖の場所から脱出したかった。
握っている彼女の手にもつい力が入ってしまう。
「近道するね」
僕の緊張が分かったのか見えないちゃんが近道ルートへと進む。
もちろんそれが正しいルートかどうか僕には分からない。
けれどそこは彼女を信じて進むしかなかった。




