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第8話 奪還計画(3)

 僕は見えないちゃんと手を繋いで目的地の基地内部に向かってノンストップで走り出す。

 まずは最初の関門、基地のゲートを誰にも止められる事なく通り抜けていく。

 なるほど、マジで誰にも気付かれない。


 基地内には屈強な兵士たちでいっぱいだ。

 どこを見渡してもゲームや映画で見たような緊張感溢れる風景。

 けれど、うわ~すごい~!なんて興奮している余裕はこちらにはなかった。


 何て言ったってこっちは無許可侵入、不法侵入なのだから。

 誰かに見つかった時点で多分冷静に彼らによって処分されるだろう。


 …あれ?何で自分こんな危ない橋をっ渡っちゃってるの?(混乱)


 それはそうと見えないちゃんの手を離さない限りこの無敵モードは続く模様。

 例えそうだとしてもこんなヤバイ場所には1秒だって長居したくない。

 彼女が素早く目的を遂行してくれるのをただ僕は願うしかなかった。


 見えないちゃんは慣れた手つきでパスワードを入力して基地内の閉鎖されたエリアのドアを開けていく。

 その仕草が場馴れしすぎていて怖い。見えないちゃん、恐ろしい子っ!


 基地内にも勿論兵士が沢山歩いている。

 通路上部には監視カメラもある。

 それでも誰も僕らの存在には気付かない。

 改めて見えないちゃんの能力の凄さを思い知らされる。

 握っている彼女の手はこんなに可愛くてちっちゃいのに。


 見えないちゃんは基地内をひとつも迷う事なく走り抜けエレベーターへ。

 ステルスアクションゲームならここまでに様々なミッションをこなさないといけないんだろう。

 けれど最初から見えない存在の見えないちゃんはまっすぐに目的地に進んでいける。

 自分としても最短距離で最速でこのミッションを終えて欲しいと願っていた。


 エレベーターの階数を押した後にしばらく沈黙の時間が流れる。

 ここにもカメラが付いているから握った手はまだ離せない。

 だからここで緊張感を切らす訳にはいかなかった。


「ふぅ…」


「怖いんでしょw」


 緊張している僕の方を見て見えないちゃんがにやっと笑う。

 この状況でこの余裕…見えないちゃんってちょっと修羅場くぐり過ぎでしょ…。

 エレベーター内って言う事で少し安心した僕は彼女に話しかける。


「捉えられてる人ってやっぱり村の関係者?」


「うん」


 …まぁ、そりゃそうなんだろうな…。

 しかし米軍に捉えられるってタダ事じゃないって言うね…。

 改めて自分がとんでもない世界に足を踏み入れている事を実感していた。

 その救出に見えないちゃんが選ばれたって事はもしかしてその人物は見えないちゃんの知り合い…?

 僕はちょっと気になって改めてその辺の事も聞いてみた。


「捕まってるのって見えないちゃんの知っている人?」


「まぁね」


 見えないちゃんはこの質問に何一つ動じることなくケロッと答える。

 彼女ってもしや過去にかなりやばい仕事も引き受けていた?

 確かにこのステルス能力があれば隠密行動もラクラクだけど…。


(こう言うのは子供がする仕事じゃないよな…)


 こんな状況でもまるで当たり前のような顔をしている見えないちゃん。

 こう言う精神状態になるまでにどれだけの場数を踏んだんだろう…。

 あの温厚そうな両親が我が子にこんな事をさせているだなんて…。

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