第5話 はじめてのお仕事(2)
ここではぐれたらもう二度と家には帰れない…そんな予感がギュンギュンとしていた。
流石にお仕事と言うだけあって甘くなかったわ…。
先を行く見えないちゃんは黙々と前を歩いて行く。
流石旅慣れしているだけあって彼女は無駄にエネルギーを消費しない術を身につけていた。
それに対して僕は歩き旅の素人…ペース配分も分からずに序盤でかなり消耗していた。
こんな事なら家を出る前に食べ物とか準備しておけば良かった…。
僕は早速軽装で出て来た事を後悔していた。
人気のない広い野原を二人は黙々と歩いて行く。
何の目印もないその道なき道をただまっすぐに歩いて行く。
その緊張感はちょっと耐えられないくらいのものだったけど何分ついていくのが精一杯で僕は先を行く見えないちゃんに何も話しかけられないでいた。
(この旅に本当に僕が必要なんだろうか?)
僕がそう思ってしまうのも必然だった。
でもお給金発生するからね、簡単に弱音は吐けないね。
自分が年上との自負もあって見えないちゃんに気合でついていく。
せめてタオルくらい持っていれば流れる汗も拭けたのにな…。
汗を手で拭いながら見えないちゃんとその先を目指すのだった。
「ちょ、たんま…」
僕は限界を感じて座り込んでしまった。
さっきまで頑張るぞって気合入れてたのに情けない…。
インドア派の僕にいきなりの長期の歩きはどだい無理があったんだよ…。
「ほら、そこだよ」
へたり込んだ僕に見えないちゃんが行き先を指さしている。
なんだ…もう目的地の近くまで来ていたのか…。
僕が息を整えながら見えないちゃんの指す方向に視線を向けると…。
「お…おおぅ…」
そこにあったのは紛う事なき遺跡…巨大なストーンヘンジだった。
あまりの立派さに僕はしばらく言葉を失っていた。
ああ…ここ絶対日本じゃないわ…。
別の意味でも僕は言葉を失っていた。
(でもここでこの旅も終わりかな?)
と、僕が思ってひと安心していると見えないちゃんはそのままずかずかと遺跡に向かって進み出した。
彼女はあれよあれよという間にストーンヘンジの円環状になっている石柱のその中へ。
まぁ、柵もないし多少はね?とは思ったけど僕がぼうっとその様子を見ていると
「ほら、早く!」
見えないちゃんに急かされてしまった。
え?もしかして僕もその中に入らないといかんですか?
全く我儘だなあと感じながらのその指示に従う事に。
ええ、スポンサーには逆らえませんよ…私はしがない雇われですよ…。
僕がその巨大なストーンヘンジの輪の中に入った時、ぐわんと外の景色が歪んだ気がした。




