第3話 見えない村(4)
言葉に力強さがあってこの人に説得されたら何でも納得しちゃいそう。
「は、はぁ…」
しかし何だろうこの三者面談。
特に居心地が悪いと言う訳でもなかったけど慣れない空間はひどく僕の精神を疲弊させていた。
ぼっちにコミニュケーション能力を期待されても困るんだぜ?
「あの子、ご迷惑かけませんした?」
「あ、それは大丈夫でした…」
出されたコーヒーを飲みながら僕は無難な返事をしていた。
やっぱりここは少し変な所はあるけれどそれ以外は外の世界と一緒だ。
出されたお菓子もよく見るタイプのものだし、それがたまたま僕が好きなやつだったのでついつい欲望のままにお菓子をほいほいと口に入れてしまっていた。
…でもこれ本当にたまたまだったのかな?
いやいや、そこを深く考えると考えが怖くなるからやめておこう。
ご好意、ご好意っと。
「えっと、あの…それゃじゃあ帰ります」
「え、まだ早いのに」
「コーヒーとお菓子ありがとうございました、美味しかったです」
慣れない雰囲気に押し潰されそうになったので僕はこの家を後にする事にした。
ご両親共々まだおもてなししたりそうな雰囲気ではあったけれどこっちが精神的にもう限界。
あの勢いだとお土産まで持たされそうだったのでそそくさと出る準備をする。
半ば逃げるような感じで僕は見えないちゃんの家を後にした。
「ふぅーっ!」
ミッションを終えた開放感で僕は思いっきり背伸びしていた。
その後の予定は何も決めていなかったけれどとりあえず折角だから村の探索をする事にした。
まずはあの珍しい建物の正体でも探りに行こうか。
見えない村の道をテクテクと歩く。
村長さんの話ではここは全国に5つある隠れ里のひとつなんだと。
こんなところが後4つもあるのかよ…この国にはまだまだ隠された謎が多いな…。
などと中二的な妄想を膨らませていく。
妄想っつったって現実にこんな体験したら世の中に漂う噂がみんな真実のような気がしてくる。
昔話題になった時空のおっさんとか小人さんとか裏で暗躍する秘密組織とか…(汗)。
村は人通りが少ないとは言え、全然人がいない訳でもなく…僕が道を歩いていると何人かの村人たちとすれ違った。
みんなもれなく会釈してくるのでこっちも合わせて会釈し返していた。
何故か笑顔で握手されたりもした。歓迎はされている…のかな?
驚いた事に普通に自販機が置いてあってちゃんとこっちの通貨が使える…当然と言えば当然なんだろうけど。
コンビニこそ見当たらなかったけどお店もちゃんとあって食料も本も不便なく手に入る。
まぁ…深く考えたら負けなんだろうな…。




