第五夜 胎動の世界レイスフィア
分かりやすい構図です。展開もみえみえです。・・・だが王道が好きな作者にスキはなかった(キリッ
調子こいてすいません。感想で視点変更ないほうが好みという感想をいただきました。ありがとうございます。今回からなしにします。第四夜までは、また後ほどに再編集します。
ソグド皇国皇都ザナルカンドは皇居の一室に二人の男がいた。
一方の男、ソグド皇ムジカ・エル・ソグディアは苦々しく間者の報告を聞いた。
「死ななんだか・・・つまらん!帝国へのカードの一つにでもならねば、リーシャなどただの負債に過ぎぬというに」
影のように姿かたちが判然としないもうひとりの男は膝をつきながら口をまた開いた。
「皇王様・・・そのご判断は早計やも知れませぬぞ」
「ほう?使えそうな駒でもあったか?」
「リーシャ様の御生還の件ですが、≪黒い森≫で黒髪の少女が手を貸したそうです。カスティールの追手によると、知らない言葉を話したとか。客人の可能性が高いと思われます」
にたり、と皇王は哂う。
「それは面白い・・・。ひどくおもしろいなあぁ」
皇王はクツクツと哂う。久しい感情、享楽に酔っていた。
「リーシャのばかっ!ライカのあほっ!」
マドカは腕で身体をかばいながら、潤んだ瞳でこちらを睨んでくる。
「ごめんごめん。つい可愛くてね・・・反応が。でも男の娘だったのかぁ・・・びっくりしたわ」
「ニュアンスに不穏当さを感じるんだけど・・・」
ぶすっとした表情でも少じょ・・・少年は愛らしさを失わない。
(ああもうかわいいなあ)
「分かってない・・・絶対反省してない(ブツブツ」
「マドカ様・・・申し訳ありません・・・」ライカは眉を八の字にしながら謝る。
「・・・きれーなお姉さんにひんむかれるってのはなかなかできる経験じゃないけどさ・・・意識しちゃうじゃんか」
ぼそっとつぶやく。
「ん?」
「なんでもないっ!!」
「きれいって言ってくれるのはうれしいな」
「き・・・きこえてるんじゃんかあ!!」
「で・・・追われてた理由とか、そこらへんなんだけどね?」
リーシャが何でもなかったように話を変える。
「では私からお話しします・・・」赤毛の小柄なメイドは語り始める。
「正直に言いますが、マドカ様の立場はかなり難しいものです・・・。まれびとは自治領を持つ代わりとして帝国と皇国に干渉しないことになっているのです。たとえ、こちらにいらした直後とはいえ、ソグドの皇女を救出されたのですから」
レイスフィアにおいて客人は数からいってそう珍しいものではない。しかし、異世界の技術を持ち込んだ彼らは1人の指導者の下自治領を獲得し、帝国にも皇国にとっても脅威になっていた。今のレイスフィアは東の帝国、西の皇国、南の自治領が覇を競う三国時代といえる。その中で、客人が皇国に味方したとなれば、その波紋はすぐにレイスフィア全土を揺るがすことになるだろう。
「こうじょ?控除・・・高女・・・皇女!!おひめ・・・さま?ぇえっ!!ぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
「・・・うんまあ一応ね。といっても皇位継承権が38番目だから、まあまず回ってこないわ。」
ライカがたしなめるようにリーシャを窺う。
首をすくめながらリーシャはマドカにいう。
「気にしないでね。ライカ以外の友達が初めてできてうれしかったの・・・」
「う・・・。別にいまさら態度変えれないし、リーシャいなきゃ野垂れ死んでたよきっと。
迷惑掛けたくないんだ。ここにいてもいいのか聞きたかっただけで。このままだとずるずると厚意に甘えちゃいそうだから」
少しそっぽを向いてマドカはぼそりと言う。
「まあ田舎貴族の気楽さと皇族特権があるからね、大概のことはなんとかなるよ。
それより、ご家族も心配されてるだろうし早く還る手段見つけないと」
「でもさ、聞いた感じだとこっちに来てあっちに還ったヤツなんていないんでしょ?」
「あきらめちゃだめだよ。きっと大丈夫って精霊達も言ってるよ?」
「せ・・・いれい?そういや初めて会った時にも風の加護とか言ってたけど・・・」
「わたしみたいにエルフの血が混じっていると精霊魔法が使えるの。まあ私はクォーターだから、風の精霊さんとだけ契約できたのだけどね」
なんちゅーファンタジーだおい。まあ耳が細長くて尖ってるし、ビジュアル的には納得なんだけど。風の精霊さんだから異世界人のマドカと意思疎通できたんだ~よかった~♪と能天気に笑うリーシャを見てると、常識とかを捨てなきゃどうしようもないと分かった。
・・・それ以前に異世界だしな。
ここからちょっとマドカには辛い異世界の現実ってやつに直面することになります。