第四夜 再会の世界レイスフィア
屋敷の呼び鈴を叩いてリーシャは一歩下がった。
途端に赤毛の小柄な人影が勢いよく飛び出す。メイドさんでした。
……もう驚かないよ…セバスチャン(執事)が出てきても。
マドカが変な感心をしているそばでメイドさんはリーシャに飛びついた。
「おかえりなさいませ、姫様。ご無事で何よりです…っほんとに…本当に…ほ…っく」
「ごめんね。心配掛けて…でも無事よ。大丈夫だからね、もう大丈夫よ、ライカ」
「もう…どこにお出になる時も私をお連れください。姫様の御留守の間、生きた心地がしませんでしたっ…ほんとうですよ?」
背の高いリーシャと小柄なライカは仲睦まじい姉妹のように再会を喜び合う。
しばらくしてリーシャはマドカの方を振り返り、あの子が命の恩人よとライカに囁いた。
ようやくリーシャが1人でないことに気付いたライカは寝巻の少女を見つめる。
寝巻の少女も負けじと見返す。
じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ
じーーーーーーーーーーーーっ
じーっ
――――――かくん。
突如前触れもなしに、寝巻の少女はパタリと倒れた。
「マドカっ!!どうしたの、マドカっ!返事してっ…何処か怪我してるの?」
「うわわわわ大丈夫~???」
二人の少女のあわてる様を尻目にマドカは徹夜の疲れで倒れたのだった。
すーっすーっ……
(寝てるだけみたいね。たぶん一晩中走って疲れたんでしょう。ライカ、人を呼んで運んであげて。
起こさないようにね)
(姫様…悪い子じゃなさそうですけど…この子の素性は確かなんですか?)
(…それはちょっとここじゃ話せないの、後で話すわ)
マドカside>
気づくと知らない天井。どれくらい倒れていたんだろうか。
「う…ここはど「気付いたかあああああああああああああああぁああ少年んんんんんんn」」
オールバックの紳士が吠えていた。
思わず飛び上がったマドカは壁際まで猛スピードで後ずさった。
「そんなに怯えることもなかろう。姫様の命の恩人ということだしな。気合いを入れてもてなさねばならぬのだッ」
同じ速度で並行してマドカに詰め寄る。
「そうだ!申し遅れたが鷲はセバスチャン!!当家の執事長であるッ!宜しく頼むぞマドカ殿っ」
あわててマドカはがくがくと首を振る。
…嘘言ってすいませんセバスチャンにめっちゃビビりました
「丸一日寝ておったのだ。何か作らせよう。好きなものがあったら遠慮なく申しつけてくれいっ」
執事ってこういう口調でいいのかな…。マドカは呆然としつつそんな事を思う。執事長に催促されるままに好物を思い浮かべていると、賑やかな足音が聞こえてきた。
「まったく、姫様は直すよう申し上げても一向にお転婆が治らぬ。嘆かわしいっ」
鼻息荒く嘆く執事長、軍人のが向いてんじゃねえのと思う。
「ハイ執事長はどいたどいたー♪マドカに似合いそうな服持ってきたの!寝巻でうろうろってのはよくないしね。私の子供のころの服で悪いんだけど」
「ひ、ひめさま~~~」
リーシャとメイドさんが部屋になだれ込んできた。めいどさん、たしかライカって名前だっけ?150cmもないんじゃあるまいか。年上なのに年下に見えるってのは何とも不思議な人だ。
「いきなり倒れちゃったから焦ったけど、過労だって。丸一日寝てたしもう平気?」
小首をかしげるリーシャ。改めてみると美人だなおい。アラビアの御姫様みたいな恰好をしている。ゆったりしたすそを絞ったパンツに細身のエスニックな柄シャツ、ショール・・・かな。
「うん・・・あ、はい。平気です、でもお腹がすいちゃって」
「かしこまらないで!あなたは私の命の恩人なのよ?自分の家だと思ってくつろいで」
そう言われても使用人さんの心象ってものがあるでしょうに…。
「分かった・・・」
仕事に戻ろうとする執事長とライカさんを呼びとめる。
「あの、申し遅れました。市川円といいます。執事長とライカさんにはいきなりお手数をお掛けしました。すみません」
二人は一瞬驚いたように見えたが、礼には及ばないと微笑って言ってくれた。
リーシャside>
寝室から執事長を武力排除した後、お腹を鳴らしながら抵抗するマドカに二人の淑女が忍び寄る。
「えと…自分でできますっ!着替えるからみないでっ…そ、そこはダメですって、ちょ、あ…」
必死に自分の体を隠そうとするマドカ。
――――――なんだか変な気分になってきたわ。
「姫様…私ちょっと楽しくなってきました♪」
「へ?」
「ライカ!奇遇ね、私もなの」
「え・・・」
「マドカ様?痛くないですよ~、怖くないですよ~、きれいに「「なりましょうね」」
キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
その日何度となく、リーシャ邸では絹を裂くような少女の悲鳴があがったという。
脱衣の世界のほうがタイトル詐欺じゃなかった気がしてきた・・・
感動の再会だったはずなのに・・・アルェ
ですがようやく主人公が外着を着ます!