第十一夜 幕間の世界レイスフィア
幕間なのでけっこう短めです。なんというか第十夜と第十一夜は自分としてはかなり難産でした。
宿舎の夜――。
リーシャは明日以降に控えた父皇との対峙を思い、闘志を奮い立たせていた。
絶対にマドカは渡さない。
政治の道具になんて、まして戦争の道具になんてさせない。
初めての友達だから、命の恩人だからこそ、ソグドをレイスフィアを嫌いになってほしくはない。
――いや、違う。私自身を嫌いになってほしくない。
「寝るっ」明日は戦だ。
第38皇女は執事長が見たら憤死しそうなほどに行儀悪くベッドに飛び込んだ。
マドカは夢の中、白い部屋にいた。まわりは眼に痛い白一色。光源がどこにあるのかも不明だ。
《・・・イチカワマドカ。さっきぶりだな》
最近聞き覚えのある声が反響した。
(――出たな。あんたどこのどいつなんだ)
《命の恩人に詮索か?感心せんな》
人の悪そうな笑い声が響く。
(――あんた、たしかあの時契約って言ってたな!どういう意味なんだ。契約ってのは相互に債務を負うってことだ。あんたは僕に力を貸しているのかもしれない。じゃあ僕は何をするんだ?何をさせられるっ)
嫌みを無視するとはなかなか肝っ玉が据わっている、と笑う気配があり、
《頭の回転は本当にその年にしてはよく回る方だの。何、大したことではない。・・・暇つぶしだ》
(ひま・・・つぶしだと)
《我のところまで辿り着くニンゲンなど久方ぶりなのでな。しかも、我が倦族を救うために扉を開いたのだ。興味深い・・・実にな》
(扉・・・?また訳の分かんないことを。それより!あんた名前なんて言うんだ、僕は名乗ったろ)
《ぞんざいな口調だな・・・まあいい。契約の刻はお前にはパスが通っていなかったからな。真名が聞こえんのも無理はない。我は、竜族の王、黒き鱗の竜ザラマンデルだ》
(ザラマンデルってのが名前なのか?)
《まあ、そうだな。ワイバーンども倦族とは違い、神祖の血統を継ぐ貴族ならば名の前に受け継がれてきた血族の呼び名を持つ慣わしなのだ》
(・・・結局僕にさせたいことってないのか)
《特段ないな。お前がこの世界を見聞きし、思うさま行動するがいい。もう我が特性たる<夜>はお前に根付いた。どう使うかはお前次第だ》
(僕次第・・・)
《たっぷりとお前が、イチカワマドカがこのレイスフィアで何をなすか見てやろう》
高らかな哄笑を残して人影は去った。
いよいよメインタイトルに偽りなしと胸を張って言えそうです。ふぅ
え?わけわかんねーよって?大丈夫!張った伏線は全て回収作業しますよ―。(た・・・たぶんね
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