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追放令嬢、氷帝教育はじめたら何故か最強に?〜パンは剣よりも強しですわ!  作者: 蒼良美月
第一章 悪魔の城へ誘われて

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7.苦悩

 私は気怠そうにしている陛下に軽く会釈をして、先ずはグラスに冷水を注ぐ。


  そして蒸した卵餡を置いた。残念なことに少し冷えてしまったのは申し訳なかったが、何度も裏ごしし口当たりをなめらかにしたので、冷えていても食べやすいようにはした。


「卵餡蒸しで御座います。此方のスプーンをお使い下さい」


 無言で彼がスプーンを手に取り、一匙掬い口に運ぶ。

 彼は全く表情を変えることなく、スプーンを直ぐに置く。


 お口に合わなかったのかしら……

 それなら仕方ないわね。陛下の好みが分からない以上、少しづつ試してみる以外方法がないもの。


 次に私は、今日のメインである「挽肉のキャベツ包み」の皿を目の前に置く。



「……」



 彼は微動だにせず、沈黙の時間が続く。


 えっと、これは? どうしましょう……

 どうすれば良いのかしら……

 これって切り分けろって意味かしら?


「陛下、僭越ですが私が切り分けても宜しいでしょうか?」


 私は仕方なく、聞いてみることにしたのだ。


「………」


 彼の表情は、先程と一切変わらず否とも肯定も無い。


 どうしましょう……

 無口な御方ですのね……

 でも、駄目なら言いますよね? なら、とりあえず?


「失礼しますね?」


 私は皿を一旦自分の前に戻し、カトラリーの籠から予備で用意しているナイフとフォークを使い、一口大に切り分け小皿にのせる。


「どうぞ。お召し上がり下さいませ」


 私はできる限り優雅に微笑んだ。


 不快そうな顔を浮かべたが、フォークを手に取った。

 私はその姿を凝視してしまう。


 フォークを持たれたわ! お口に向かうのかしら?

 そのままほら! 運んで下さい! 

 私は祈るような気持ちでその瞬間を待っていた。


 彼が吐き出すことなく、ちゃんと嚥下している!

 食べた! 食べてくれた!


「あ?」


 不快感を露わにされてしまう。

 ですよねえ。こんなに目の前でジロジロ見られては食べ難いですわよね。

 すいません。

 でも、気になってしまい、つい……


「申し訳ごいません。食べてくれたのが嬉しくて……つい見てしまいました」


 私は何故か涙が止まらなくなり、その場で泣きじゃくってしまった。




「面倒くさい女。泣くなら食わないぞ」


 彼は低い声で吐き捨てるように言った。

 ですよね、目の前でジロジロ見られながら食事するだけでも不快なのに、泣かれたりしたら……

 でも、嬉しくて。


 涙が溢れて来て止まりません……



 何だこの女。先程までの偉そうな態度とは全く変わり、幼子のようなこの姿は。まるで……


 ……馬鹿な。


 俺は目の前で人目を気にせず泣き続ける女に、面倒くさいと思いながらも何故か不快感や憤りを感じることはなかった。


 何だこの感じは?



 ただ、この女。どうすればいいのだ。

 コンラッドはいないし。

 マーゴもいない。


 とりあえず仕方ないから食べるか。そしたら泣き止むのだろうか?

 面倒くさい。

 仕方なく俺は目の前のよく分からん物を次々と口に入れる。


 不味くはないが、どちらかと言うと肉は焼いたのを俺は食いたい。

 この柔らかい肉はあまり。だが言えばまた泣きそうなので仕方なく黙って食べ続けた。


 何で俺が、こんな女の為に気を遣っているんだ?

 あり得ないだろ。


 目の前で泣き続ける女を見て、馬鹿馬鹿しくなったが何故か言わなかった。

 面倒くさい。

 流石にもう目の前の小さな物体をどうすれば良いのかを? 考えることが面倒になった。


「もういいだろ。じゃあな」


 そう言って彼は席を立ちあがった。




 ハッ!

 嘘!! 全部食べてくれている!!

 私はまた涙が止まらなかった。



 何だこの女。これだと俺が泣かしたみたいじゃないか。

 面倒くさい女。



「コンラッド! 連れて帰れ!」


 彼が声をあげた瞬間だった。

 二人が走って駆けつけて来てくれた。



「大丈夫か? エミリアさん」

「エミリア大丈夫?」


 コンラッドは泣いている彼女を見て、すかさず弟を睨む。


 異変は無かったようだが? 物音もしなかったし。

 お前は彼女に、いったい何をしたんだ?


「あ? 何もしてないが? ()()な」


 おいおい、その笑いはどっちの、まだなんだ? ミーシャくん? ってお前、全部食ったのか!!



 なるほどな。



「似てるだろ?」

 俺は、可愛い弟に小声で言う。


「あ? 殺すぞ? お前」

「いいのか? なら貰っても?」


 俺は、弟を少し揶揄うつもりで言ったが、嘘はなかった。そんな俺の目を奴は逸らすことなく見て笑った。




「……好きにしろ」


 そう言って奴は足早に去って行った。



「今、少し間があったよな? へぇえ面白いねぇ。ソフィアを()()()()()のはお前だけじゃないんだよ。ミハエル・ルーベンス」


 綺麗な金髪を靡かせ、男は笑いながら先程去って行った銀髪の男とは逆方向に歩いて行った。






 ◇





「エミリア。歩けるかい?」

「うん。ありがとうマーゴさん」


 マーゴはエミリアの頭を何度も優しく撫でた。


 もしかしらソフィア様以上かも。

 あのミーシャが固形物を完食? しかも、あれだけ繊細で他人を寄せ付けないあの男が、食事をするのを他人に見せる?

 あり得ない……


 だめだ。頭がついていかない。寝よう……




 ──なんだあの女。面倒くさい。だから女は嫌いなんだ。

 ソフィア以外の女は。



 何故か、先程のあの生意気な女の顔が浮かんだ。


「面倒くさい女だな……」


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