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追放令嬢、氷帝教育はじめたら何故か最強に?〜パンは剣よりも強しですわ!  作者: 蒼良美月
第一章 悪魔の城へ誘われて

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4.また追放される?

日間ラインキング入りしました。皆様の応援に感謝です。

 ──俺は思わず声が出ていた。


  マーゴ以外がこいつの飯を? 

 それより驚いたのはマーゴではないと知っていて、この繊細な男が口にしたと言うことだ。


()()マーゴがこんなことをする訳がない」


 オレンジをピラピラさせる。


「……うん。あいつにコレはないな。まぁ良い。その辺は俺が調べておく。お前は無理はするなよ? 明日も様子を見に来る! 逃げるなよ?」


「……面倒な奴」


 淋しそうな顔をしていた男の顔が、ほんの少しだけ緩んだ? ような気がした。






 ◇





「マーゴ! マーゴは居るか。ん? 君は?」


 誰だ? この(むすめ)は? 

 こんな若い娘がこの城に居たか?

 あの日以来、この城の若い娘は全員逃げ出したはずだが?


 まるで悪魔と契約したのかと思わせるぐらい血の海となったあの日。



「あ、はじめまして。此方でお世話になっているエミリアと申します」


 目の前に突然現れた貴公子様に少し驚いたが、私は丁寧に挨拶をする。


「ああ、私はコンラッドだ。宜しく。で? マーゴは何処に?」

「今、庭に行かれていますが? もう戻られると思いますよ?」

「なら待たせて貰っても良いかな?」

「はい。どうぞ」


 なんだろう? この娘のこの落ち着く感じは?

 ソフィア? いや、容姿は全く違う。ソフィアはミーシャとまるで双子か? と言うぐらい似ていた。誰が見ても美しく気高い女性だった。だからあの事件が起きたぐらいだ。


 でも目の前の娘は、まだ何処かあどけなさが残る可愛らしい娘だ。なのに何故似ていると感じたのだろうか?


「あ、お茶淹れましょうか?」

「あ、すまない。ありがとう」


「……」

「……」


「あ、お菓子たべます?」

「すまない。ありがとう」


「……」

「……」


  何を話せば良いのだろうか。

 これではこの娘に気を遣わせてしまっているではないか。


「良い天気ですねぇ? 近くに住んでいらっしゃるのですか?」


「え?」


 は? いきなり何だ? 

 あ! つい先日まで西の制圧に行っていて長く留守にしていたから知らないのか? まぁ良いか。にしても面白い娘だな。


「ところでミーシャ、あ、いや、ルーベンス陛下の食事を作っているのは君かい?」


 俺は確信した。あの仕業は間違いなくこの娘だと。


「ええ、そうです。陛下は野菜ジュースしかお召しにならないと聞いて、それでは身体に良くないと思い、無理言ってマーゴさんに届けて貰っています」


 なるほどな。やはりこの娘か。


「ああ、すまない。そのことで実は君に話しがあるのだが、良いかい? 今」


「はい? 何か粗相がありましたでしょうか?」


 娘が不安そうな顔をしたので、俺は直ぐに否定した。


「あ、いやいや君が悪いとかではないんだよ」






 ──「なるほど、そうだったのですね。何も知らずにごめんなさい。次回から気をつけますね」


 俺の説明とお願いを聞き、彼女は深々と頭を下げた。

 もしかして? この娘ならミーシャの凍り付いた心、あの時のままで止まってしまった時を動かせるかもしれないのでは? と、俺は淡い期待をしてしまう。




 ──「あら? 珍しい! コンラッド卿。こっちにいつ戻ったんですか?」


 その声はマーゴだな? 相変わらずだな。


「昨日だ。留守を任せて悪かったな? にしてもだ。()()は何だ? 甘やかすなよ。と、あれだけ言っておいたのにだ?」


「無理ですって……無茶言わないで下さいよ。私だってまだ生きたいですもん」


 マーゴは口を尖らせた。


 そんなに大変だったのか……


「すまなかった……で、だ? 彼女は?」


「ん? あーー! コンラッド卿! 言ってやって下さいよ! この娘に! この娘ったら、あれだけ陛下はジュースしか飲まないって何度も言っているにもかかわらず、パンを焼いたり、具入りのスープを作ったりと、私はここ数日生きたここちがしなかったんだから!」


 やはりマーゴの指示ではなく、この娘がやっていたことか。


「その話だが、先程ミーシャ、あ、いやルーベンス陛下がパンもサラダも召し上がったぞ? 少し残したがな」


「え? 嘘ぉーーーーー!! え? 本当に? あ、でも城壊れてないですよ? 嵐来てないですよ? 本当に??」


「……」


 今、お前サラッと凄いこと言わなかったか? 


「マーゴ。いくらお前でもその台詞は……」


「え? コンラッド卿知らないんですか? 先日この城の一帯だけ()()大雨降って、雷が暫く鳴り響いたんですよ?」


「え? あれってこのお城の周辺だけだったのですか?」


 私は思わず驚いて聞いてしまった。


「マーゴ。()()()

「はい……」


 あれ? 私そんなに不味いことを言ってしまったのかしら?



「あ、いやいや、気にしないで? エミリアさん? だっけ? ところでエミリアさんって何でこの城に?」


「あ! そうそう! それ実は私も気になってたのよ。この城に若い娘が働きに来るだなんて訳ありかな? と思ってさぁ。聞くのも悪いかな? と。でもアンタさぁ毎日楽しそうだったし?」


 あ、そう言えばすっかり忘れてましたわ! この城に来た目的。

 私、こちらに嫁ぎに来たんでした。

 その後、私は二人に事の次第をお話しました。


 あれれ? お二人のお顔が? 少々先程の楽しい雰囲気ではないような?

 やはり田舎者の私の話しなんてご迷惑でしたかしら?




「コ、コンラッド……私、帰って良いか? 今の話し聞かなかったことにしてくれるか?」


 マーゴは頭を抱えてしゃがみ込んだ。


「マーゴ。座りなさい」


 コンラッドも同時に頭を抱えた。

 まさか、あの弟に……

 しかも何処だ? カトリナ? ブルタニア? ん? 何だっけ?


「エミリアさん? 男爵令嬢と言われたが、ところでお父上とお母上は? あと、一緒に来た従者の方々は今どちらに?」


 俺は恐る恐る聞いた。いくら交流が無い国とは言え、間違いなく彼女が見せた身分証は、我が国が以前から依頼を出していた弟の婚約者を募る者への応募用紙だ。


 まさか、あのままになっていたとは……俺の失態だ。

 ソフィアの件があって塞ぎ込んでいた奴に、せめて何とか傍にいてくれる者をと思って出した募集が……


 解除していなかったとは。


「あ、一人で来たんです。ごめんなさい……」


「は?」

「え?」


「一人で? 男爵令嬢が? しかも嫁入りに? えっと、ちょっと待て。()()()()()()()()()? すまない。俺が勉強不足で、申し訳ない。うちから近くの国にはそのような名前の国は?」


 隣国とその周辺にはそんな名前の国はない。だが、この娘が持っているこの身分証(募集要項紹介状)の蝋は間違いなく我が国が発行した物だ。俺が押したから間違いない。隣国にあの時、数通手紙を書いたのも俺だ。その中にこんな名前の国はなかったはずだが?


 この娘の雰囲気と言い、語りや詐欺ではなさそうだが……


「えっと、悪いがもう一度整理させてくれ。婚約者殿との縁談が破談になり、お父上によってうちに嫁ぐように言われ、うちに来た? そういうことかい?」


「はい。そうなんです。申し訳ないです。おしかけてしまい」


 目の前の娘は申し訳なさそうに深々と頭を下げた。

 いや、申し訳ないのは此方だ。此方が縁談希望者を募っていたにもかかわらず、迎えにも行かないわ、しかもまさか下働きをさせていたとは。


「マーゴさん? どういうことか説明しろ! こら!!」


「は? 説明して欲しいのはこっちだよコンラッド卿!! なんで男爵令嬢が、しかも陛下の婚約者がここで呑気にパン焼いたり、じゃがいもの皮むいだり、牛の乳絞ったりしてるんだよ!」


「は? 牛の乳絞らせたのか!? お前!」


 え? 私()()何か皆さんを怒らすようなことを言ってしまったのでしょうか?

 ご迷惑をお掛けしてしまったのかしら? どうしましょう……



 コンラッドは頭を抱えたまましゃがみ込んだ。


 百戦錬磨のルーベンス帝国軍の将軍を務め、血気盛んな軍を率いてたきた男は、まさかのこの状況をどう理解、いやどう弟に説明すれば良いのかを。


 わざわざ遠いところを来てくれた娘に、まさか帰ってくれなど、とても言えない。

 しかもこの娘のおかげで、弟はあの日以来ちゃんとした食事を食べたのだ。いわば彼女は弟の命の恩人とも言える。


 そんな娘を、こともあろうか俺は……

 いくら城を留守にしていたとは言え、全ては俺の失態だ。


「あの、私のせいでご迷惑をお掛けしています? もしかして?」


 娘が申し訳なさそうに此方を見ながら頭を下げた。



「マーゴ!」


 俺はとりあえず、隣で小さくしゃがみ込んでいるマーゴの首を掴み二人で一緒に頭を下げた。


「大変申し訳御座いませんでした。エミリア嬢。私共の手違いでこのような……マーゴ!」


 再びマーゴと一緒に頭を下げる。



「え? そんな、頭をお上げ下さい。私はクビですか?」


 そう言って彼女は小さな身体を震わせながら泣きそうな顔をした。






「二人の行方を是非応援してやって下さい」

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