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追放令嬢、氷帝教育はじめたら何故か最強に?〜パンは剣よりも強しですわ!  作者: 蒼良美月
第一章 悪魔の城へ誘われて

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10.沈黙の部屋

 ──コンラッドさんとの楽しい時間は、あっと言う間に過ぎてしまい、もう昼食の準備をしなくてはいけない時間になってしまいましたわ。


 でも、お料理を作るのなら食材に感謝し、それを育ててくれた方々にも感謝を込めて精一杯作らないといけません。


「陛下がお好きなものって何なのかしら……ねぇ? マーゴさん何か分かりませんの?」


「分かるわけないでしょうに。そもそもミーシャの場合気まぐれだから」


 そう言われてみたら、アイツが自分から「これが好き」「これを食べたい」「ここに行きたい」とか言ったのを今まで一度も聞いたことが無かった? ような。


 全てソフィア様の言うのを聞いていたような? あんなに激しい男が、自分の好みを全く言わないってのも変だよねぇ? 今まで考えたこともなかったけれど。


「聞いてみようかしら? なら」


「は? 何言ってんのさ! あんた、あれだけ朝だって泣いていたじゃない。今日は刺激したら駄目だよもう」


 寝た子を起こすのは止めてくれ。まだ今のアイツは自分をコントロール出来ていない。


 あの頃程酷くはないにしろ、今はまだ危険だ。

 それを自分でもアイツは分かっているから敢えて周りを遠ざけているんだ。


「とりあえず外で私も待ってるから、あまりミーシャに近づき過ぎないようにね?」


「はい……」


 随分とマーゴさんが心配してくれていますけれど、そんなに怖い人ではないようですが?


 でもコンラッドさんが言っていたように陛下を刺激して、陛下自身のお身体を壊してしまっては大変ですものね。気を付けないといけません。


「では、行って来ます」

「うん。距離をちゃんと考るんだよ? 絶対近づき過ぎないでよ? それと無駄なことは話さない。いいね? エミリア?」


 先程もそれ聞きましたよ? マーゴさんって心配性ですわね? でも嬉しいです。

 初めて私のことを心配してくれる人が出来て!


「マーゴさん。ありがとうございます。大好きです!」


「ちょ、いきなり何言うんだよ……」


 驚いた。一瞬目の前にソフィア様が立っているのかと、思わず目を擦ってしまった。

 姿は全く違うのに、エミリアのこの雰囲気に私ですら惑わされそうになるんだから、ミーシャやコンラッドがおかしくなるはずよね……




 ◇





「失礼します。昼食をお持ちしました」


 声がしないけれど、時間にはいつもいらしているし。マーゴさんの顔を見る。


「時間だから入っていいよ。逆に遅いと機嫌悪くなるから」

「そうなのですね? ありがとうございます」


 時間に正確な御方なのですね。気をつけないとです。




 ──ガチャリ



「失礼します?」


 いた! やっぱりちゃんと時間は守る御方なのですね。


「まだ保護者が付いて来ているのか? 大層な身分だな」


 陛下が今日は少し笑っています。コンラッドさんや、マーゴさんが言うような怖い雰囲気は無い感じですが? はて?


「皆さんお優しいのです。きっと皆さん陛下のことが大好きなんですね?」


「あ?」


「え? だってそうでないと、こんなに陛下のことを心配しないですもの。さあさ、冷えちゃいますから、此方を」


 一瞬陛下が少し不快感? を見せたようですが、そこまでではなかったので私は昼食を並べることにしました。


「今日は、じゃがいものチーズ焼きと、ミネストローネにしてみました」


 私は陛下の目の前に、マーゴさんに教わったようにカトラリーを並べ、先ずグラスを置き、水を注ぐ。

 その後、パンとミネストローネを一旦置く。


「…………」


 え? 


 これは駄目な感じですか? ミネストローネはお嫌いでしょうか?

 陛下は微動だにされません。


 えっと、これは聞いたほうが良かったりでしょうか?


「陛下? ミネストローネは苦手でしょうか?」


 私は陛下のお顔を見る。


「……」


「では、じゃがいもにされますか?」


「……」


 これは困りました。口数が少ないとかの問題ではないです。無反応です。


 でも不思議と陛下はちゃんと私の顔を見ていらっしゃいます。どうしましょう? これって?


「では此方がじゃがいものチーズ焼きです。取り分けた方が宜しいか? それともこのままで?」


 私は陛下のお顔をちゃんと真っ直ぐに見てたずねた。


「………」


 暫くの沈黙が続きます。

 これでは困ります。駄目なことは駄目って言わないとです。

 ちょっと私も怒りますよ?


「陛下、黙ったままでは分かりません。ちゃんと言葉にして伝えてくださいませ。子供じゃないんですから」


 言ってしまいました。流石にちょっと言い過ぎたかも? です。

 陛下は無言のまま、私をずっと見ています。


 これは一体? どういうことでしょうか。



「やっぱり違う」


 陛下がポツリと小声で言いました。

 何が違うのでしょう?


「何が違うのですか?」


 え? 何が間違えていたのでしょうか? 陛下の雰囲気が少し変わりました。怒っている様子ではないのですが。私また嫌な思いをさせてしまったのでしょうか?


「取り分けろ。と、パン切れよ。食い難い」


「ひゃい! あ、ハイ……」


 キャーー恥ずかしいです。はいって返事するのが「ひゃい」だなんて……どうしましょう。


 あ! パンですね。なるほど、お切りするのですね。高貴な御方ですものね。ご自身の手でちぎってとかはされませんよね。


 高貴な御方にお会いしたことが無いので存じ上げませんでした。すいません。


 急ぎナイフを籠から。あれ? 何処でしたっけ? ? 無いです……


 予備のカトラリーにナイフが無い!

 あ、()()()()()

 って、ちょっと面白い!


 ってそんなことを言っている場合ではないのです。

 どうしましょう!!



 私は、陛下の席に先程置いたナイフに気づいた!

 お借りしても? 良いかしら?? 今はあれしか無いのです。


「陛下? ちょっとだけ貸して頂いても?」


「は?」


 ですよね。嫌ですよね? そんな誰かもまだ分からない女に貸すなんてね? でも貸して欲しいのです!



「ちょっとだけ貸してください!」


 おもむろに、陛下の前に置いた()()ナイフに手を伸ばす。


「お前!」


 陛下の顔が一瞬にして変わりました。

 やっぱりお嫌でしたのね。ごめんなさい……


 そして部屋が急に寒くなりました。

 どうしましょう……


 ──その時でした。

 大きな音がしたのです。

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