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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

転生者のせいで国外追放された『独り言令嬢』は廃国で日記をめくる

作者: 滅法弱者
掲載日:2026/02/21

「フローレンス・フォン・ディペンド公爵令嬢! 貴様のような『独り言令嬢』とは婚約を破棄する!」


 宮殿、舞踏会の大広間。

 ウィリアム第一王子の怒号が、シャンデリアを揺らす。

 王子のすぐ後ろにはざまぁみろ、とほくそ笑むファビリア男爵令嬢の姿があった。

 派手なストロベリー色の髪をハーフアップにし、男爵にしては目立つドレスを身につけていた。


(……はいはい、ご乱心になられたのですね。私、要領がいいのでわかります)


 お馬鹿な王子が、これからなさる英雄譚。

 まずは聞いてみましょうか……。


「はわはわ、フローレンス様がこわ~い目つきで睨んでくる~。またドレスを破かれちゃう……」

「僕が絶対にさせないぞ、そんな極悪非道。今まで気づいてやれずに、すまなかった……。もう、ファビリアに指一本触れさせん!」

「新しいドレスから何から何まで……ウィリアム王子は私の救世主ですぅ~!」


 大声を出し、王子に抱きつく男爵令嬢。

 抱きつかれた王子は満更でもなさそうだ。


(はぁ、茶番ですね……)


 私……というか貴族なら誰もが知っている。

 王子と男爵令嬢の関係に。

 いつ陥落させたのかは謎だが、ところ構わずイチャついて、時には行為も目撃されていた。

 そして、私だけが知っている。

 男爵令嬢は伝説の聖魔法を使える転生者? なことを。

 彼女が落とした日記に書いてあったのだ。


 花吹雪の節、04月01日――――

 王立学園入学!

 伝説の聖魔法を特典にもらったし、さらにこの美貌! 

 王子様にも見惚れられたし最高!


 花吹雪の節、04月02日――――

 転生者になって毎日が楽しい!

 まぁ、授業は難しいから、ついていけないけど……。

 それでも、いざとなったら隠していた聖魔法で捲ってやる!


 花吹雪の節、04月03日――――

 日記も飽きたな……。

 とりあえず、今日で終わりにす

 

 中途半端に書き終えた日記。

 三日坊主とはこのことだ。

 転生者とやらは知識に無いが、聖魔法が使えることは確かだ。

 ということは――――


「婚約破棄、断らせていただきます。これは私達個人の問題ではありません。国家の問題です」

「……国家的に考えても、そっちの方が国のためなんだよ。――なぜならファビリアは聖魔法の使い手だからだ!」

「……ナ、ナンデスッテ」


 王子の発言で舞踏会場はざわついた。

 無理もない、聖魔法はこの国において伝説になっていたからだ。

 大昔、魔物のスタンピードで滅亡しそうになった自国を結界で護り抜いた聖女。

 その人物が使った魔法が聖魔法だったのだ。


「はい~、まさか私のような地味で~冴えない女に~、そんな才能があったなんて~気づきませんでした~」


(どの口が言うか……)

 

「そういうわけだ。僕はファビリアと婚約する。貴様はいつも通り花にでも話しかけていろ!」


 王子は嘲笑った。

 周りも王子を概ね肯定していた。

 そこにディペンド公爵が人波を掻き分け王子の前に進み出た。

 

「ウィリアム王子! これは……」

「おお、ディペンド公爵、貴殿も賛成してくれるか!」

「…………当たり前ではないですか! 王子と聖女が結ばれれば、国は磐石なものとなります! フローレンスは婚約破棄……いや、国外追放だ!」


 ゲスい顔して平然と言い放った。

 実の娘を見捨てるなんて……。

 クズだ、クズだと思っていましたが、ここまでくるとむしろ清々しいですね。


「承知しました。けれど……本当によろしいのですか、父上? ――国が滅びますよ」

「は? お前のような魔法も使えない無能。呪いすらかけられんわ」


 王子も続けて言った。


「まったくだ。貴様のような花と戯れることしかできぬ女が、国を滅ぼすとは笑わせる」


 最後に男爵令嬢……次期聖女が言った。


「悪役令嬢なんて~、さっさと退散してくださ~い」


***


 私は廃国となった宮殿で一冊の日記を見つけた。


 風化の節、○○月○○日

 王子様と婚約した記念で日記をまた始めるよ!

 聖女として、みんなちやほやしてくれる。

 異世界生活、神様ありがとう!


 風化の節、○○月○○日

 聖女の結界で魔物は自動で撃退される。

 ダラダラしながら王子に溺愛されて順風満帆だ!


 風化の節、○○月○○日

 最近、ディペンド公爵が栽培成功させていた高品質の薬草が、急に栽培できなくなったらしい。

 経済が回らなくなって大ピンチ!

 まぁ、それも一時的なことでしょ!


 風化の節、○○月○○日

 変な病が巷で流行している。

 病にかかった人は踊りながら血を吐き死ぬらしい。

  ……まぁ、それも一時的なことでしょ。


 風化の節、○○月○○日

 王子が病にかかった。

 病は感染症だ。

 もしかして私も発病するんし


 また、日記帳は途中で途切れていた。

 ――少し違うのは、そのページに血がべっとり染み付いていたことだ。

フローレンス・フォン・ディペンドは『独り言令嬢』と呼ばれていた。

黙々と毎日花に話しかけていた姿が独り言に見えていたようだ。

しかし、それは大間違い。

実際に花と話していたのだ。

魔力を全く持たない彼女は花の声を聞き、話すことができる、『花の語り手』だったのだ。

その最たる特徴は望んだ花を咲かすことができる点だ。

最高級の薬草も望めば咲かすことができる。

逆もまた然り……感染し、人を殺す病を生み出す花も咲かすことができた……。

聖女の結界で外敵からは身を守れても、中までは守りきれなかったようだ。


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