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超特殊ジョブ『厨二病患者』となった俺、ダンジョン配信で意図せずバズり始める  作者: 小麦粉


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9/10

俺、魔王城でシンボルを破壊する


 迷宮深度レベル【8】迷宮六本木ビルズ。

 言わずと知れた難関ダンジョンの一角である。


 異次元の魔界から何者かによって召喚されたと伝えられる魔王が牛耳る大きなビルだ。

 高層ビルディングの上空には常に分厚い雲が覆い、昼夜問わず暗がりの状態となっている。


「邪悪な気配だ……!」


「私も感じるぞ、この強烈な闇の気配を! 早くこの身を以て体感したいもんだ!」


「お前は弄られたいだけだろ!」


「な、何を言うか無礼者! 私はなぁ、そんな安い女じゃ……」


「そのセリフ、こないだもう聞いたぞ!」


 ま、変態の話はさて置き。


 魔王ゾルゲの強さは未知数だ。

 玉座に辿り着いた冒険者は数少なく、一部の強力なジョブ取得者が足を踏み入れるも、ことごとく返り討ちに遭っているらしい。

 勇敢にも足を踏み入れた女冒険者が、魔王城から帰らずに音信不通となっているとの不穏な噂も存在する模様。

 放っておけば善良な市民にまで被害が出てしまう……なもんで、ギルドには連日のように討伐依頼が舞い込んでくるそうだ。


 魔王ゾルゲにかけられた懸賞金額は、ざっと53万。

 数ある任務の中でもかなりの高額報酬である。


「よし、これより俺たち二人は、ギルドからの直々の特殊任務、魔王城攻略へと向かう」


「承知した。だが……何故私までこんな不審者のような格好をしなければならないのだ?!」


「この作戦は隠密行動が必須となる。我慢しなさい」


 今日は魔王の下僕セットに身を包むことにした。

 二人共に立派な魔界の戦士となり、邪悪な雰囲気を漂わせている。

 ちなみにエリカはサキュバス風の見た目にアレンジしてあるので、色気はマックス限界突破だ。


:真面目に任務遂行しなはれ。

:ちょっ、エリカ様……露出度高っ!!

:どうせマヒトの趣味だろ。

:踏まれたいので僕もパーティに入れて下さい。

:あれでバレなかったらウケるw


 リスナーが辛口なのは仕方ないとして。


 俺は決してふざけてなどいないから心配は無用だ!

 俺の愛用する『超高性能四次元式コンパクトバッグ』の中に探索用アイテム一式を封入しているから、戦闘に関しては問題ない。


「にしても超高層ビルってだけあって、一番上が見えねぇ」


「噂通りの禍々しさだな。上空を蝙蝠型の魔物、ケイブバッドが飛び交っているぞ!」


「内も外も警備は厳重か……」


 この糞高いビルを最下層から順番に攻略していくのも大変乙ではあるのだが、少々面倒くさい。

 バレずに玉座の間まで到達出来れば完璧なのだが。


 おっと、前方から魔王の配下デーモンデビルが歩いてきたな。


『そこのお前ら、何をしている。早朝の巡回はワイのはずだが』


「今日は俺たちに警備を一任されているから、君は魔王君の肩でも揉んで差しあげろ」


『ま、ま、魔王君とは不敬な…………貴様、見慣れないデーモンだな。名を何と申す』


「魔王の配下デーモンデビル百三十六番だ。こちらは魔王のお側使いを任された艶美な魔族サキュバスである。俺たちは昨日着任したばかりでな、見慣れないのも無理はない」


『…………怪しい奴らめ。ならば、配下の証である背中の紋章を見せよ』


 ち、そんなものは無い。

 俺の背中は毛一つないツルンツルンだからな。


 しかしながら、コイツを出し抜くのは少々無理かもしれない。

 ……例の奇策を使うしかない、か。


「あぁ分かった。服を脱ぐからちょっとだけ後ろを向いててくれるか。たった三秒でいいから」


『魔族の癖に恥ずかしがりおってからに。早くしろ、ワイは仕事で忙しいのだ』


 すごすごと後ろを向いた配下のデーモンデビル。


 と、俺は即座に延髄斬りをかました。


「高速手刀、延髄っっっっ斬りぃ!!」


『なっ、グハァァァァァァァ……』


 マッハの速度で延髄を穿つ。

 デーモンデビルはうつ伏せで平伏し昏倒した。


 ……ざまぁ!!


「なぁ、ちょっとばかり卑怯じゃないか?」


「構うもんか! さっさと内部に侵入するぞ!」



 ◇



 入り口のどデカい門を潜り抜け、俺たち一向は魔王城エントランス階へと辿り着いた。


 城内には大勢の魔族が忙しなく歩き回っている。

 中央付近に聳える魔王ゾルゲの銅像の完成を間近に控え、皆が浮き足だっている様子だ。


『魔王様万歳! ゾルゲ様万歳!!』

『皆の者、ゾルゲ様生誕一周年記念を盛大に祝おうではないか!!』


 何やら宴が開かれている様子であり、パーティ会場に似かよった賑わいを見せている。


:ゾルゲ像気色悪っ!!

:魔族もパーティするんだなw

:懐にレプリカの黒刀を差し込んで完成ってか。

:器用な連中。

:もはや宗教に近いな。


 魔族風情が生意気な!

 六本木ビルズを救った暁には、ここに俺の銅像を建造してやる!


 とは言ったものの、これだけのデーモンがいる中、どうやって上層へと向かうかが課題である。

 背中の紋章とやらが存在しない以上、俺たちが侵入者だとバレるのも時間の問題ではないか?


「おいマヒト、どうするんだこの状況」


「まさに想定外だな。コソコソ動くにも限界ってもんがある」


 俺はようやく気付いた。

 潜入とか卑怯な攻略の仕方じゃ俺らしくもなかったよな、うん。

 男ならなりふり構わず前進あるのみ!


「エリカ、我々は隠密行動作戦から……シンボル破壊作戦へとシフトする」


 場はこの浮かれ様だ。

 魔王を炙り出すにはむしろ絶好の好機。

 派手に暴れ散らかしてやるぜ!


 破壊……否、破砕である。


『顕現せよ、滅砕槌ムジョルニアハンマー!!』


 俺は両手で滅砕槌を握り締める。

 銅像までの距離、およそ十メートル。

 短距離走ばりの爽快なスタートダッシュを決め込み、城内を疾走。

 立派な銅像の真下で足に力を込める。


『身体強化、スーパーマ◯オ風特大ジャンプ!!』


 一時的に某人気ゲームの主人公並みの跳躍力を得た俺は、銅像の頂点、魔王ゾルゲの頭頂部に厨二ハンマーを全身全霊で振り下ろした。


「魔王ゾルゲ……滅砕」


 無様に転がる魔王の頭。

 それを見た魔族達の唖然とした顔。

 一瞬にして場の空気が凍り付き、数秒後、皆の視線は俺一点に集約した。


 ……うむ、原点回帰といきますか。




「オラオラァァァァ! 貴様らの血は何色だぁぁ!」


 こうして城内は一気呵成に戦場と化し、魔王は重い腰を上げるに至ったのだった。



次回『俺、魔王と戦う』

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