俺、魔王と戦う
俺たちは魔族コスプレを脱ぎ捨て、城内を荒らす……壊しまくる!!
『奴を取り押さえろ!』
『魔王様に報告だ!』
:完全にマヒトの独壇場だな。
:城内警報鳴ってるぞ。
:これじゃどっちが悪か分からんなw
:変装する意味w
:魔王もビックリ仰天だよな。
そりゃこんだけ暴れ回れば魔王だって黙ってらんないだろう。
もはやゾルゲ像は原型を留めておらず、ただの岩の残骸となって地面に散らばっている。
残っているのは下半身の一部だけだ。
エントランスは半ば崩壊状態となり、居合わせた魔族達は劣勢を強いられることとなった。
「やぃ魔王! 何処かで見てるのだろう! 早く出てこないと城が陥落するぞ!」
「ま、マヒト、見ろ! どうやら本物の魔王ゾルゲがお出ましのようだ」
「やっとボスが出てきたか」
どうやら大変ご立腹の様子。
怒り浸透ってヤツらしく、頭から蒸気が噴き出して、身体中から黒いオーラを放っている。
腹筋はバキバキ、腕の太さは俺の腰回り程の太さ、両手には黒く染まった刀を持ち、地響きを起こしながら螺旋階段を降りてくる。
『ズシン、ズシン!!』
単純に怖い!
「貴様が例の冒険者だな。よくも……よくもワシの銅像をっ……! この場で刀の錆にしてくれるわ!!」
配下の魔族達が一斉に列を成して並び始める。
威圧感溢れる魔王に平伏すかのように首を垂れて、決戦の火蓋が切られるのを待っているようだ。
殺気立つ城内。
互いが臨戦体制に突入する。
緊迫した空気感の中、魔界の王ゾルゲは、黒刀をブンブンと振り回しながら襲い掛かってきた。
『うりゃぁぁぁぁ、覚悟せいっ!!!』
俺は間一髪のところでマ◯オ風ジャンプで跳躍し、攻撃を避ける。
「しゅばっ!!」
高く伸びる柱に捕まった俺は、高所から魔王の様子を伺う。
うむ、尋常じゃないスピードと破壊力だ。
斬撃によって付近の岩が真っ二つになって黒ずんでいる。
今までの相手とは一味も二味も違う強さときた。
流石は高難度ダンジョンの主、俺の相手に不足なしだぜ!!
『ふははははっ。そんな高い所に逃げてからに。さっきまでの威勢の良さはどうした? ワシの剣戟に恐れを成したか、このヒヨッコめが!!』
ち、言わせておけば。
魔界の王だか何だか知らないが、俺をヒヨッコ呼ばわりとはいい度胸じゃないか。
「俺を舐めんじゃねぇ腰抜けが! 次に地面に転がっているのはお前の生首だからなぁ!!」
『何じゃとぉ! ワシが誰だか分かっておらんようじゃなぁ!! 異世界から降臨した最強の武人、魔王ゾルゲであるぞ!!』
「ふっ、くだらん! なぁにが最強だボケ、カス! いい歳こいて厨二臭漂わせやがって! 見た目はオッサン頭脳は中二ってか!!」
『き、貴様にだけは言われとぉないわ!!』
:まるで餓鬼の喧嘩だなw
:もうこの世の終わりだぁぁ。
:盾騎士はどうした。
:六本木の平和は貴方にかかっているのです。
:こりゃ桁違いの覇気だな。
:無駄に怒らせてどうする。
この流れを見ていたエリカが割って入るように魔王を牽制する。
「六本木の王よ。果たしてその黒刀で私を貫けるかな?」
『人間の女よ……その言葉、後悔は先に立たぬぞ』
「来るがいい! 私が盾となろう!!」
『ふははっ! 我が全身全霊の剣戟、喰らうがよいわ、人間の女ぁぁ! 黒刀五月雨斬り!!』
魔王は一直線にエリカへと突進すると同時に、無数の剣戟で容赦なく切り掛かる。
対して盾すらも持たない盾騎士エリカは、手を大きく広げて棒立ち状態だ。
まさにこれ以上ない受け身の体勢、撃ってくれと言わんばかりの無防備さである。
「うわぁぁぁぁぁ……あぅ……がふっ……」
『笑止! ガッハッハははは!』
エリカがモロに斬られた。
顔面からうつ伏せで倒れ込み、微動だにしなくなってしまった。
『さぁ、残るは貴様だけじゃな。そこに這いつくばっているオナゴと同じ場所へ、すぐ送ってやるわ!!』
「よく見ろよ魔王、まだ終わってないぞ!」
すると、息絶えたはずのエリカが不穏な声をあげながら立ち上がる。
「うっ、うふんっ……こんな強力な斬撃は喰らったことがないぞ……はぁはぁ……気持ちぃ……」
「お前まさか、また……感じてんじゃねぇよな」
ハッとした様子で俺を見やるドM。
「大事な戦闘中に、か、感じてなどいるはずなかろうが! 私とて斬られてかなり痛いのだ。いくら防御力に特化しているとはいえな!!」
魔王は口をおっ広げ、眼を丸くして唖然とした表情をしている。
まぁビビるのも無理はない。
ここまで硬い女って中々いないからね。
しかも撃たれることが大好きな変態ちゃんだから、メンタル面もカッチカチなのよ。
『ぐ、ぐぬぬぬぬ。ば、馬鹿にしおってからに! こうなったら致し方ない……ワシの最強魔法をお見舞いしようじゃないか』
やべぇ程に魔力が充満してきた。
魔王の体内に続々と注ぎ込まれていく闇のパワー。
奴の携える黒刀ブラックエンペラーは、魔王自身の闇の魔力を吸収し、どんどん火力が増幅されている。
世界に二つとない強力な一振り……ならば、俺は更に最強の武器を創造するのみ。
「黒刀改め、魔神刀ゴッドエンペラーを創造する」
この双刀は、地の獄に住まう悪の化身、地獄を治める魔神の力が宿った黒き刀だ!
よって、ただの異世界の王が持つブラックエンペラー程度では、まるで歯が立たない!!
:カッコええやん!
:ブラックエンペラーよりもドス黒い!
:やっちまぇぇ!!
:流石は厨二の王。
:すげぇ……やっぱお前すげぇよ。俺は今、猛烈に感動している!!
「ジャッキィィン!」
『お、お主……そ、そ、そ、その黒き刀は、もしや伝説の……!?』
「あぁ。貴様の想像通り、黒刀ブラックエンペラーの完全上位互換、魔神刀ゴッドエンペラーだ!!」
今回はエリカが時間を稼いでくれたことで、何とか最強刀の創造が間に合ったわけだ。
「魔王、死すべし……!」
『ちょ、待っ、話し合……』
「問答無用!!」
『ぐはぁぁぁぁぁあああ……』
ガードしたブラックエンペラーの上から斬り込みを入れ、ブラックエンペラー諸共斬り伏せた。
六本木の魔王ゾルゲ、撃破。




