第十章 致死の戦い
ピーターは唖然と立っていて、自分の周りで何が起きているか分からなかった。彼は自慢げに大きなマウスの頭をなでた。マウスはうなった。ピーターはマウスからこんな大きなうなり声を聞くのは初めてだった。
「見たかい、スコット?」ピーターは嬉しそうに自慢した。
返事がなかった。
「スコット?スコット?」
ピーターは周りを見回したがスコットはいなかった。「スコット、あれほど言ったじゃないか-」
その時、ある人物が器具の棚の影から外へ踏み出した。
「今のは、すごかったぞ、少年。」
ピーターは息が止まった。エックス博士ではないか!「あの…」ピーターは言葉が出てこなかった。『なぜここにいるんですか?』ピーターは何かがエックス博士のポケットの中で動いてるのに気付いた。『スコットだ』と彼は気付いた。冷たい汗が彼の首を濡らした。
「それどうやって作ったか教えてくださる?」
エックス博士の声の丁寧さにピーターはゾッとした。「えーっと…」ピーターは教えたくなかったが、教えなくてはいけなかった。なぜならエックス博士は彼の弟、スコットを人質にもっていたからである。戦うことのできない小さくて弱いスコットを。
すると、さっきピーターが開けられなかったドアがバンと開いた。「ピーター?まぁ、ここで何をしているの?」
ピーターはもう一つのドアの横に立っている人を見て気絶しそうになった。サリバン先生だった。
ピーターは一度に、ショック、混乱、恐怖、喜び、安心を全部同時に感じた。急なできごとに追い付かず、頭がぼんやりとした。
「お前!」エックス博士は叫んだ。「部屋へ戻ってろ。」
「いいえ、私は戻りません!あなたに私の生徒を傷つけさせませんから。」とサリバン先生は叫び返した。
エックス博士は彼女を怒ってにらんだ。
「私は警察を呼びます。」サリバン先生は続けて言った。「そして全てを話すわ。あなたが私を誘拐してここで強制的にあなたのために働かせていたことを。あなたの過去について知っていることも話すわ、ジェイソン・ラングレン。」
エックス博士はハッとした表情で、目を細めた。彼は黒いコートから何か光るものを出した。大きなナイフだった。
「ダメ!」
ピーターは部屋を走って横切り、サリバン先生の前に自分を放り出した。
ピーターはナイフが自分の上腕をかすった時に痛みで叫んだ。サリバン先生はエックス博士の右腕をつかんだ。ピーターはナイフをもっているもう一つの腕を抑えようとした。
しかし、一人の女性と一人の男の子では、強い男性を抑えるのに十分ではなかった。エックス博士はサリバン先生に向けてナイフを振り回した。幸いにも当たらなかった。
エックス博士がナイフを振った時、小さいスコットはポケットから落ちた。スコットは何か役立つものはないかと必死で辺りを捜した。そして、ピーターの作った赤い液体を見つけた。
スコットはその小さい足が彼を運ぶことのできる最大のスピードで、カウンターへと向かった。彼はナイフを奪おうと必死になっているサリバン先生やピーターをちらっと見た。ピーターの腕はひどく出血していた。彼は急いで何かしないと、彼とピーターとサリバン先生は皆殺されてしまうことを知っていた。
彼は汗をかき、息を切らしながらカウンターをのぼった。
液体を含んだビーカーは今は数センチしか離れていない状態まできた。スコットはスパゲティのようになった足を強制して、ビーカーのてっぺんまでのぼるようにさせた。
ピーターとサリバン先生は何とかエックス博士を抑えていたが、どちらもあまり力が残っていなかった。
その間、スコットは赤い液体の中に飛び込み、おぼれそうになっていた。彼は咳をしながら、なるべくたくさんの赤い液体を飲みこんだ。液体はひどい味がしたが、今はわがままを言う時ではなかった。スコットは貪欲に飲んだ。
すると、彼は体がチリチリして、電気ショックを受けているかのように感じ始めた…