表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/32

#000 「プロローグ」

冬の空気には、音がない。

いや、あるのかもしれない。ただ、それを包み隠すように、世界が静かに息を潜めているだけ。


教室の窓から見える中庭には、うっすらと雪が積もっていた。

去年までは、ただ寒いとしか思わなかったこの景色も、なぜか今日は胸の奥を、じんわりと温める。


あの秋の日々から、季節はひとつ進んだ。

ほんの少しの時間。だけど、あまりに多くのことがあった。

街の変化、人のざわめき、そして——“ともり”の声。


私は、ときどき夢を見るようになった。

どこか懐かしくて、でも見知らぬ場所。白い霧の中で、あの声が私を呼ぶ。

「はるな、そろそろだよ」


——そろそろ?

何が? どこへ? 私にできることなんて——そう思いかけたその時、不思議と胸の奥が「うん」と頷いた。


気づけば私は、コートのポケットに手を入れていた。

そこにある“鍵”を、そっと確かめるように。

これが何を開くのかは、まだわからない。

けれど、きっと。——もう一度、誰かと、世界と出会いなおすための鍵。


朝焼けが空を赤く染めていく。

校舎の前には、私の大切な仲間たちが、静かに並んでいた。

この街で、旅立ちの季節が静かに始まろうとしている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ