第77話 代表会尋問
人生何度目かの気絶から目覚め辺りを見渡す。
正直この目覚めにも慣れてきた。
この救護室を一番利用している新入生は間違いなくオレだろうな。
「学校の救護室か。本当に助かったんだな。」
体を撫でまわして異変が無いかを確認する。
実は足がありません・・・なんてことはなく五体満足だ。
「気が付いたねスヴェン。」
ベッドの横にはエミール王子が座っており、横にはカリファさんが控えていた。
「タイミングがいいね。授業の合間にちょっと顔を見ようと思って来たんだ。」
「ありがとう王子。・・・オレってどれくらい寝てたのかな。」
「たった数日さ。話には聞いていたけど本当に回復が早いね。」
王子はオレの腕や足を触って確認する。
「この外套のお陰だよ。もう何度も助けられてる。」
オレは外套をヒラヒラと揺らした。
普段は透明で見えないがオレが見せようとすればこうやって現れる。
「それも君の力さ。・・・私は報告がてら授業に戻るとするよ。」
「お見舞いありがとう。明日には授業に参加するよ。」
「無理はしないようにね。」
「では王子、参りましょう。」
王子はカリファさんを連れ立って救護室から出て行った。
夕方になり救護室からの退室が許され、オレはその足でアンドレ先生のもとに向かった。
「このメモによると場所は1階の奥の方か。」
いつの間にか枕元に置かれていたメモだけど誰が残したのだろうか。
「ここが渡り廊下で・・・それで左手側に・・・あった。」
この建物でかいな。
高さと他の校舎と変わらない。
しかし扉とか廊下とか、とにかくパーツの基本サイズがでかい。
「えと、誰か居ますか!。呼ばれてきました!」
大声で呼びかけてみるが反応は無い。
「誰も居ないのか。いたずらだったのかな。」
そう思ってメモを再確認していると急に辺りが暗くなった。
なんだ?今日は快晴だったはず。
「よく来たねぇ。さあ入って。」
後ろを振り返ると作業着姿のアンドレ先生と屈強な男達が並んで立っていた。
なんだこの集団。怖すぎるだろ。
「えと、お邪魔します・・・。」
いったい何の話なんだろうか。
「元気そうでよかったねぇ。どこか痛くはないかい?」
1年前を変わらない優しい口調。
「もう元気になりました。それに助けてくれてありがとうございます。」
「いやいや。お礼は友達に言いなさい。彼らが正確に場所を伝えてくれなければあの登場は出来なかっただろうからねぇ。」
そういえばアンドレ先生は狙いをすましたかのように湖に跳んできた。
皆のお陰でオレは生き延びたんだな。
「皆にも必ず伝えます。・・・それでなんでオレはここに呼ばれたのでしょうか?」
「ああ、本題はそれだったねぇ。」
アンドレ先生は用紙を取り出すと机に並べた。
「なんですかこれ。・・・代表会尋問?」
「端的に言うと君達に密猟の疑いが掛かっている。」
「え?!オレ達依頼を受けてますよ!ギルドに確認して貰えばすぐに分かります!」
「落ち着いて欲しいねぇ。不正の証拠があるとかで代表会を公開尋問にかけることを決めたらしい。」
不正?そんなもの!・・・あるかも。
依頼を受注したのはハレンだ。
割の良い依頼を受けるためにギルド職員に魅了をかけた可能性は高い。
「不正の証拠なんて無いと思いますけど・・・。」
魅了は現行犯でなければ証拠を押さえるのは難しいだろう。
ハレンは専門家だからその辺は上手くやっていそうだけど。
「私は証人として呼ばれているから詳細は知らされていないんだよねぇ。」
それはそうか。
学校側の組織ならオレとアンドレ先生の関係を知っていてもおかしくないし。
「分かりました。それでその尋問はいつの予定なんでしょう?」
「君が目覚めたことはもう各代表に通達されているからねぇ。週末にでも呼ばれるかも知れない。」
「アンドレ教授。その件で先ほど呼ばれたのですが日程は本日の夜間に実施されるそうです。」
「ああ、ありがとうブルース。それにしても急だねぇ。」
ブルースと呼ばれた青年は割と標準的な体系をした人物だった。
「彼は今日起きたばかりなのでしょう?変な話です。」
確かに変な話だ。
もしかしてこれも誰かの策略なのだろうか。
「えと、それで今日の夜オレはどこに迎えばいいのでしょうか。」
「講堂はわかるかな?入学式で使ったと思うけど。」
「あそこか、大丈夫です。知ってます。」
入試でも使った場所だ。良く覚えている。
「代表としてブルースも参加するからねぇ。安心して答えなさい。」
「君が不正をしていないなら何も問題は無いよ。聞かれたことに素直に答えるだけで終わるから。」
「えと、頑張ります。それでその・・・代表会って何の代表なんでしょう。」
「ああ、ごめんねぇ。それを最初に説明するべきだった。」
「各研究室で最も優秀な生徒が毎年1名代表として選ばれるのさ。我々オリオンの代表者は俺だね。」
フォーマルハウト、アルタイル、そしてオリオン。
今までピンとこなかったがこれは星の名前だな。
オリオンは前世の理科の授業で習ったし、他の名前も教科書に載っていた気がする。
「そんなすごい人達がわざわざ集まるのか。」
「密猟は冒険者とギルドの信頼に関わるからね。学生の密猟は学校側で厳しく取り締まる必要があるのさ。」
「私は君のこと信じているよスヴェン。堂々としていればきっと大丈夫さ。」
朗らかに笑うアンドレ先生と対照的にオレは暗い気持ちになっていた。
これが誰かの策略なら素直に話してもダメだろう。
時間が無い。早く皆と合流しないと。
人物紹介
ブルース
アンドレ教授の研究室、オリオン所属の生徒。
他のメンバーと違って普通の体系。




