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第74話 フューリーホーンの角:その5

「メガネ!まだ手ぇあるんやったら撤退じゃ!」

ブランドがマーナルディに檄を飛ばす。

「あります!ですがゴーレムを失います!」

サポート組の機動力はゴーレムに頼っている。

ゴーレムを失った場合、マーナルディは降りて走るとしてメイジェーンはドリアルに担がれることになる。

ドリアルは両手をオレとメイジェーンで塞がれ、即時撤退を選べば戦力から除外される。

「いいよ!速攻でやろう!それしかない!」

「坊主!勝手に動くな!」

トトイトは気が急いて落ち着きを失っている。

無理もない。あと十数秒で群れが到達する。

・・・落ち着け。思い出せ。経験の中に答えはあるはずだ。


まずは条件。

勝利の条件は何だ。

依頼の達成?皆の命?戦闘の勝利?

『冒険者は生きてこそ価値があります。生きていればやり直しができますから。』

・・・先生が言う通り普通なら命が大事だ。

それならフューリーホーンの角を捨てて逃げればいい。

相手はオレ達を追う目印を失うからかなり逃げやすくなる。


ただし。

その選択は明日の生活を捨てている。

既に消費した道具を考えれば依頼を達成してトントンくらいだろう。

『冒険者は明日の生活をかけて依頼を受けるのさ。』

ハレンの意見も正しい、オレ達はこの先もこのような危機に直面するのだろう。

そのたびに依頼を諦めていてはいずれ限界がくる。

”絶対に解決できる依頼を受け続ける”なんてできやしないのだから。


ならどっちもだ。

どっちも解決できる方法が今、オレの選択肢にあるか?

『スヴェン君!先に行って!』

『君が戦うべき相手はこいつらじゃない!わかるだろう?!』

・・・あった。

オレはいつだってアレク君の背中を追っている。


数秒の思考の後。

オレは叫んだ。

「街へ向かって一直線に逃げろ!最後尾はオレだ!」

「スヴェン!何をするつもりですか!」

「先に街に戻って助けを呼んできて!オレが時間を稼ぐよ!」

これがどっちも手に入れられる可能性が一番高い方法だ。

怪我をするのがオレ”だけ”なら外套の力で何とかなるかもしれない。

「チビ!誰がそんな話ーーー」

「行けよ!これが一番だってわかってんだろ!」

「怪我の治りがいくら早くても死んでしまったらどうなるか・・・。」

「死なない内に助けを呼んできて。それだけだよ。」

皆心配してくれている。

でももう決めたのだ。これで勝つ決めたなら絶対にやり遂げる。

「スヴェンだめだよ!それなら角なんか捨ててさ!」

「後味が悪いわー!」

皆聞き分けが悪いぞ。この問答の間に逃げてくれよ。

「ウー!ガー!」

ドリアルが雄叫びをあげる。

なんだ、ドリアルも反対か?

「ドリアル、たたかう。”これ”、トロールの、やくめ。」

ドリアルはオレを肩に担ぎ直し走る速度を落とす。

どうやら一緒に最後尾、いや囮になってくれるらしい。

「助かるよドリアル。」

「オデ、からだ、げんき。ぜったい、しなない。」


「ボケが!おいメガネ!なんか言わんかい!」

「・・・いいえ。スヴェンの指示通りにします。」

「はぁ?!」

「何か思いついたのー?」

「そうです。とにかく今は街の方へ!・・・これは命令だブランド!」

なおも残ろうとしたブランドをマーナルディが怒鳴りつける。

「うっさいわ!ワシは命令なんか聞かんぞ!なんの権限があってーーー」

「ブランド!俺達は逃げる!そうトトイトが決めた!それでいいよね!」

二人の口論をトトイトが制す。

今のパーティリーダーは彼だ。

そしてリーダーの決定に反論の余地はない。

「あああ!くそ!・・・チビ!死んだら殺す!わかったかボケェ!」

5人は速度を上げて街へと全力で走る。

これで依頼は達成だ。

後はオレとドリアルがどれだけ粘れるかの勝負だ。


大地を蹴る音が目前に迫っている。

次の瞬間にも群れが姿を現すだろう。

「ドリアル。熱いけど我慢してね。」

オレは心臓へ向けて全力で魔力を注ぎ熱の渦を大きくし続ける。

そして渦を横長に広げてフューリーホーンの群れ全体に被さるように展開した。

これはオレ達が囮になるために必要な準備だ。

オレの魔力がとブランドの嗅覚を阻害するように、フューリーホーンもオレの魔力で覆われると探知力が下がるはずだ。

後は皆と群れの位置が離れれば見失うだろう。

なら次は進行方向を変えないといけない。

「ちょっと怒らせるか。」

オレは渦の温度を少し上げる。

これは群れ全体へストレスをかけて興味を引くためだ。

「もっと、あつく、できないか。」

「できるよ。でも今の熱量だと仕留めきれない。中途半端にすると群れが分裂しちゃうかも。」

熱を嫌がりオレの渦から出てしまうとまた角の魔力を探知されてしまい意味がない。

やるなら一度で仕留めなければ。

「わかった。じゃあ、オデ、どうする。」

「少しずつ森側に戻ろう。少しでも距離を稼ぎたい。」

「わかった。」

ドリアルが大きく息を吸う。

もうそろそろか。

それに老いた”怒れる角(フューリーホーン)”もかなり回復したように見える。


「ォオオオオオオオォォォ!!!」

少しだけ高い鳴き声。

生命力を感じる。間違いなく若い個体だ。

「ォォォオオオオオ!!!」

それに応じるように老いた”怒れる角(フューリーホーン)”が立ち上がった。

目に怒りが宿っている。もう絶対に逃がしてはくれないな。


いいや違うかな。

逃げるだけじゃない。勝つんだ。

オレの全力、見せてやるよ!

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