表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/141

第73話 フューリーホーンの角:その4

「ォオオオオオオォォォォォ!!!」

低く、圧力のある鳴き声。

一歩踏み出すごとに地面が揺れ、木々がなぎ倒される。

この森に彼の障害となるものは一つもない。

当たれば即死の重戦車だ。


「散れ!」

ブランドの号令でオレ達は四方に散開する。

オレ達が元々居た場所は木の根が見えるほど地面が抉られていた。

かすっただけでも大怪我しそうだ。

「以降は取り決め通りに!」

マーナルディの声に全員が頷く。

ハレンを除くメンバーで二人一組(ツーマンセル)を作り、組ごとに距離を取った。

敵を中心に(さんかく)の形を保つ。

事前に決めていた対大型生物用の陣形だ。

強力な範囲攻撃に全員が巻き込まれないようにし、それぞれの組が役割を遂行する。

冒険者に広く伝わる戦術だ。


まずはマーナルディとメイジェーンの後方支援組。

「ゴーレムを出します!」

マーナルディがゴーレムコアを金槌で叩く。

すると地面からゴーレムの体が生え、マーナルディとメイジェーンを抱えて走り出した。

「思いっきりやれー!助けてあげるー!」

より安全な位置からサポートする陣形の要。


次にトトイトとブランドの前衛組。

「よーし!!!行くぞ!!!」

トトイトが気合いを入れるとグングンと存在感が増し、体が大きくなったような錯覚を覚える。

格闘家の”構え”だ。

「好きにやれ坊主!ワシが合わせる!」

ブランド達は反対により危険な位置に体を寄せ、相手の気を引く動きをしている。

彼らはチーム戦闘を可能にする前線(フロントライン)だ。


最後にオレとドリアルの火力組。

常に相手の背後を取り致命の一撃を入れるのが役割だ。

可能な限り早く相手を倒さなければならない。

・・・だけど先に考えるべきことがある。

「できるなら逃げたい。どうにかなだめられないかな。」

戦わずに済むならそれが一番だ。

攻撃を始めたらもう絶対に逃がしてはくれない。

「むりだ。おいた、ぬし、ずっと、あのまま。」

「老いた主・・・歳をとって感情のブレーキが無くなってるのか。」

文字通り死ぬまで追いかけてくるのだろう。

まさに”怒れる角(フューリーホーン)”だ。

なら覚悟は決まった。

「オレが体制を崩すよ。」

「わかった。オデが、しとめる。」

決め事は全て確認した。

後はどれだけ力を発揮できるかの勝負だ。



「うおおおおお!ボケがぁ!」

「せい!はっ!」

「ォオオ!」

前線組の活躍で相手は突進攻撃に移れない。

角を振り回してどうにか払おうとする。

しかしその巨体が仇となり至近距離の彼らに攻撃が当てられない。

「・・・ォォオオオ!!」

怒れる角(フューリーホーン)”が動きを止め体を硬直させる。

角にピリピリとしたものが集まる感じ・・・雷魔法、いや風魔法もか?

「魔法だ!」

「避けろ!」

オレとブランドが同時に叫ぶ。

「オオオォォォ!!!」

帯電させた角をより一層激しく振り回す。

同時にスパークが迸り周囲一帯を薙ぎ払った。

「ウギギ・・・痺れた!」

間一髪で前線組はその攻撃を躱した。

しかし直撃しなくても体を痺れさせてくる。

このままでは接近戦は難しい。

「陣形が崩れます!一度距離を取って!」

マーナルディが後方から指示を飛ばす。

ブランドがトトイトを抱えて後ろに下がり、痺れからの回復を図る。

「ォオオ。」

強力な攻撃だけど隙も大きい。

背後のオレ達は完全にフリーだ。

熱風(ヒート)!」

オレは空気の手で”怒れる角(フューリーホーン)”の左足を掴む。

熱を溜める時間は十分にあった。

鉄だって曲げられる熱さだ!

「ォォオオ!」

しかし対応は迅速だった。

左足を大きく上げ体を一回転させることで空気の手を振り払う。

・・・くそ!握力が足りないか。

「ウー!ガー!」

だけど攻撃は魔法だけではない。

ドリアルが渾身の力を込めて棍棒を脇腹に叩きつける。

「!!!・・・ォォ。」

あまりの衝撃に全身の毛皮が波打つ。

激痛にあまり声を上げることもきないようだ。

「すっごいパワーだ。」

「やるねドリアル!」

「まだ、ぬし、げんき。」

ドリアルの言葉通り”怒れる角(フューリーホーン)”は体制を直すとこちらを真っすぐ見据えた。

どうやら本気で怒らせたようだ。

「ォオオオオオオォォォォォ!!!」

急加速した重戦車がドリアルに迫る。

「・・・ウー!ラー!」

マズイ。距離が近すぎて避けられない。

それを察したドリアルは腰を落として両手を開けた。

受け止めるつもりだ。

でも地面を抉る威力を?ドリアルでも無理なんじゃ・・・。

「『大地の化身よ、身に迫る脅威を打ち払え』・・・開放!岩石砲(ロックブラスト)!」

メイジェーンが何かを唱えた後、彼女の杖が爆発して巨大な岩が飛び出した。

「わかった。」

メイジェーンの意図を察したドリアルが後ろに数歩下がる。

そのままドリアルと”怒れる角(フューリーホーン)”の間に着弾し、触れたら即死の重戦車は大岩に直撃した。

衝撃で地面が揺れる。大岩が崩れ”怒れる角(フューリーホーン)”にぶち当たった。

「ォォオオ!」

「・・・バケモンかこいつ。」

「大岩ですよそれ!」

妨害なんて気にも留めず、岩を砕きながらなお直進する。

「ウー!ガー!」

ドリアルは間一髪で突進を躱し、すれ違いざまに左足に一撃を加えた。

「ォォオオオ・・・」

自身の突進の威力をカウンターされ、今度こそダメージを受けたようだ。

明らかに足がふらついている。

「たった2回の攻撃でここまでダメージが入るなんて・・・これがトロール。」

「ナイス!もう一撃で倒せそう!」


ドリアルの活躍で突進の威力が削がれた”怒れる角(フューリーホーン)”の脅威度は大きく下がり、簡単に攻撃が避けられるようになった。

こうなればもう時間の問題だろう。

「やるね。森の主をここまで追い詰めるなんて。」

どこかに隠れていたハレンがいつの間にかゴーレムに乗っていた。

「・・・そんな甘ないわ。こいつは魔物じゃ。」

ブランドが何かを嗅ぎ取り周囲を警戒する。

「ブランド。何かいるの?」

「チビ!恐らく群れじゃ。」

「群れ?!」

オレは戦闘中溜め続けていた熱の渦を広げ周囲を確認する。

今の渦の大きさなら半径200mを探知できる。

・・・フューリーホーンの角と同じ触り心地がする。

それがざっくり20頭くらいか。

いや、それに加えてピリピリする感覚がある。

「群れだけじゃない!もう一頭でかいのがいるよ。」

「もしかして森の主ですか?・・・なるほど、ちょうど代替わりの時期だったのですね。」

「どうしよう!まだ目の前の主も倒しきれてないよ!」

時間が無い。すぐに選ばないと。

弱らせた”怒れる角(フューリーホーン)”を無視して逃げるか。

速攻で倒して逃げるか。


どちらにもリスクはある。

どっちが正解だ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ