第6話 授業とか演習とか
「はい~。というわけでタナトリス硬貨は古い歴史があって、その価値はむか~しからずっと変わらないのです~。」
今日はお金の授業だ。硬貨の価値とか歴史とか、知っていることがはっきりしていくのが面白い。
王の硬貨はでかくて金色、鷲の硬貨は銀色で、街道の硬貨は銅色だ。
いつも金貨とか銀貨とか呼ぶから、正しい呼び方は初めて知った。
「金貨は先生もあんまり使いません~。金貨1枚で町民の半月の食費と言われていますね~。
それではスヴェン君~。両替の項について読んでください~。」
「はい!えっと、銀貨は10枚で金貨と交換できて・・・銅貨は10枚で銀貨と交換できます!」
「はい~。ありがとうございます~。では銀貨1枚、銅貨1枚ではそれぞれ何ができますか~。」
「はい!・・・あれ?紙に書いてないや。えっと、うちの村では銀貨1枚で鹿肉とシチューが食べられます!それと銅貨1枚で茹でた卵が食べられます!」
「素晴らしいですね~。ありがとうございます~。」
よし。ちゃんと答えられた!ギルドの酒場(村唯一の食事処)でお手伝いしていた甲斐があった。
「それではアレク君~。銭貨の項を説明して貰えますか~。」
「はい、先生。銭貨とはタナトリス硬貨以外の硬貨をまとめた総称です。古い遺跡から見つかった硬貨や異民族の硬貨もその大きさの大小、含まれる金属に関わらず10枚で銅貨1枚と交換と定められています。」
「完璧ですね~。では銭貨の実情についても答えられるかな~。」
「はい、先生。流通している銭貨はほとんどが各領主が発行する独自の銅貨です。色合いは黄色や銅色など種類がありますが、物価の低い地方で商売を成立させるため発行されています。」
「はいその通りです~。因みに遺跡の硬貨は歴史的価値があるので売れば相応のお値段がつきます~。」
へーそうなんだー。アレク君詳しいなー。・・・じゃなくて!結局アレク君の方が詳しいし!
これじゃオレが1番じゃないよ!
「はい~。それではお金の授業はここまでです~。明日の朝にそれぞれの項の要点をまとめたレポートを提出してくださいね~。」
レポートか。せめてレポートでは1番じゃないと!
どうしよう誰かにお金について聞いてみようかな?
ひとまず授業が終わり、各々昼食を食べて放課後になる。
午後は町出身の子は家に帰ってお手伝いがほとんどで、村出身の子は伝手で仕事させて貰うのが普通みたい。
オレみたいに勇者とか冒険者になりたい子は、午後演習に参加することになる。
「はい~。それでは演習を始めていきましょう~。今年は5人も参加してくれてうれしいです~。
じゃあ早速、ランニングから行きましょう~。先生についてきてください~。」
ランニングかー。剣を使う演習がよかったなー。
「先生!ランニングってどれぐらい走るんですか?」
「そうですね~。まずは町1週行ってみましょう~。」
うえっ!って声が後ろから聞こえてきたけど。
町一周ってどれくらいだ。前世的に言うと1、2Kmくらい?
「うぇ、おぇ。しぬ。」
学校に戻った時には、アレク君を除く4人は死にそうな顔していた。
というか死んだ。オロロロ。誰だよ1、2Kmって言ったやつ。
「よくがんばりましたね~。卒業までには帯剣して2周できるようになってもらいます~。」
噓でしょ。もう一周と剣の重り付き・・・。無理だ。
「アレク君はまだ少し余裕がありそうですね~」
「はい、先生。ですがまだまだです。」
・・・オレってアレク君に勝てるのかな?
硬貨現代換算
王の硬貨(金貨):1万円
鷲の硬貨(銀貨):1000円
街道の硬貨(銅貨):100円
銭貨:10円