第51話 祝春会 4日目ーお別れの時間ー 後半
本来51話にまとめて投稿する予定の物でした。
ご了承ください。
「スヴェン!」
「大丈夫。くらっとしただけだよ。」
「よくないわよ。ほら、ここに横になって。」
そう言ってオレを膝枕してくれた。
「ほら動かないで。」
なんか、なんかこう・・・緊張する!
「あ!ミーシャ逃げちゃダメだよ?約束!」
オレは緊張をごまかすように言った。
「逃げたりなんかしないわ。・・・でも時間はあまりないから短くね。」
「そっか。じゃあみんなからの伝言からね。まずアロナからーーー」
オレは3人から任された伝言をミーシャに伝えた。
「私の負けね。」
「その、アロナとか口が悪いけど。きっとミーシャを責めたいってわけじゃなくて・・・。」
「大丈夫。わかってるわ。」
ミーシャはそう言いながら町の方を見た。
よかった。ちゃんと伝わっている。
「ミーシャ。オレも言いたいことがあるんだ。聞いてくれる?」
「ええ。」
「オレさ、学校出たら冒険者になるんだ。」
「そう言ってたわね。」
「冒険者になって、すごいことして、それで『物語の勇者』の一人になりたいんだ。」
「それはどうして?」
「本で読んだとき、オレもこうなりたいって思ったから。でも今はもうちょっとちゃんとした理由があるよ。」
「聞かせて。」
「ミーシャに会いに行くよ。」
「それは無理よ。魔族か人族か、どちらかが国境を越えたら戦争になるわ。」
「勇者になったらさ、『道の勇者』みたいにどこでも行けるんだよ。」
「その認識は正しくないわ。でもそうね・・・可能性はある方かしら?」
「でしょ!だから絶対勇者になって、オレがみんなを連れて行くよ。」
「はいはい。」
そう言ってオレの頭を撫でてくれた。
「私からもみんなに伝言をお願いしてもいいかしら。」
「うん。もちろん。」
「短い間だったけど楽しかった。」
「それだけ?」
「それだけよ。」
「わかった。絶対伝えるよ。」
「よろしく。・・・ああ、もう時間なのね。」
ふとミーシャは空中を見上げた。
「最後に一個だけ!」
「何かしら?」
「オレたち友達だよね?」
「・・・あなたがそれでいいなら。」
「じゃあ友達だ!」
ミーシャは最後に小さく頷くと、頭を撫でていた手でオレの視界を覆った。
「おやすみなさいスヴェン。・・・また会いましょう。」
「やあスヴェン君。おはよう。」
次に目が覚めた時、オレはアレク君の背中に担がれていた。
「おはようアレク君。ごめん。自分で歩くよ。」
「大丈夫だよ。僕が好きで担いでいるんだ。」
アレク君は下ろしてくれるつもりはないみたいだ。
「目的は果たせた?」
「ウインドベアの親玉は倒したよ。それにミーシャと話もできた。」
「それは何よりだ。」
その後しばらく無言で歩き、夕日が沈むころには町の門が見えてきた。
昼頃の喧騒は無くなっている。
魔物達は逃げたか倒されたかしたのだろう。
「スヴェン君。僕は君の勇気は素晴らしいものだと思う。」
「ありがとう。でもずっと誰かが助けてくれたんだ。素晴らしいのはみんなだよ。」
「それでもだよ。君の行動が無ければ僕達は今日のことをずっと後悔していただろうね。」
「アレク君もメラニーもやらなきゃいけないことが多いから。何もしなくていいオレが、やりたいことをやれただけだよ。」
「謙虚だね。それは君の美点だ。」
気が付くと門の目の前まで戻ってきていた。
「改めてお礼を言うよ。君は僕にできないことを成し遂げた。それは紛れもない僕の本心だ。君のように心のままに生きれたらといつも考えているよ。」
「どうしたのアレク君?」
「君は素晴らしいことをした。僕もメラニー君もアロナさんもグレジオ先生も君を応援した。・・・でも町の人にとってはそうじゃない。」
「あ・・・。うん。そうだね。」
冷静に考えればオレがやったことは牢屋から抜け出して、町の大事な祭りをめちゃくちゃにした犯人を逃がす手伝いをしている。それにその犯人を町に連れてきたのもオレだ。
「怒られるかな・・・。パパもママも怒るだろうな。」
「色んな人に叱られるだろうね。そして公平さの為に君の、いや僕達がやったことの事実を隠したりできない。・・・町の人は君に良い印象を持たないだろうね。」
なんとなくアレク君が言いたいことがわかった。
「オレ・・・町に戻ったらイジメられそうってこと?」
「そうならないようにできることをすると誓うよ。」
「好き勝手させて貰ったし、ちゃんと怒られるよ。でもさ・・・」
オレはゆっくり立ち上がり、そして宣言した。
「オレはスヴェン・ツオイス!いつか勇者になる男だ!!夢はずっと変わらないよ!」
「それでこそスヴェン君だよ。じゃあ帰ろうか。」
オレとアレク君は門をくぐり町へと帰る。
今日の出来事は一生忘れられない、大切な思い出になった。




