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第49話 祝春会 4日目ー邂逅ー

「スヴェン君。君に一つだけ聞きたいことがあるんだ。」

「なにが聞きたいの?」

「もしミーシャと戦うしかない状況になったら、スヴェン君は戦えるかい?」

アレク君は穏やかな口調で聞いた。

できれば考えたくない状況だけど・・・でもそうも言ってられない。

「戦うよ。」

「・・・そっか。そうだね。」

アレク君は後ろ手に背負っていた剣を触った。

「僕もスヴェン君と同じ意見さ。いざという時はーーー」

「でも倒して終わりにするためじゃないよ。戦いながらでも話せることはあるし、勝てば諦めて話をしてくれるかもしれないよね。」

オレはアレク君の覚悟を遮る。

アレク君はしばらく黙った後、笑顔でこう言った。

「ああ!スヴェン君の言う通りだ!」


しばらく走っていると舗装された道が見えてきた。

あの道は走りやすそうだ。ミーシャもここを通ったかもしれない。

「アレク君。ミーシャもここ走っていったのかな?」

「この道は軍が舗装した道路だね。北側の魔族領との国境まで伸びているからミーシャが通った可能性も高い。」

「じゃあ進む?」

「難しいところだね。辺りに隠れている可能性も十分にある。メイドと合流する地点は決めているはずだからね。」

「そっか。メイドと合流できたらワープで移動できるのか。」

ミーシャがこの道を目指して移動していたことは多分間違っていない。

じゃあこの次はどうするか。なにか手掛かりはないか・・・。

この辺りは草原で遠くまで見渡せる。

「うーん。人の姿は無いよなぁ。」

「スヴェン君!あっちを見て!」

びっくりしてアレク君が指差した方を見る。

誰もいない。いや?なんか小さな生き物が沢山いる。

ぱっと見ただけでも100近い数だ。

「なんだろうあれ?この辺であれくらいのサイズの生き物だと・・・猪か。他にはーーー」

「ウインドベアだよ。多分東門で追い返した群れとは別の群れだ。これは一刻を争う事態かもしれない。」

「どうして?」

「魔物は感覚の共有があるって話を覚えているね。」

「うん。親玉級を通して同じ魔物は繋がっているって話だよね。」

「ウインドベアは僕が東門で戦った相手だ。だから他の群れにもそれが伝わっているはずだ。」

「そうなると・・・もしかしてあの群れにオレたち襲われる?」

「襲われるのが僕達なら問題ないさ。問題は北門から逃げた人達だよ。」

しまった。全然気が付かなかった。

「町から出た人の中には戦えない人もいたよ。どうにかしなきゃ。」

「スヴェン君。急ごう。」

オレたちはミーシャ探しを中断して、急いでウインドベアの群れを追いかけることにした。


「やっぱり群れの動きが変だ。何かを追っているに違いないね。」

アレク君は走りながら群れを観察している。

「そう、なんだ。じゃあ、もっと、ぜぇ、急がないと。」

マズイ。ここまで走りっぱなしだったから息がきつい。

「ペースを落とそうか。群れの動きも鈍くなっているし、ここまま距離を保って追うことにしよう。」

「ぜぇ、ごめんアレク君。」

体力が足りない。悔しいけどこのままだと足手まといだ。

「オレは少し休んでから追うから。アレク君には先に行って欲しい。」

「それは聞けない。はぐれるのは危険だ。」

「でも!それだとーーー」

『グオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!!!!』

オレたちの会話を遮り、不吉を告げる雄叫びが鳴り響いた。


・・・もうこれで三度目だ。

いつだってこの後には良くないことに巻き込まれた。

オレの人生で嫌な思い出そのもの。

「スヴェン君。大丈夫かい?」

オレは一度深呼吸をして息を整えると、自分の頬をぴしゃりと叩いた。

「大丈夫!行こう!」

目指すのは雄叫びの聞こえた方だ!


嫌な予想はよく当たるもので、先ほど町から出た人達がウインドベアの群れに囲まれていた。

「誰かが戦っているみたいだ!」

「これは良くないね。あの冒険者達は非戦闘員をかばいながら戦っているみたいだ。」

距離が近づき様子がはっきりしてくると3人の冒険者が4、5人の戦えない人達を中心に集め、何とか群れを遠ざけている状況だった。

「くそ!なんでこんな数がいるんだ!」

「一匹じゃ雑魚なのに・・・多すぎて的が絞れない!」

「とにかく群れを中心から遠ざけろ!攻撃に移られたら終わりだ!」

冒険者達は声を掛け合いながら連携を取っている。

この圧倒的に不利な戦況をチームワークで支えているのか。すごいな。

「僕が行く!」

アレク君は一歩深く踏み込むとグンと加速する。

そのまま肩にかけた剣の柄を右手で掴み、反対の手でベルトを外して鞘を捨てた。

最高速で抜剣したアレク君はその聖剣を輝かせながら群れの横っ腹に突っ込こむ。

「今だ!皆囲みの外へ!」

「なんだ君は!・・・いや今がチャンスだ!」

冒険者パーティはリーダーの声に合わせて動こうとする。

しかし中央で守られていた人達は状況の変化についていけず、呆然としていた。

「どうした!早くしないか!・・・ぐあっ!」

その様子を見て動きを止めた冒険者に対して群れの1体が突進した。

それがきっかけになり群れは囲いの形成から攻撃に行動が変化する。

「皆伏せて!」

アレク君は剣に魔力を込め、回転切りを放った。

眩い閃光が放たれ、目をやられた個体はのたうちまわっている。

隙ができた。・・・でもダメだ。

中央の人たちは完全にパニックになってしまって、地面に伏せながらガタガタ震えている。

「スヴェン君!先に行って!もうじき目くらましの効果が切れる!」

「でも!オレたちで戦った方が安全だ!」

「もちろんさ!でも君が戦うべき相手はこいつらじゃない!わかるだろう?!」

魔物の群れは親玉級、上位種を中心に繋がりを持ち高度に連携している。

元々連携をとる習性のある狼とは大きく違う点だ。

「・・・アレク君!行ってくる!」

「最後に伝言をいいかな!」

「なに?!」

「僕達は強い!この程度じゃ誰一人として死なない、死なせないってね!」

「任されたよ!」

オレは後方で鳴り響く戦闘音を振り切り、オレは森の深くに向かった。



ウインドベアの群れが近くにいることで親玉と下っ端の魔力の繋がりが濃くなり、オレでも感じられるくらいになっていた。

つまりこの魔力を辿っていけば親玉にたどり着くわけだ。

・・・正直怖い。

もしかしたらミーシャにたどり着く前にオレは死ぬかもしれない。

でもみんなに言葉を託された。

オレの意思で、前に進むんだ。


しばらく進むと今度は空気に変な流れを感じた。

これは風魔法だろう。

オレは少し熱を溜め体の周りに渦を作る。

渦を通してオレは理解した。

「会うのは初めてだよな。あんなに迷惑かけられたのに。」

この少し先にあいつがいる。


そしてオレはついにその姿を捉えた。

体格は2m以上。オレと倍以上の体格差がある。

「触れられたら死ぬな。」

その牙と爪は鋭く尖っているし、なにより周囲の空気があいつを守るように流れている。

・・・大丈夫だ。オレはもう大丈夫。

自信が持てるくらい強くなった。


「おいお前!オレと勝負だ!」

勇気を出してオレは木陰から飛び出した。

それに反応してあいつはこちらを確かに見た。

すごい形相だ。素人でもこいつが興奮状態なのがわかる。

・・・しかし様相とは裏腹に周囲を見渡すと何かを見つけたようで走り去ってしまった。

どうした?オレが相手にならないって思ったのか?

「グオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!!!!」

オレの間抜けな予想はすぐに間違いだとわかった。

あいつには襲うべき相手がすぐそばにいたのだ。


「これは・・・。ミーシャの魔法だ!」

オレは全速力であいつの後を追う。

これは予想外だった。

ここまでに来る途中でアレク君からは、ウインドベア、つまりは親玉がミーシャの魔法で操られていると聞かされてた。

今の状況とは全然一致しない。

これは想像以上にやばいかもしれない。


魔法がぶつかり合う所を目指して走っていると、ついにオレは目標にたどり着いた。

ウインドベアの親玉。そしてミーシャだ。

ミーシャは魔法で応戦しているが体は擦り傷だらけだった。

あいつの突進攻撃を避けるために何度も体を地面や木々にぶつけたのだろう。

そして最悪なことにミーシャの隣で5歳ほどの小さな女の子が泣きじゃくっていた。

「ミーシャ!大丈夫?!」

「スヴェン?!」

ミーシャの顔には複雑な表情が浮かんでいたが、瞬きをする間に決意の表情に変わった。

「スヴェン。この子を連れて逃げて。」

「ミーシャはどうするつもり?もうボロボロだ。戦えないよ。」

「大丈夫よ。集中さえできたら私の言うことを聞かせられるわ。」

「オレが近くで守るよ。それの方が安全だ。」

「そんな小さな子を連れたままで?邪魔よ。その子も、スヴェンも。」

そう言ってミーシャは女の子の手をオレに掴ませた。

「こっちよブサイク!」

そう言うや否や、ミーシャは魔法を放ちながら飛び出す。

最後にちらりとこちらを見て、より森の奥へ走り去ってしまった。

「ミーシャ!・・・くそ!」

あいつは当然オレには目もくれずミーシャを追いかける。

オレは女の子の手を握ったまま動けずにいた。


「ねえ、もう大丈夫。お姉ちゃんが守ってくれたよ。」

「ぐずっ。あれ?おねえちゃんは?どこ?」

やっと落ち着いてきた様子だったが、今度はミーシャがいなくなり不安になったようだ。

「大丈夫。すぐ近くにいるさ。」

「ぐずっ。ホント?じゃあおうちにいるの?」

「おうち?」

「うん。すぐそこにおうちがあるの。」

女の子が指さした方向には小屋があった。

この子の両親はここで木こりをしているのだろう。

「よし!じゃあいこうか!」


「・・・あああああ!!!アンリ!!大丈夫?ケガはない?」

「おかあさん。痛いよー。」

家に着くと母親が扉を蹴破る勢いで迎えてくれた。

「おかあさん。おねえちゃんは?」

「お姉ちゃん?」

「オレの友達です。同じ年くらいの。」

その言葉で母親はようやくオレの存在に気が付いたようだ。

「あなたも早く家に入りなさい!外は危険だわ!」

「ありがとうございます。でもオレ行かなきゃ。友達が戦ってるんだ。」

「こんな小さな子が・・・。」

「じゃあまた会えたら!」

オレは短くあいさつしてその場を去ろうとした。

「待ちなさい!一瞬。一瞬だけ!」

そう言って母親は自分が身に着けていたブレスレットを取り、オレの腕に巻きつけた。

「お守りよ。必ず生きて返しに来て。お友達と一緒に。」

「もちろん!ミーシャと一緒に必ず!」


オレは全力でミーシャの後を追った。

今度こそ全てに決着をつける時だ。

人物紹介


アンリ

北門の先の森の木こり一家に生まれた女の子。

父親が町のお祭りから帰ってくるのを楽しみにしていた。


アンリの母親

大切なブレスレットをスヴェンに渡した。

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