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第47話 祝春会 4日目ー最後のチャンスー

朝だ。

昨日は少し夜更かししたのでまだ眠たい。

だけど今日は大事な日だ。

しっかりと準備しないと。


オレは水で顔を洗って体を目覚めさせた後、メラニーの部屋に向かった。

「おはようメラニー。今日は晴れたね。」

「おはようございます。いつもなら冒険日和でしたね。」

メラニーの机には書類が山と積まれていた。

「もしかして・・・これ全部読んだの?」

「もちろんです。門を任されたからにはやらなければいけません。」

書類を覗いてみると他の門の状況報告だったり、住民からの声だったり、お偉いさんからの文句だったり。

他にも色々あるけど子供が読んでどうこうできる話じゃなさそう。

「気になりますかスヴェンさん。こういうのは大人になったら嫌になるほどするらしいですよ。」

顔に出ていたのだろうか。

ついにアレク君だけじゃなくてメラニーにも表情を読まれるようになったみたいだ。

「すごいよメラニーは。オレにはこの仕事はできないよ。」

「そういう家に生まれましたから。・・・ここだけの話、私は学校に入学するまで自分が一番努力していて賢いと思っていました。」

「そうなんだ。オレはメラニーからはそんな雰囲気を感じたことなかったよ。」

むしろポーション実習のとき声をかけて貰って本当に嬉しかった。

あの時のオレはアレク君以外友達がいなかったし。

「そうですか?私がスヴェンさんに初めて話しかけたとき、私はアレクさんの一番近くにいる人物がどれだけの人なのか確かめようとしたんです。」

「ええ?そうなの?それで・・・どうだったの?」

「ははは!それはもうびっくりしましたよ。なんだかそういう競争をする相手じゃないなって思いました。」

「恥ずかしいな。あの時オレは何もできなかったね。」

「そうですか?完璧主義のアロナさんに嚙みついたり、先生に評価はいらないからもう一回やらせてほしいなんて言ったり、他にも色々。」

「そ、そうかな?そうかも・・・。」

そういわれると本当に恥ずかしくなってきた。

あの時はあれが一番いいやり方だって本気で信じてたからなー。

もう思い出すのやめよう。

「結局は得意なことややらなきゃいけないことをやるだけなんだって、私はそう思うようになりました。だから冒険者になって自分の得意なことを試してみたくなったんですよ。」

「そうなんだ。オレはメラニーはただいいやつだと思ってたよ。」

「私とスヴェンさんの共通点はその(・・)部分なんでしょうね。良くも悪くもですが。」

「オレはいいやつじゃないよ?」

「ええ、私も良い奴ではないです。」

???

わからない。でもメラニーが言うならそうなんだろう。

「余計な話をしてしまいました。今日は大事な日です。もう一度詳細を詰めましょうか。」

「オレはメラニーが自分のこと話してくれたのうれしかったよ。」

「では次は皆で話しましょう。・・・少し恥ずかしいですが。」


「本題に戻りますね。次の鐘が鳴ったら定時の連絡が来ます。」

「北門を開くかどうかの最終決定があるんだったよね。」

「今は開門前提で話しをしましょう。もしそうでなければ緊急事態が発生しているので作戦は中止です。」

「うんうん。」

「定時連絡を受け取ってからすぐに北門から町の外に出る人を募ります。そして正午の鐘が鳴るまでに希望した人を対象に簡易な正体看破の魔法を掛けます。」

「そう言ってたね。でもミーシャとメイドは見つからないって話だよね。」

「その通りです。この程度の魔法では看破できないか、そもそも検査はスルーして時間になったら列に潜り込むことだってできるでしょう。」

当然昨日と同じ方法でミーシャを判別することはできないだろう。

同じ手に2回も引っかかることはしないはずだ。

「ですから私達ができることはたった一つだけです。スヴェンさんが相手に直接触れて確認するしかありません。全ては正午の鐘が鳴った後、外への門が開くまでの一時(ひととき)の間です。」

「本当に手で触れて確認するんだよね。変身魔法を見破るために。」

「はい、その瞬間なら兵士が様々な角度から待機列を確認しています。なので途中から潜り込まれることはありません。そして魅了(チャーム)の魔法が誰かに使われたならスヴェンさんが感じ取ることができるはずです。何よりファラド様が見逃さないでしょう。」

「そうだね。ちゃんと覚えてるよ。」

「この作戦の問題点は人の数が多すぎて全員どころか数人しかチェックする時間がないことでしょう。それに下手をすればスヴェンさんが兵士に捕まえれらことも考えられます。」

「そこは・・・頑張るよ。」

『おばちゃん握手して!』までならギリギリ行けるかもだけど、違ったら『ありがとうじゃあね!』を繰り返せば怪しすぎる。

「一応スヴェンさんのことは兵士に伝えてはおきます。ですが確約はできません。彼らの目に不審に映れば当然止められます。それに北門の兵士以外に見つかれば『なぜ牢にいないのか』と言う人もいるでしょう。・・・恐らくはその件を知っている人は全員別の門に出払っています。グレジオ先生の檻をスヴェンさんが抜け出したなんて夢にも思わないでしょう。」

「そこもそうだって100%信じるよ。」

「前提で動くしかないですからね。では次はもし見つけたらの話です。まずはーーー」



全ての確認が終わって配置についたオレは正午の鐘が鳴るのを待っていた。

そして鐘が鳴ったら兵士たちと一緒に詰め所から列の周りに移動する。

一応ここでミーシャを探すが・・・当然見つからない。

そして希望者たちが看破魔法を掛けられているところを物陰から監視する。

でも予想通りここでは魔族と判別される人はいなかった。

じゃあ次が本当に最後のチャンスだ。

オレは兵士用の出入り口に移動する。

兵士用の出入り口は、町の中から扉を開けると兵士が常駐する用の小さな部屋がある。

その部屋から外につながる扉があり、その扉をくぐると町の外だ。

それは部屋の中に待機して、外に出る本当のギリギリのところでミーシャを見つけるつもりだ。

「大丈夫大丈夫。いけるいける。ここで決めろよオレ。」

ファラド様から最終通告があり、町の外に出たら命の保証ができないこと、危ないと判断すれば扉を閉じること、事態が収拾するまで決して町の中に戻れないこと、危険な行為をした瞬間に警告なしで攻撃することを改めて伝えた。

結構なことを言われていると思うが、それでも外に出たい人は200人近くいた。

「では今からファラド・クレイグニル・チャートの名の下に開門する!自らの信念に従い、必ず生きて目的地に辿り着くように!」

ファラド様の言葉で部屋に続く扉が開かれた。


駆け足で進む人々を兵士が落ち着かせ、何人同時に扉をくぐるか尋ねる。

家族や仲間同士でまとめて外に出してあげるためだ。

1番目の勇気ある冒険者たちが外に飛び出すと後方から歓声が上がった。

続いて2番目、3番目と町の外への扉をくぐる。

想定していたような恐ろしいことは起きずに済み、安心したような、緊張が抜けたような声が聞こえ始めた。

同時に早くしろと急かす声もちらほら聞こえるようになる。

兵士たちも早く終わらせたいのか、6番目、7番目となる頃にはペースがかなり速まってきた。

・・・まだ大丈夫だ。焦るな。


そして20番目。ついにその時がきた。

子供を連れた4人家族が部屋に入ってくる。

「お前達は何人だ?」

兵士のお兄さんが質問する。

「4人です。」

お母さんが答えた。

「これは規定の質問だ。家族構成を答えろ。」

「私、夫、娘と息子です。」

「そうか、キョウダイはどちらが上だ?」

「む、すめです。娘が上で息子が下です。」

一瞬の空白。その一瞬に詰められた出来事を見てオレは確信した。

兵士達の裏からスルリと抜け出て、”息子”の手を掴んだ。

「ねえ。オレと少しだけお話しない?」

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