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第39話 祝春会に向けて

「ミーシャ。発表の資料をまとめたんだけど・・・これでどうかしら。」

「ちょっと見せてね。・・・内容が専門的過ぎて私にはちょっと伝わらないわ。例えばねーーー」


「ミーシャさん。展示用のポーションについてなのですが、相談したいことがありまして・・・。」

「今の話だと、この見せ方の方が効果的かしら。こことここをねーーー」


ミーシャが町に来てから2週間が経った。

ミーシャは他にやることもないと言うのでオレたちの発表準備を手伝って貰うことにした。

ミーシャが参加してから、今までアロナやメラニーが悩んでいたあれやこれやがスイスイと進むので今では居ないと困る存在になった。

本人の説明だと前の場所では周りとうまく馴染めてなかったみたいだし、ほんとによかった。

それはそれとして。

「あのー、アロナ。オレなんかやることある?」

「ないわ。好きなことしてていいわよ。」

「本当にない?」

「スヴェンは十分に仕事をしたわ。ミーシャをここ連れてきたんだから。」

・・・なんだかオレのやることが無くなってしまったようだ。

オレの仕事が少ないのはうれしいけど、暇なのは困る。

うーん。発表のセリフ、暗記してようかな。


「ごめんね皆。作業を任せてしまって。」

「いいのよ。アレクの分はミーシャが回してくれてるわ。」

アレク君はというと、主催側として祭りの準備をお手伝いをしている。

なので最近は顔を見る回数も減った。

「アレクさんは主催者であり参加者でもありますからね。お疲れ様です。」

「主催側はほんと大変よね・・・。こっちのことは私に任せていいのよ。」

「皆ありがとう。でも僕がやるべき分は必ずやるから声をかけてほしい。」

疲れているだろうに。本当に真面目だ。

「えと、アレク君。オレもそっち手伝おうか?今オレあんまりやることなくて。」

「気持ちは嬉しい。でもスヴェン君には魔鉱石への魔力補給を依頼を受けて貰っているから十分だよ。何より二人も発表の準備を投げ出す訳にはいかないからね。」

「ああ、うん。それはそうだね。」

「じゃあ皆、祝春会の前日には絶対顔を出すから。そのときに通しで練習しよう。」

そう言い残してアレク君は行ってしまった。

・・・まずいぞ。このままだと本当に何もすることが無くなる!

「あの、みんな!なんかできること教えて!」

「・・・ミーシャ。スヴェンになんかやること教えてあげて。」

「わかったわアロナ。スヴェン、こっちで私と配布用の資料を書き上げましょうね。」

「えと、オレ字書くのへたくそなんだよね・・・。」

「へたくそでもいいわよスヴェン。読めなかったら全部やり直しさせるから。」

「わかってるよアロナ。ちゃんとやるよ。」

「字の書き方にはコツがあるのよ。それも教えてあげるわ。」

「ありがとうミーシャ。・・・アロナももっと優しかったらなー。」

「え?聞こえないわスヴェン。一人で発表したいって?それなら好きにしていいわよ。」

「アロナ様は優しいです!バンザイ!」

こうしてバタバタしながらも発表準備は進んでいった。



そして祝春会前日兼、発表会前日。

「完成よ。」

目の前には発表用の大きな模造紙と展示用のポーション、そして町のみんなに配る用の資料が整えられていた。

これで発表前にできることは全部完了したことになる。

「やっと終わったー!」

「ちょっと感慨深いですね。」

「まだ発表が残ってるわ。誰かさんが噛んだりしないように練習しないとね。」

「わかってるよ!セリフはもう全部覚えたんだ!」

「じゃあこの勢いで一度発表練習しましょうよ。アレクの分は私が代わりにするから。」

「では冒頭の挨拶からやりましょうか。」

そこでコンコンと扉をノックする音が聞こえ、そのまま扉が開いた。

「やあ皆、外からでも声が聞こえたよ。発表資料、完成したみたいだね。」

「アレク君!今ちょうど発表の練習を始めるところだったんだ。」

「アレクが来たなら私は来賓者役をやろうかしら。」

「是非お願いします、ミーシャさん。」

「よし!司会者役はオレね!・・・えー本日は皆さんお集まり頂きーーー」

「あんた祝春会来たことないでしょ。メラニーお願いね。」

「えっとですね・・・司会進行なんて似たようなものではありませんか?」

「ダメよ。私の発表は完璧じゃなきゃいけないわ。妥協はなし。」

「司会はメラニー君に任せようか。」

「えー!なんで!」

「いいじゃない。冒頭の挨拶はスヴェンがやるんだから。一人二役になっちゃうわ。」

「それもそうか。メラニーお願いね。」

「・・・ミーシャがいるとスヴェンを転がすのが楽で助かるわ。」

「コホン。では時間もありませんので進めさせて頂きます。『チャート領主創立 王国指定イージス高等教育学校の野外研修による発表を始めます。皆様ご清聴をお願いいたします。早速ではありますが1つめのグループに発表して頂きましょう。代表のスヴェンさん。』」

「はい!代表のスヴェン・ツオイスです!第1班の研究内容はーーー」

段取りの悪い所を治したり、セリフを微調整したりしながら何回も何回も練習した。

アロナが満足する頃には夜になっていて、明日は朝も早いし解散する流れになった。


「アロナ。お友達はお帰りなるの?それなら夕飯を食べて行って貰いなさいね。・・・ゴホゴホ。」

「おばあちゃん、寝てないとダメじゃない。ご飯はもう食べたわ。夕方に屋台で買ってきたの。」

「それだけじゃあお腹空いているでしょう。私が作りますからね。」

「カウントさんお構いなく。私はそろそろ戻らないといけませんので。祝春会についてお父様との最終確認が残っているのです。」

「あらアレク様。それは残念です。・・・ゴホゴホ。」

最近カウントおばあちゃんの体調が悪そうだ。

アロナの家で発表準備をするようになった頃にはそうだったから、結構長引いている。

「えと、カウントおばあちゃんが元気になったらみんなで食べに来ます!」

「お客様に気を使わせてしまうなんて・・・情けないね。次は飛び切りのごちそうを用意してお待ちしておりますから。」

「楽しみにしています。お大事にしてくださいね、おばあ様。」

「ありがとうございます。明日の皆さんの発表見に行きますから。・・・ゴホゴホ。」

「おばあちゃん。ほら、寝てないと悪くなっちゃうから。」

アロナがおばあちゃんを寝室に連れていった。

戻ってきたアロナは少し不安そうでいつもよりずっと小さく見えた。

「おばあちゃん良くなるといいね。」

「そうね。お医者様も良くなるって言ってくれてるから心配はないの。薬もちゃんと飲んでいるしきっと大丈夫だわ。」

「それなら安心だね。イージスのお医者様は腕がいいんだ。」

「ええ、そうね。・・・じゃあ私はもう寝るから。明日の朝荷物を取りに来てね。」


アロナの家を出て、オレたちはそれぞれの家に向かって歩き始めた。

とはいえ、向かう方向同じなので自然と道になる。

アロナの家が町の東側だし、メラニーは西門、オレたちは学校の寮。

・・・あれ?そういえばミーシャはどこに泊まっているんだろう。

「ミーシャってさ。そういえばどこの宿に泊まっているの?西側の宿?」

「今日はそうね。折角だから色々宿を替えているのよ。」

それは楽しそうだ。お金持ちっていいな。

そのうち学校にたどり着いたので一足早くみんなと別れることになった。

「スヴェン君。今日は僕も屋敷の方に向かうから。」

「あ、そうだったね。さっき言ってたね。」

「スヴェンさん。明日は少し早いですから早めに寝て体力を回復させてください。」

「明日の朝オレとメラニーで荷物を取りに行くんだよね?」

「そうですね。スヴェンさんを迎えに行きますから寮で待っていてください。」

「オッケーじゃあまた明日ね。みんなおやすみ!」


お風呂を済ませて布団にもぐりこんだけれど、少し緊張してなかなか寝付けなかった。

「明日はいい発表になるといいな。」

それに明日の発表さえ終われば、あとの何日かはただのお祭りだ。

全力で楽しめるように頑張んないと。

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